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お役立ち 2026.08.31

介護の生産性向上とは?厚生労働省ガイドラインの7つの取り組みと事例を解説

人手不足のなかで「サービスの質を落とさずにスタッフの負担を減らしたい」と考える施設は多いのではないでしょうか。
 
国も介護分野の生産性向上を後押ししており、2026年6月の介護報酬の改定では、処遇改善加算の上乗せ要件にも生産性向上の取り組みが組み込まれています。
 
この記事では、生産性向上の意味と誤解されやすい点、厚生労働省ガイドラインが示す7つの取組、具体的な進め方などを整理します。施設で何から着手すべきかを判断する材料としてお役立てください。

▼目次

1.介護の生産性向上とは

介護の生産性向上とは、業務の進め方を見直して、限られた人員でも質の高いケアを継続できる状態をつくる取り組みです。ここでは、その目的と求められている背景を押さえておきましょう。

介護の生産性向上の目的は「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすこと

介護の生産性向上とは、業務に潜む「ムリ・ムダ・ムラ(3M)」を見直し、スタッフが限られた人員でも安定して質の高いケアを提供できる状態をつくる業務改善の取り組みです。
 
厚生労働省は介護現場の生産性向上を、スタッフの負担軽減とケアの質の向上を同時に目指すものと位置づけています。人員を減らすための取り組みではなく、業務量と人員のバランスを整えるための取り組みだと理解しておきましょう。
 
また、生産性向上は作業スピードの追求を意味するものでもありません。記録や情報共有、物品を探す時間といった間接業務を減らし、スタッフが利用者さんと向き合う時間を確保することが目的です。

介護現場で生産性向上が求められる理由

介護現場で生産性向上が求められる理由は、介護需要の増加と担い手の減少が同時に進んでいるためです。
 
厚生労働省の推計では、介護スタッフの必要数は2022年度の約215万人から、2026年度には約243万人、2040年度には約280万人とされています。一方で、担い手となる生産年齢人口は減少を続けており、必要な人数をそのまま採用で埋めることは、多くの地域で難しいのが現状です。
 
こうした背景から、国も生産性向上を強く後押ししています。ガイドラインの整備に加え、介護報酬での加算による評価、機器導入への補助など施設が活用できる支援策が整いつつあります。
 
▼関連記事:
介護施設が抱える問題とは?2026年の現状と解決策を解説

2.厚生労働省ガイドラインが示す生産性向上の「7つの取組」

厚生労働省は、介護サービスにおける生産性向上の取組を次の7つに分類しています。
 

取組 内容
職場環境の整備 5Sの視点で安全・快適な職場をつくる
業務の明確化と役割分担 3Mを削減し、業務の分担を見直す
手順書の作成 経験や知識を可視化・標準化する
記録・報告様式の工夫 項目やレイアウトを見直し記録の手間を減らす
情報共有の工夫 ICT等で転記や申し送りを効率化する
OJTの仕組みづくり 日常業務を通じた人材育成の仕組みを整える
理念・行動指針の徹底 自律的に行動できるスタッフを育てる

 
▼参考:介護分野における「生産性向上」とは?業務改善に向けた取組|厚生労働省
 
すべてを同時に進める必要はなく、自事業所の課題に近いものから着手するのが基本です。

職場環境の整備

5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の視点で、安全な介護環境と働きやすい職場を整えます。
 
物品や情報を探す時間が減り、必要な業務にすぐ取りかかれる状態を保てます。「あの書類がどこにあるかわからない」「補充されているはずの備品が見つからない」といった細かな停滞は、積み重なると大きな時間のロスになります。
 
業務改善の土台となる部分であり、費用をかけずに始めやすい領域であるため、何から着手するか迷う場合は、ここから手を付けるとよいでしょう。

業務の明確化と役割分担

業務の明確化と役割分担を見直し、ムリ・ムダ・ムラ(3M)を削減して、業務の流れを再構築します。
 
介護助手の活用などにより、専門職が専門性の高い業務に集中できるようにすることもポイントです。配膳や清掃、リネン交換といった周辺業務を切り分けるだけでも、介護スタッフが利用者さんと関わる時間を確保しやすくなります。

手順書の作成

理念やビジョンをもとに、スタッフ一人ひとりが持つ経験値や知識を可視化・標準化します。
 
手順書があることで、職員によって業務の進め方が異なる状態を減らし、新人教育やOJTにも活用できます。教えるたびに手順や内容が変わる状態では、指導する側の負担も、教わる側の迷いも大きくなりがちです。

