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お役立ち 2024.09.17

医療ロボット導入のメリットと課題|看護現場で期待できる3つのこと

「医療ロボットを導入すると看護師にどのようなメリットがあるの?」
「医療ロボットの導入で、患者ケアの質が向上できるの?」

 

看護管理者の方は、看護ケアの質の向上や看護現場の業務効率化を目的に医療ロボットの導入を一度は考えたことがあるでしょう。
この記事では、医療ロボットの導入によるメリットと課題についてくわしく解説します。最後までお読みいただくと、医療ロボットの導入が業務効率化や人員不足の解消にどのように役立つかがわかります。

▼目次

1.医療ロボットの目的と期待されていること

医療ロボットとは、医療現場で使用される高度なロボット技術のことです。現在では、以下の医療業務を自動化・効率化するために設計されているものが多くなっています。

 

● 薬剤の調剤
● 手術のサポート
● 医療物品の搬送
● リハビリテーション

 

これらを医療ロボットが代行することで、看護師の負担が減り、ケアの質が高まることが期待されています。
たとえば、薬の準備をする調剤ロボットを導入することで、看護師は投薬ミスを減らし、患者さんに安全な薬の管理ができるでしょう。

 

医療ロボットの導入で、看護師がほかの重要なケアに集中できたり、患者さんの安全性が高まったりとさまざまな効果が見込まれます。

2.医療ロボットの種類【2024年最新】


2024年8月時点の、医療業界で活躍している医療ロボットを紹介します。

医療ロボットの種類 代表機器
手術支援ロボット ダ・ヴィンチ
hinotori
リハビリ支援ロボット HAL
ウェルウォーク
調剤ロボット DimeRoⅡ(ディメロ ツー)
見守り服薬支援ロボット FUKU助
自動搬送ロボット HOSPI®(ホスピー)
Relay(リレイ)

 

手術支援ロボット

手術支援ロボットは、医師の手術を補助するロボットで「ダ・ヴィンチ」や「hinotori」が代表的です。医師がカメラの映像を見ながら、リモートで操作します。

 

手術支援ロボットのメリットは、術者の負担が少ないことです。これまでの手術は長時間立ったり、無理な姿勢を強いられたりと医師や看護師の身体的な負担がありました。
しかし、手術支援ロボットは座ったまま手術をおこなえるため、術者の身体的な負担が軽減されます。

 

また、医師や看護師だけでなく、手術支援ロボットによる手術を受ける患者さんにも以下のメリットがあります。
● 回復が早い
● 出血量が少ない
● 傷口が小さく済む
● 術後の痛みが少ない

 

手術支援ロボットの導入で、医療従事者だけでなく、患者さんにもよい効果が得られるでしょう。

リハビリ支援ロボット

リハビリ支援ロボットの役割は、脳卒中や脊髄損傷による麻痺の改善のサポートです。
たとえば、装着型ロボット「HAL」を使用すれば、重度の麻痺がある患者さんでも腕や歩行のリハビリテーションが可能になります。
また、センサーで体の状態を分析し、効果的なリハビリを提案する機能も備えているリハビリ支援ロボットの機種もあります。

 

リハビリスタッフや看護師の身体的な負担を減らすだけでなく、最適なリハビリテーション計画を立てられます。そのため、患者さんはより効果的なリハビリテーションを受けられ、機能回復が促されることが期待できます。

調剤ロボット

調剤ロボットは、薬剤師の業務を補助し、調剤プロセスのほとんどを自動化します。
これにより、調剤の時間が短くなることで看護師は患者さんへの薬剤提供が早くおこなえ、ほかの業務に時間を割くことができるでしょう。
これが業務負担の軽減につながり、看護師は患者さんへの対応に集中できるため、ケアの質が向上するでしょう。

見守り服薬支援ロボット

服薬支援ロボットは設定した時刻に自動で薬を取り出してくれる医療ロボットです。
センサーを使って利用者の状態を見守る機能や、生活をサポートするための声かけ機能も備えています。

 

在宅で過ごす高齢者を中心に運用されていましたが、服薬ロボットを医療機関で使用したことで、患者さんの薬の飲み忘れがなくなったという報告※もありました。
服薬ロボットの導入によって、配薬し忘れや患者さんの薬の飲み忘れが減るため、看護師のインシデント防止にもつながるでしょう。

 

