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お役立ち 2026.11.06
看護マネジメントの課題6つと解決策|自部署の課題を特定するステップ
年度目標の提出を求められたものの、日々の管理業務や患者さまとのトラブル対応などに追われ、自部署の課題を整理しきれていない。そんな状況に心当たりのある看護管理者は多いのではないでしょうか。
人材、業務量、安全、人間関係と課題が山積みで、どれから手をつけるべきか判断できない状態は珍しくありません。看護管理者には、人材育成や業務改善、安全管理など、幅広い課題への対応が求められます。
この記事では、看護管理者が抱える課題を6つの領域に整理し、課題が繰り返される理由、自部署の課題を特定するステップ、領域ごとの解決策を解説します。自部署の課題がどこにあるのかを見極め、何から手を付けるかを根拠を持って判断できるようになるでしょう。
▼目次
- 1.看護マネジメントとは
- 2.看護管理者が抱える看護マネジメントにおける6つの課題
- 人材確保と定着
- 人材育成
- 業務量と生産性
- 看護の質と安全
- 組織風土とコミュニケーション
- 管理者の負担
- 3.看護マネジメントの課題が繰り返される理由
- 原因を意識や熱意に求めている
- 人手不足を理由に改善を後回しにしている
- 課題が感覚のまま言語化されていない
- 4.看護マネジメントの課題を特定するステップ
- ステップ1:数値で現状を把握する
- ステップ2:スタッフの声を面談と匿名の方法で拾う
- ステップ3:業務を可視化して時間の使い方を洗い出す
- ステップ4:影響度と着手しやすさで優先順位を決める
- 5.看護マネジメントの課題別の解決策
- 人材確保と定着|「辞める理由」だけでなく「続けられる理由」も確認する
- 人材育成|ベテランの経験を手順書にする
- 業務量と生産性|看護師が担う必要のない業務を移す
- 看護の質と安全|個人の注意ではなく業務設計を変える
- 組織風土とコミュニケーション|目的を共有してから手順を決める
- 管理者の負担|業務と権限を分散する
- 6.看護マネジメントの課題解決に活用できるシステムと取り組み事例
- 看護業務を可視化し、時間外勤務と離職率を削減
- 呼出回数の見える化で気づきの遅れとスタッフ間の偏りを解消
- 7.課題を数値で捉えることが看護マネジメント改善の出発点
1.看護マネジメントとは
看護マネジメントとは、患者さんに質の高い看護を提供するために、人・物・お金・情報・時間をうまく組み合わせて、看護の組織を動かしていくことです。
日本看護協会の「病院看護管理者のマネジメントラダー」では、病院看護管理者が実践に必要とされる能力を可視化し、計画的・段階的な育成の指標として示しています。
一般に、目標を立てる「計画」、人員や役割を整える「組織化」、スタッフに働きかける「指揮」、成果を確認して修正する「統制」という流れで説明されます。看護師長や看護部長は、この流れを部署単位・看護部単位で回す役割を担っていると言えるでしょう。
▼関連記事:看護マネジメントとは?看護組織を担う管理職に必要な力と役割を解説
2.看護管理者が抱える看護マネジメントにおける6つの課題
現場で起きる出来事は一つひとつ別々に見えても、6つに分けると全体像をつかみやすくなります。日本看護協会のマネジメントラダーの考え方も踏まえ、この記事では現場で課題として捉えやすい6領域に整理します。
| 領域 | 現場で起きていること |
|---|---|
| 人材確保と定着 | 欠員が埋まらない、若手が数年で辞める |
| 人材育成 | 教育がベテラン任せで、育ちにばらつきがある |
| 業務量と生産性 | 記録や連絡調整に時間を取られ、看護に向かえない |
| 看護の質と安全 | インシデントが繰り返し起きる、対策が定着しない |
| 組織風土とコミュニケーション | 世代や勤務形態の違いで意思疎通がかみ合わない |
| 管理者の負担 | 看護師長に業務と責任が集中し、相談相手がいない |
看護職の確保が難しくなる一方で、看護の役割は広がり、看護管理者には人材育成や業務の効率化、安全な職場環境の整備など、幅広いマネジメントが求められています。それぞれを詳しく見ていきましょう。
人材確保と定着
欠員を採用で埋めるだけでは、安定した人員体制を維持することが難しい場合があります。看護職の確保が難しい状況では、欠員が出たときに残ったスタッフの負担が増え、定着にも影響する可能性があります。
日本看護協会の「2025年病院看護実態調査」によると、2024年度の離職率は正規雇用看護職員で11.0%、新卒採用者で8.4%、既卒採用者で16.1%でした。