記録・報告様式の工夫

記録・報告様式の工夫では、記録項目やレイアウトを見直し、記録や確認にかかる負担を減らします。
 
同じ内容を複数の帳票に書き写している、実際にはほとんど使われていない項目が残っている、といったムダは多くの現場に潜んでいる現状です。様式を整理したうえで、後述するICTの活用と組み合わせると、さらに効率化を図りやすくなります。

情報共有の工夫

情報共有の工夫では、ICTなどを活用して、申し送りや報告、情報の転記などにかかる負担を減らします。
 
インカムやチャットを使えば、必要な情報が必要な人へ速やかに届くため、申し送りのためだけに手を止める場面や、伝達漏れによるトラブルも減らせます。
 
7つの取組のなかでも介護テクノロジーと相性がよく、導入効果が表れやすい領域です。

OJTの仕組みづくり

日常業務を通じた人材育成の仕組みをつくります。
 
スタッフの専門性を高めリーダーを育成するため、教育内容の統一と指導方法の標準化を図ります。指導者によって教える内容や基準が異なる状態では、新人が混乱し、定着にも影響しがちです。
 
人が育ち続ける体制を整えることは、取り組みを継続するうえでも欠かせません。

理念・行動指針の徹底

組織の理念や行動指針に基づいて、自律的な行動がとれるスタッフを育成します。
 
「何のための生産性向上か」という目的が伝わっていないと、業務改善が「仕事を減らされる」「監視される」といった不安として受け取られかねません。
 
なお、生産性向上ガイドラインは施設・居住系、通所系、訪問系、居宅介護支援などサービス類型ごとに分かれているため、事業所に合ったものを参考にすることが大切です。

3.生産性向上の進め方【6ステップ】

次の6つのステップで改善活動を回すことが示されています。
 
1. 改善活動の準備をする
2. 現場の課題を見える化する
3. 実行計画を立てる
4. 改善活動に取り組む
5. 改善活動を振り返る
6. 実行計画を練り直す
 
ヒアリングや業務量調査で課題を洗い出します。管理者が問題だと考える業務と、スタッフが負担に感じている業務は一致しないことが少なくないため、印象ではなく数字で把握することが重要です。
 
「記録時間を1日〇分削減する」など測定可能な目標を設定し、特定の業務に絞って試験的に始めます。導入前後を同じ指標で比較し、うまくいかなかった点はルールを見直して次のサイクルにつなげましょう。

4.生産性向上を支える介護テクノロジーの活用

介護テクノロジーは、生産性向上の手段の一つです。導入すること自体を目的にせず、現場の課題に合った機器やシステムを選ぶことが重要です。7つの取組のうち、記録や情報共有に関する部分は、テクノロジーの活用によって業務の進め方を変えられる可能性があります。

見守り機器・センサー|夜間巡視と離床対応の負担軽減

見守り機器やセンサーは、利用者さんの状態を把握し、必要なタイミングでの訪室を支援するために活用できます。
 
離床センサーやカメラ型の見守り機器は、利用者さんの起き上がりや離床などを検知してスタッフへ通知します。
 
定時巡視だけに頼らず、利用者さんの状態に応じた見守りを行いやすくなるため、夜間の巡視負担軽減などにつながるでしょう。
 
▼関連記事:
介護施設における見守りカメラの選び方や導入時の注意点を分かりやすく解説

インカム・スマートフォン|情報共有・連絡調整の迅速化

インカムや業務用スマートフォンを活用すると、離れた場所にいるスタッフ同士でも情報共有や連絡を行いやすくなります。
 
応援要請や情報共有のためにスタッフを探し回る動線を減らし、連絡調整にかかる時間を短縮できるのも特徴です。また、ナースコールと連動するインカムであれば、呼び出しの通知を耳元でハンズフリーに受けられます。
 
導入する際は、現在どのような連絡業務に時間がかかっているのかを把握し、必要な機能を検討しましょう。
 
▼関連情報:
インカムシステム「BONX WORK」とナースコールシステムの連動を開発

介護記録・情報共有システム|記録業務の効率化

介護記録・情報共有システムは、記録の入力や共有にかかる時間を減らすために活用できます。
 
タブレットやスマートフォンからその場で記録できるシステムであれば、後からまとめて入力する手間を減らせます。また、音声入力やテンプレートを活用すれば、入力方法を工夫して記録業務の負担を軽減できるでしょう。
 
記録の電子化・共有化により、スタッフ間や多職種との情報共有もスムーズになり、転記ミスの防止にもつながります。

5.生産性向上推進体制加算と使える補助金

活用できる制度を確認してから計画を立てるほうが負担は小さくなります。

生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)