※参考:社会薬学 (Jpn.J.Soc.Pharm.) Vol.41 No.1 2022「入院患者を対象とした服薬支援機器の使用に対する評価」

自動搬送ロボット

自動搬送ロボット(自律走行ロボット)は、昼夜を問わず薬剤や検体の搬送業務をおこないます。
スタッフがおこなっていた搬送業務をロボットにまかせることで、空いた人員や時間を患者ケアにあてられます。また、昼夜問わず稼働できるため、夜勤帯で少人数の看護体制でも対応可能です。
これにより、看護師が薬剤や検体の搬送のために患者さんのそばを離れる必要がなくケアに専念できます。
このように、自動搬送ロボットの導入は看護師の身体的・精神的負担の軽減が見込めます。

 

▼参考:看護業務の効率化 先進事例アワード 2022「搬送ロボットを導入した看護師のカイゼン活動-トヨタ生産方式を基盤として-」

3.医療ロボットを看護現場に導入する3つのメリット

医療ロボットを看護現場に導入することで期待できる効果は、以下のとおりです。

 

● 看護師の業務効率化
● 患者ケアの質の向上
● 医療事故の防止

 

それぞれくわしく解説します。

1. 看護師の業務効率化

看護師の業務効率化は、医療ロボットを導入するメリットのひとつです。
たとえば自動搬送ロボットを導入した病院では、薬剤の搬送をロボットが担うことで、年間14,965分の時間削減につながりました※。

 
このように医療ロボットの導入で、「看護師でなくてもできる業務」をロボットが担い、看護師が本来おこなうべき業務に時間を割くことができるため、業務の効率化が見込めます。

 

※参考:公益社団法人日本看護協会「搬送ロボットを導入した看護師のカイゼン活動―トヨタ生産方式を基盤として― 」

2. 患者ケアの質の向上

医療ロボットの導入により、看護師のケアの質の向上が期待できます。
これは、医療ロボットが直接的なケア以外の業務を代行することで、看護師が患者さんと向き合う時間を確保できるからです。

 

きめ細やかで個別性のある対応が可能となるため、看護師のケアの質があがり、患者さんの満足度の向上につながるでしょう。

3. 医療事故の防止

医療ロボットの導入により、医療事故の防止が期待できます。医療ロボットは精密で確実な作業をおこない、調剤ミスや投薬忘れといった人的ミスが減少するためです。
実際に、調剤ロボットの導入によって調剤ミスの割合が大幅に減った事例もあります。

 

安全性の向上により、看護師は医療事故の不安が軽減され、患者ケアに集中できるようになるでしょう。

4.医療ロボットを看護現場に導入する3つのデメリット

医療ロボットを看護現場に導入するデメリットとして以下があげられます。

 

● コストが高い
● 患者が受け入れにくい
● 医療ロボットの操作が難しい

 

くわしく見ていきましょう。

1. コストが高い

医療ロボットは導入コストが高く、導入できる医療機関は少ないでしょう。
たとえば、調剤ロボットは導入するだけで1000万円を超えるといわれています※。これまでの分包機は数10万円ほどであるため、調剤ロボットの導入コストは高いことがわかるでしょう。

 

こうした価格設定が、安易に導入できない理由のひとつであり、医療ロボットの普及率が増加しない一因といえます。

 

※参考:厚生労働省「一包化調剤を中心とした調剤ロボット・機器の活用」

2. 患者が受け入れにくい

医療ロボットの導入は、患者さんが受け入れにくいことがデメリットのひとつです。
とくに、ロボットによる手術支援は、術者の熟練した手指の感覚が活かされにくく、手術中に思わぬ事故が発生する可能性もあります。
そのため、患者さんやご家族がロボットによる手術を不安に感じると考えられます。

 

また、そもそもロボットに対して不安や抵抗感をもつ患者さんもいるでしょう。こうしたロボットに対する不安や抵抗感が、医療ロボット導入の課題となる可能性があります。

3. 医療ロボットの操作が難しい

医療ロボットの操作が難しいことは、医療ロボット導入のデメリットの一つです。
というのも、医療ロボットの操作が複雑だと、看護師の負担が増えることが予想されるためです。

 

その理由として、以下があげられます。
● 操作することに時間をとられ業務が非効率になる
● マニュアルやトラブルシューティングの習得に時間がかかる
● 通常の看護業務にくわえ新たな学習やトレーニングが求められる

 

このように医療ロボット導入が、かえって業務負担となる可能性があります。
医療ロボットの操作の複雑さが、医療ロボット導入のハードルを高くしているといえるでしょう。

5.医療ロボットの未来|看護現場における可能性

医療ロボットは、看護ケアの質の向上や業務効率化において役立つでしょう。自動搬送ロボットや調剤ロボットなどの導入により、看護師は多くの時間を患者ケアにあてられます。

 

しかし、操作の難しさやトレーニングの必要性が、業務負担となることも考えられます。
それでも、医療ロボットの力を借りることで、看護師が働きやすい環境が整い、細やかなケアの提供が可能となるでしょう。

 

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