この調査結果は、自部署の離職率と比べる目安として使えます。既卒採用者の離職率は新卒採用者より高いため、中途入職者の定着に課題がある部署では、受け入れ時の教育や相談体制などを確認するきっかけになります。
▼関連記事:看護の主な課題は人手不足!5つの対策と今後の看護業界の動向を詳しく解説
人材育成
新人の育て方がプリセプターや教育担当者の経験や教え方で変わると、教育内容にばらつきが生じる可能性があります。
評価面談が年度末にこなす作業になり、日々の指導とつながっていないケースも少なくありません。これでは、面談で伝えた目標が翌日からの業務に生かされにくくなります。
中堅スタッフが十分に役割を担えない場合、管理者が現場対応を抱える場面が増える恐れがあります。その結果、看護師長や看護主任がスタッフ育成や部署運営に使える時間を確保しにくくなるでしょう。
業務量と生産性
記録、申し送り、物品管理、他部門との連絡調整といった患者さんに直接関わらない業務が、ケアにあてる時間を削っています。一つひとつは短くても積み重なると大きな時間になり、記録が後回しになれば、残業につながります。
ナースコール対応が集中する時間帯には、どの呼出に誰が向かうか決まっていない場合、スタッフの負担になりがちです。気づいたスタッフばかりが対応する状態が続けば、疲労も一部に偏るでしょう。
タスク・シフト/シェアを進める際も、調整業務が看護師長に集中すると、管理者側の負担が増えるかもしれません。
看護の質と安全
インシデントの報告と分析を行っていても、対策が「気をつけましょう」「注意してください」という呼びかけで終わると、同じミスは繰り返されやすくなります。個人の注意だけに頼るのではなく、なぜその事象が起きたのかを業務の流れや環境、人員配置などの面から確認することが重要です。
忙しい時間帯に手順が守られない場合、スタッフの意識だけに原因を求めるのではなく、手順を守りにくい業務の流れになっていないか確認する必要があります。
看護の質と安全の確保は、スタッフだけの問題にとどまりません。業務の流れや人の配置を決める管理者が向き合うマネジメントの課題として考えましょう。
▼関連記事:看護師のインシデントで多い事例とは?続く理由と再発防止策を解説
組織風土とコミュニケーション
勤務時間や役割が異なるスタッフがいると、全員に同じ情報を同じタイミングで伝えることが難しくなります。
決まったことが人づてに広がり、伝わる内容に少しずつずれが生まれます。勤務時間が異なるスタッフにも変更内容が伝わる方法を整えておきましょう。
また、「言いにくい」「聞きにくい」空気感は、インシデントの報告の遅れにもつながります。コミュニケーションの課題は、安全の課題ともつながっているのです。
管理者の負担
看護師長には、病院や看護部の方針を実行する責任と現場スタッフの負担の両方がかかり、クレーム対応を含めて負担が集まりやすくなっています。
日本医療労働組合連合会の調査(2022年)では、患者さんやご家族からのクレームに強いストレスを感じる看護職員の割合が、勤続「25~30年未満」で34.1%と、「1~3年未満」(18.5%)の約2倍でした。管理職が多いとみられる「日勤と当直」の勤務形態でも28.5%と、「日勤のみ」を6.5ポイント上回っています。
ただし、看護職員全体を対象とした調査で、管理職に限定した結果ではありません。相談や判断が管理者に集中すると、部署全体を見直す時間も確保しにくくなります。
3.看護マネジメントの課題が繰り返される理由
同じ課題が毎年の目標に並び続ける部署には、共通するつまずきがあります。解決策に進む前に、まずその原因を押さえておきましょう。
原因を意識や熱意に求めている
「注意する」「気をつける」で終わる対策は、担当者が替わったり忙しくなったりすると効果がなくなってしまいます。
一方、以下のような対策を取ると、誰が担当しても問題が起こりにくい仕組みをつくれます。
● 確認のタイミングを手順に組み込む
● 申し送り項目をチェックリストにして確認する
● 取り違えやすい物品の置き場所を変える
新しく配属されたスタッフにも同じ方法で対応できる点がメリットです。課題が繰り返されているときは、対策が意識頼みになっていないかを見直してみましょう。
人手不足を理由に改善を後回しにしている
人手不足のときこそ、少しずつ改善していくことが大切です。
人が足りないから改善に取りかかる時間が取れず、改善できず負担が減らないから人が辞めるという悪循環に入ると、改善はいつまでも後回しになります。
この状況を変えるためには、部署全体を一度に見直そうとせず、1つの業務や時間帯に絞ってみてください。記録様式の1項目を見直す、申し送りの時間を短くするといった範囲なら、いつもの業務と同時に進められるでしょう。
課題が感覚のまま言語化されていない
課題は「忙しい」「人が足りない」という感覚のままにせず、事実と数値に置き換えましょう。
