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お役立ち 2024.07.05
【医療AI】3つの活用例|看護師の業務効率化のためのAI技術を紹介

「医療AIの活用例を知りたい」「医療AIを導入して看護師の負担を減らしたい」
このように悩んでいる看護管理職の方もいるでしょう。
「医療AI」とは、AI(人工知能)を使って医療の質を向上させる取り組みのことです。画像診断やゲノム医療で広く使われており、看護の分野でも効果をもたらしています。
この記事では、医療AIを導入して看護師の業務負担が減った事例や、患者さんの不穏行動を予測するAIを活用した成功例を紹介します。
最後までお読みいただくと、医療AIを活用して看護師の負担を減らしながらリスクに応じた患者さんへのケアができる方法がわかります。ぜひ最後までお読みください。
▼目次
- 1.医療AIとは
- 2.【医療AI】看護現場の3つの活用例
- 医療AI活用例1:システム導入で看護師の負担とインシデント件数が減少した例
- 医療AI活用例2:AIロボットの活用で看護管理者の業務効率化を実現した例
- 医療AI活用例3:入院患者の不穏行動をAIが予兆した例
- 3.医療AIを看護現場で活用するメリット・デメリット
- 医療AI導入のメリット|看護師の業務効率化
- 医療AI導入のデメリット|看護師が職を失う可能性があること
- 4.医療にAIが必要な理由|日本の医療業界の3つの課題
- 1.医療従事者の人材不足と過重労働
- 2.地域による医療機関や診療科の偏り
- 3.科学的知見や文献など膨大な情報量
- 5.医療AI活用例を参考に看護師の役割を発揮できる職場を
1.医療AIとは
医療AIは多くの情報を整理・判断できるため、多くの医療の場面で役立っているのです。
<例>
● 手術の支援
● 患者の介護
● 問診や画像診断
● 治療計画の立案
● 医薬品の開発
たとえば、画像診断では医療AIが画像を解析し、医師の診断をサポートしています。
医師1人あたりの画像診断件数は年間8,000件をこえるとされています※。
そのため、医療AIが解析を代わりにおこなうことで、医師の業務量を減らしたり、病気の見落としを防いだりすることが期待されているのです。
※参考:北海道大学病院医療AI研究開発センター「AI画像診断支援アプリケーションを用いた画像診断業務負担軽減に向けた定量的評価」
2.【医療AI】看護現場の3つの活用例