2024年度の介護報酬改定で新設された加算で、テクノロジーを活用した業務改善に取り組む施設を評価するものです。
 

区分 単位数 主な要件
加算(Ⅱ) 月10単位 委員会の設置とガイドラインに基づく継続的な改善活動/見守り機器等のテクノロジーを1種類以上導入/1年ごとに効果を示すデータを提出
加算(Ⅰ) 月100単位 加算(Ⅱ)の要件を満たし成果が確認されていること/見守り機器・インカム・介護記録ソフトの3種類をすべて導入/介護助手の活用など役割分担の取組/1年ごとにデータを提出

 
▼参考:
令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について|厚生労働省
 
加算(Ⅱ)は、テクノロジーを1種類以上導入し、委員会を設置して効果をデータで確認することが要件です。まずは(Ⅱ)から算定し、体制を整えてから(Ⅰ)を目指す流れが現実的でしょう。
 
▼関連記事:2026年の介護報酬改定は6月に臨時施行!改定内容と対策を解説

介護テクノロジー導入支援事業

見守り機器や介護ソフトなどの導入費用には、都道府県が実施する「介護テクノロジー導入支援事業」などの補助を活用できる場合があります。
 
補助の対象機器・上限額・要件・募集時期は自治体によって異なり、年度によって予算の枠組みも変わります。都道府県のホームページや相談窓口で募集要項を確認しましょう。
 
▼関連記事:
介護施設が活用できる補助金・助成金一覧を目的別に解説

6.生産性向上の取り組み事例

ここでは、ケアコムが公開している事例のなかから、業務の可視化や情報共有の見直しによって改善につなげた事例を紹介します。

介護ソフトとの連携で年間の残業時間を月平均89時間削減

兵庫県の介護老人保健施設「サンライズ」では、ナースコールシステムと介護ソフトを連動させ、呼出情報や入所者情報を自動で反映できる仕組みを構築しました。
 
従来は、ナースコールの呼出日時や回数などを手書きでメモしたり、後から介護ソフトへ転記したりする必要があり、記録業務にマンパワーがかかっていました。
 
システム連携によって呼出情報が介護ソフトへ自動反映されるようになり、手書きや転記の作業を削減。入所者情報も双方向に連動させることで、設定や入力にかかる負担も軽減しました。
 
その結果、年間で月平均89時間の残業時間削減を実現しています。
 
▼納入事例:
社会福祉連携推進法人 日の出医療福祉グループ 医療法人社団 奉志会 介護老人保健施設 サンライズ 様
 
記録業務の効率化は、単に入力時間を短縮するだけでなく、残業時間の削減やスタッフの負担軽減にもつながることがわかる事例です。
 

DXモデルの構築で1人あたりの記録時間を約10分短縮

香川県の特別養護老人ホーム「あかね」では、「ケア計画の可視化」「居室内の可視化」「職員連携の可視化」を柱とする「あかねのDXモデル」を構築しました。
 
オリジナル開発のスマートフォンアプリ「ケアToDoソフト」とナースコール、介護ソフトを連携させ、ケアの実施予定や注意点をスタッフが手元で確認・入力できる環境を整備しています。さらに、見守りカメラや眠りSCANなども活用し、利用者さんの状態を把握しながら必要なタイミングで対応できる仕組みを整えました。
 
こうした取り組みにより、1人あたり1日の記録時間を約37分から約27分へ短縮。夜間巡回や不要な訪室も減らし、業務の平準化と生産性向上につなげています。
 
記録業務だけを個別に効率化するのではなく、複数のシステムを連携させて業務全体を見直すことで、生産性向上につなげた事例と言えるでしょう。
 
▼納入事例:
社会福祉法人 光寿会 特別養護老人ホーム あかね 様

7.生産性向上でスタッフが働き続けられる介護現場へ

介護の生産性向上は、人員削減ではなく、スタッフの負担軽減とケアの質の向上を両立させる取り組みです。
 
進め方の基本は、厚生労働省ガイドラインの7つの取組を土台に、委員会の設置から課題の見える化、スモールスタート、効果測定へと順に進めることです。事例のように、まず業務量を数値で把握することが改善の出発点になります。
 
加算や補助金も後押しとなります。費用をかけずにできる職場環境の整備や記録様式の見直しから始めましょう。
 
<参考サイト>
▼参考:令和8年度介護報酬改定について|厚生労働省
▼参考:介護の生産性|厚生労働省
▼参考:介護分野における「生産性向上」とは?|厚生労働省
▼参考:令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について|厚生労働省
▼参考:介護テクノロジー導入・定着支援事業|厚生労働省
 
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