同じ「人が足りない」でも、欠員があるのか、特定の時間帯に業務が集中しているのかで、必要な対策は変わります。
たとえば、「日勤の時間外勤務が月に何時間発生しているか」「ナースコールがどの時間帯に集中しているか」のように置き換えると、何が課題なのかがはっきりします。
数値で示せる課題は、看護部長への説明材料になるだけでなく、改善後に効果を確かめる物差しとしても使えるでしょう。
4.看護マネジメントの課題を特定するステップ
課題の全体像がつかめたら、自部署ではどこが弱いのかをはっきりさせる必要があります。次の4つのステップを順に進めれば、最初に取り組むべきことが見えてきます。
ステップ1:数値で現状を把握する
まずは、部署で集められる数値を集めて、現状をつかみましょう。代表的な数値は、以下のとおりです。
● 離職率
● 時間外勤務時間
● 有給休暇取得率
● インシデント報告件数
● ナースコールの呼出件数
集めた数値は、全国平均や院内の他部署と比較することで、「私の病棟は忙しい」という感覚ではなく、事実として現状を示せるようになります。
ただし、病棟の機能や患者さんの状態などによって数値は変わるため、大小だけで判断しないことも重要です。1回きりで終わらせず、月ごとや3か月ごとに数値を追うと、増えているのか減っているのかもつかめるため、解決策を考えやすくなるでしょう。
ステップ2:スタッフの声を面談と匿名の方法で拾う
スタッフの本音は、面談に匿名アンケートと組み合わせて拾いましょう。上司との面談だけでは本音が出にくく、数値だけでは見えない課題が残るためです。
たとえば、退職者との面談内容を記録しておき、複数人に共通する理由を探すことも役立ちます。1人の理由だけで判断すると対策を誤りやすいため、共通点を探しましょう。
聞いた内容にどう対応したのか、対応できない場合はその理由まで、スタッフに伝えるところまでがひと区切りです。返答がなければ、次から声は集まりにくくなるため注意が必要です。
ステップ3:業務を可視化して時間の使い方を洗い出す
1日の業務を時間帯別に書き出し、患者さんに関わるケアとそれ以外の業務に分けて量を確認します。
書き出してみると、以下のようなムダな業務を発見できる可能性があります。
● 同じ内容を複数の記録に書いている
● 誰も使っていない書類が残っている
● 物品を探す時間が繰り返し発生している
毎日の業務に埋もれているムダは、書き出さない限り気づきにくいものです。
ただし、手作業での業務量調査は管理者の負担が大きく、続けにくいのが難点です。業務量の記録や集計を手助けする仕組みを使えば、定期的に見直しやすくなります。
ステップ4:影響度と着手しやすさで優先順位を決める
洗い出した課題は、「影響の大きさ」と「取り組みやすさ」の2つの基準で分け、最初に取り組むことを決めましょう。
| 分類 | 該当する取り組みの例 | 対応 |
|---|---|---|
| 影響が大きく着手しやすい | 手順の見直し、記録様式の変更 | 最初に着手する |
| 影響が大きく着手しにくい | 人員配置の変更、システム導入 | 計画を立てて中期で進める |
| 影響が小さく着手しやすい | 物品の置き場所の整理 | 余力のあるときに進める |
| 影響が小さく着手しにくい | 慣習として残っている業務 | 当面は着手しない |
これらは目安です。同時にすべての課題に取り組むと、どれも中途半端になり定着しないため、「影響が大きく着手しやすい」ものから始めましょう。
5.看護マネジメントの課題別の解決策
人材確保と定着|「辞める理由」だけでなく「続けられる理由」も確認する
看護師の定着には、働き続けている人が挙げる「続けられている理由」を聞き取り、その良いところを伸ばす視点が欠かせません。退職理由の分析だけでは、辞めた後に原因がわかるため、対策が遅れがちです。
具体的には、勤務表に希望がどれだけ反映されているかや、夜勤回数がスタッフ間で偏っていないかを確認します。希望休の通りやすさや夜勤の回数は、スタッフが不公平を感じやすいポイントです。
勤務負担の偏りを把握し、スタッフが納得できるように勤務体制を見直すことも、定着に向けた取り組みの一つです。
人材育成|ベテランの経験を手順書にする
ベテランの経験や判断のポイントは、手順書にまとめて誰でも見られる状態にしましょう。特定の人しかできない業務は、その人が休んだり異動したりした時点で業務を実施できなくなるためです。
手順書は、現場で気づいた点を書き足して更新できる形にしておくほうが、看護師の現状に合ったものになります。「なぜそうするのか」という理由を添えておくと、状況に応じて判断できるスタッフが育ちやすくなります。
業務量と生産性|看護師が担う必要のない業務を移す