医療AIは看護現場でも導入されており、看護師の業務負担を軽減できる効果が高いとされています。
今回は、そのなかでも効果があった医療AIの活用例を3つ紹介します。
医療AI活用例1:システム導入で看護師の負担とインシデント件数が減少した例
患者さんの転倒・転落を予測するAIシステムの導入で、看護師の業務量とインシデントを報告する件数が減少したAI活用例です。
こちらの病院では、患者さんの転倒・転落のリスクを評価しても、ケアすべき優先度の高い患者さんがわかりにくいことが課題でした。
そこで、適切な対策をとるために、言語解析AIを導入した事例です。
導入した医療AI |
転倒・転落を予測するシステムAI(言語解析AI) |
取り組み内容 |
・過去3年分の看護記録データと実際に転倒した患者さんの看護記録データをAIに比較し学習させた ・学習内容をもとに看護記録をAIが解析し、患者さんの転倒転落リスクを予測した ・予測したリスク評価は、患者ごとにレーダーチャート化した ・レーダーチャートで転倒転落の要因となるスコアが高い項目に合わせたデバイスを活用した |
結果 |
1.業務量の減少:転倒転落のリスク判定にかかる時間35分→0分へ 2.インシデント報告件数の減少:導入前460件→導入後284件へ(176件減) |
▼参考:公益社団法人日本看護協会「患者の転倒転落リスクをAIで予測し多職種連携で個別ケアを実践する!」
医療AI活用例2:AIロボットの活用で看護管理者の業務効率化を実現した例
AI導入前は、看護管理者がすべての人員データを手作業でまとめていたため、入力ミスや計算ミスなど多くのヒューマンエラーが起こっていました。
また、情報をまとめるために残業をせざるをえなかったことも課題のひとつでした。
そこで、ロボットによる業務の自動化(RPA)を取り入れ、看護管理者がおこなう作業をRPAにまかせたところ、作業時間が減ったという事例です。
導入した医療AI |
RPA(ロボットによる業務の自動化) |
取り組み内容 |
・看護管理者による「人員管理データの集計や資料作成」の工程の洗いだした ・洗いだした作業工程を看護管理者や担当者で確認しシステムを構築した ・システムの修正をおこなった |
結果 |
1.作業時間の削減:月3~4時間(年36~48時間)→月5分(年1時間)へ 2.転記ミスや計算ミスの削減 |
▼参考:公益財団法人日本看護協会「RPA(Robotic process Automation:ロボットによる業務自動化)導入による看護管理業務の効率化」
医療AI活用例3:入院患者の不穏行動をAIが予兆した例
不穏行動のあったケースでは、通常よりも患者さんの入院期間が約20日のびてしまうことを問題視していました。
そこで、医療AIに患者データを学習・解析してもらい、不穏行動のリスクをあらかじめ把握することに成功した事例です。
導入した医療AI |
入院患者の不穏行動の予兆をAIが検知するシステム |
取り組み内容 |
・患者ごとに異なる不穏行動のデータを学習、解析させた |
結果 |
・約70%の精度で不穏行動が起こる30分以上も前に予兆を検知することに成功 |
3.医療AIを看護現場で活用するメリット・デメリット
看護現場で医療AIを活用するメリットは、看護師の作業の手間や時間を減らすなどの業務の効率化です。
一方で、デメリットは看護師が職を失う可能性があることです。それぞれ、くわしく解説します。
医療AI導入のメリット|看護師の業務効率化
医療AIの導入は、看護業務の効率化にメリットがあります。
医療AIが複雑な事務処理やデータの分析を、正確かつスピーディにおこなうためです。
これにより、看護師は本来の患者さんのケア業務に時間を割けます。
AIが得意な分野をまかせることで、看護師は患者さんのケアに集中できるため、患者さんのケアに対する満足度向上も期待できるでしょう。
医療AI導入のデメリット|看護師が職を失う可能性があること
医療AIの導入により、看護師が職を失う可能性があります。
これは、医療AIが看護師の業務を代わりにおこなうことで、看護師の人数があまると予測されるためです。
とくに、規模の小さな病院やクリニックでは、看護師が事務作業をおこなっていることがあります。これらの業務を医療AIが引きうけると、看護師の業務量が減り、多くの人を必要としなくなる可能性があります。
そのため、医療AIの導入によって看護師が職を失うリスクがあることがデメリットといえるでしょう。
4.医療にAIが必要な理由|日本の医療業界の3つの課題

医療現場にAIが必要な理由は、医療業界の3つの課題にあるといえます。
1. 医療従事者の人材不足と過重労働
2. 医療の地域格差や診療科の偏り
3. 世界中から報告される科学的知見や文献の増大
医療AIの活用によって、医療業界の課題にどのような効果が見込まれるかを解説します。
1.医療従事者の人材不足と過重労働
医療AIが現場に必要な理由のひとつは、医療従事者の人手不足と過重労働を解決できるからです。医療AIを導入すれば、医療従事者の負担を減らすことが見込まれます。
医療業界は、人手不足が深刻であるため、残業が増え労働環境が厳しくなっています。
たとえば、日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、日勤の看護師の半数近くが始業前の業務を30分以上、4割以上が終業後の業務を60分以上おこなっています。
記録や書類作成などの患者さんに直接かかわらない業務をAIにまかせることで、医療従事者の残業時間が短縮され、労働環境を改善できるでしょう。
このように、医療AIは人手不足と過重労働を解決する手段として期待されています。
▼関連記事:看護の主な課題は人手不足!5つの対策と今後の看護業界の動向を詳しく解説
▼医療現場は医師の働き方改革でどう変わるのか【2024年4月施行】
2.地域による医療機関や診療科の偏り
地域による医療機関や診療科にばらつきがあることは、医療業界の課題のひとつです。
人口の少ない地域では医師不足が深刻で、その地域に住むかたが必要な医療を受けられない可能性が高まっています。
医療AIをうまく活用することで、患者さんの居住地にとらわれない環境が整うと予想されています。
3.科学的知見や文献など膨大な情報量
医療分野では多くの研究や文献が発表され、医療の発展に役立っています。
しかし、2017〜2019年に登録された臨床医学の論文数は、日本だけでも19,808件です。これだけの論文数があると、どのような情報が正しく、どのような報告が有効かの判断が難しいです。
そこで医療AIを導入すれば、情報を効率的かつ正確にまとめられるでしょう。これらのことから、医療AIの発展が見込まれる分野といえます。
▼参考:文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術予測・政策基盤調査研究センター「科学研究のベンチマーキング 2021-論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-」
▼参考:厚生労働省「保健医療分野におけるAI開発の方向性について」