業務量を減らすには、看護師が担う必要のない業務を、看護補助者などの他職種や機器・システムに移す方法があります。記録の転記、呼び出し内容の確認や取り次ぎ、スタッフ間の連絡などが代表的です。
こうした業務に時間を取られると、患者ケアに使える時間を確保しにくくなります。たとえば、ナースコールをスマートフォンやPHSと連動させれば、受け持ちのスタッフを探して取り次ぐ手間を減らせるでしょう。
▼関連記事:看護DXとは?業務の効率化につながる事例や実践する6つのポイント
看護の質と安全|個人の注意ではなく業務設計を変える
安全対策は手順・配置・タイミングのいずれかを変える方向で考える必要があります。
あわせて、忙しい時間帯に業務が重なる仕組みそのものを見直しましょう。処置や記録を行う時間帯をずらせないかを考えるだけでも、手順が守られやすくなる場合があります。
薬の準備の時間帯にナースコール対応が重なるなら、その時間だけ呼び出しに対応する担当を決めておくといった見直しも考えられます。
組織風土とコミュニケーション|目的を共有してから手順を決める
新しい手順を取り入れるときは、何のために変えるのかを先に看護師に伝えましょう。目的が伝わっていないと、変更しても看護師は仕事が増えただけと感じがちです。
また、伝言だけではなく記録に残る方法で共有すると、受け取り方のずれを防ぎやすくなるためおすすめです。
管理者の負担|業務と権限を分散する
管理者がすべての判断や調整を引き受けると、日々の対応に追われ、部署を見直す時間を確保しにくくなります。
委員会や係活動などを活用して役割を分担し、スタッフが判断できる範囲も明確にしましょう。管理者が抱えている業務を「自分にしかできない仕事」と「他のスタッフに任せられる仕事」に分けるところから始めてみましょう。
6.看護マネジメントの課題解決に活用できるシステムと取り組み事例
ここまで紹介した対策は、いずれも現状を数値で把握できているかどうかで成果が変わります。何をどこまで見えるようにできるのか、実際の取り組みとあわせて紹介します。
看護業務を可視化し、時間外勤務と離職率を削減
北海道の滝川市立病院様では、時間外勤務の多さが離職につながっていましたが、その原因を数値で把握できていませんでした。看護記録の入力を仕事の終わり間際にまとめて行う習慣も、残業の原因になっていました。
そこでタイムスタディ支援サービスで業務量調査を2020年・2022年・2024年の3回実施し、作業ごとの時間や人数、場所を見える化。患者さんのそばでその都度記録する取り組みや、始業前残業・打ち合わせ時間の削減を少しずつ進めました。
その結果、日勤の始業前残業はゼロになり、約79%のスタッフが「以前より働きやすくなった」と回答。離職率は2018年の16.9%から2024年には9.9%へ下がっています。
▼関連記事:看護師の業務を可視化して実態を把握。時間外勤務を削減し、働きやすい職場に!|滝川市立病院 様
呼出回数の見える化で気づきの遅れとスタッフ間の偏りを解消
福岡市民病院様では、忙しさの一因であるナースコールの呼出回数を知る方法がありませんでした。呼出の通知がPHSと廊下表示に限られ、一部のスタッフに対応の負担が偏っていたことも課題でした。
そこでナースコール呼出履歴見える化ツールで呼出回数を数字で表し、そのデータを離床センサーの設定の見直しにも活用。あわせて電子カルテ用パソコンにも呼出を通知し、病棟全体の呼出履歴をパソコンで確認できるようにしました。
スタッフアンケートでは、82%が「ナースコールに早く気づけるようになった」、86%が「気づくことが多くなった」と回答しています。
▼関連記事:ナースコール呼出回数の「見える化」で、多忙な看護師の働き方を改善。呼出対応のスピードにも確かな効果を実感|福岡市民病院様
7.課題を数値で捉えることが看護マネジメント改善の出発点
看護管理者が抱える課題は、人材確保と定着、人材育成、業務量と生産性、看護の質と安全、組織風土とコミュニケーション、管理者の負担という6つの分野に整理できます。
自部署の課題は、数値の把握、スタッフの声、業務の見える化を組み合わせることで見つけられます。すべての課題に同時に取り組まず、影響が大きく取り組みやすいものから始めましょう。
<参考サイト・文献>
病院看護管理者のマネジメントラダー|公益社団法人日本看護協会
「2025 年 病院看護実態調査」結果|公益社団法人日本看護協会
2022年看護職員の労働実態調査|日本医療労働組合連合会
ケアコムでは、看護管理者が直面する課題の整理と解決方法をまとめた資料「多様な働き方時代の看護マネジメント実践ガイド」を無料で公開しています。
\ 持続可能な看護マネジメントの体制を整えたい方は、ぜひご活用ください。/
多様な働き方時代の看護マネジメント実践ガイド
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