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お役立ち 2026.08.20

看護DXとは?業務の効率化につながる事例や実践する6つのポイントを紹介

看護師の人手不足や業務負担の増加に悩み「看護DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れて業務を効率化できないか」と考えていませんか。
 
ITに詳しくない場合、新しいシステムを現場へどのように導入すれば良いのか、不安に感じる方もいるでしょう。看護DXを導入すると、ナースコールとスマートフォンの連携や情報共有のデジタル化などにより、業務負担の軽減や医療安全の向上、看護ケアの充実につながる場合があります。
 
この記事では、看護DXの定義や具体的な活用事例、導入を成功させるポイント、活用できる補助金制度について、看護DXの導入を検討している方に向けて解説します。自施設の課題に合った看護DXの進め方を知り、現場に無理なく導入して看護師の負担軽減や定着促進につなげたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

▼目次

1.看護DXとは

看護DXは国が定めた制度の名称ではなく、現時点では明確な定義もありません。
 
看護DXとは一般的に、デジタル技術を活用して看護業務のプロセスや働き方を見直し、業務効率化やケアの質向上につなげる取り組みを指します。医療現場では、少子高齢化や労働人口の減少に伴い、増加する医療需要に対して担い手が不足することが懸念されています。
 
こうした背景から、限られた人材で安定した医療・ケアの提供体制を維持・構築することが、看護現場における課題の1つです。
 

看護DXと医療DXの違い

医療DXと看護DXは、どちらもデジタル技術を活用して業務や仕組みを改善する取り組みですが、対象とする範囲が異なります。両者の違いを以下の表にまとめました。
 

項目 医療DX 看護DX
対象 医療提供体制全体 看護業務・看護提供体制
おもな目的 医療情報の連携・医療提供体制の効率化 看護業務の効率化・看護の質向上
オンライン資格確認、電子処方箋 看護支援システム、音声入力
範囲 病院・薬局・行政など 看護師・看護部門などの現場

 
このように、看護DXは医療DXの一部として位置づけられ、看護師が担う業務や看護提供体制の改善に重点を置いた取り組みといえます。医療DXについては、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
 
▼関連記事:
医療DXとは?4つの取り組み事例と医療DXが進まない理由を解説
 

看護DXが推進される背景

看護DXが推進される背景には、看護師不足や業務負担の増加があります。
 
高齢化や医療ニーズの複雑化・多様化、労働人口の減少などにより、看護現場では人材確保が課題となっています。看護師は患者さんへのケアに加え、看護記録や申し送り、ナースコール対応など多くの業務を担っており、負担が大きくなりやすい状況です。
 
業務量の増加は看護師の心身の負担を大きくし、時間外勤務や離職につながるおそれもあまます。限られた人員でも質の高い看護を提供し、働き続けやすい環境を整えるためにも、業務を効率化する看護DXが重要になっています。
 

看護DXを導入する流れ

看護DXは、次のような流れで進めていくのが一般的です。
 
1. 看護DXを推進する体制をつくる
2. 現場の業務と課題を明確にする
3. 目標と効果を確認する評価項目を決める
4. 課題に合うシステムを選定し、運用方法を整える
5. 一部の病棟や業務で試験的に運用する
6. 効果と課題を評価し、運用を改善する
7. 対象病棟や業務を段階的に広げる
 
うまくいかなかった点があれば、システムの設定や業務手順を見直し、改善を重ねながら運用を定着させましょう。

2.看護DXで期待できる効果

看護DXを導入するメリットとして、業務時間の短縮や看護師の負担軽減、情報共有の円滑化などが挙げられます。ここでは、看護DXで期待できる効果を見ていきましょう。
 

業務時間や残業時間が短縮できる

看護DXによって看護記録の作成や測定データの転記を効率化できれば、業務時間や残業時間を短縮できる可能性があります。
 
看護師の業務負担が大きいものの1つが、看護記録やサマリー作成などの記録業務です。音声入力システムや生成AIを活用することで、キーボードで入力するよりも記録時間を短縮できる場合があります。
 
また、体温計や血圧計の測定値を、専用の読み取り端末を介して電子カルテへ自動連携できる仕組みもあります。自動記録システムの活用により、転記の手間を減らして、入力ミスのリスク軽減にもつながるでしょう。
 
医療現場における生成AI導入効果や活用事例については、以下の記事もご参照ください。
 
▼関連記事:
医療現場で生成AIを活用できる場面5つ!活用事例やデメリットも解説
 

看護師の身体的・精神的な負担を軽減できる

看護DXによって看護師の移動や対応にかかる負担を軽減できれば、業務を効率化できるでしょう。
ナースコール対応や患者さんの状態確認で病棟内を何度も往復することは、看護師の身体的・精神的な負担となります。離床センサーや見守りシステムを活用すれば、患者さんの動きを検知して看護師へ通知してくれるため、必要なタイミングで訪室しやすくなります。
 
また、ナースコールを業務用スマートフォンと連携すれば、病棟内のどこにいても呼出の場所や種類を確認可能です。看護DX推進によるデジタル機器の活用によって、看護師の移動負担を減らし、優先順位を考えて対応しやすくなるでしょう。
 

多職種や院外の関係者と円滑に情報共有しやすくなる

看護DXによって必要な情報を共有しやすくなれば、多職種連携の促進や伝達漏れの防止も期待できます。
 
電子カルテや看護支援システムで情報を一元化すると、看護師だけでなく、医師やそのほかの医療従事者も患者さんの状態や診療・ケアの進捗を確認しやすくなります。必要な情報を共通のシステムで共有することで、多職種連携の促進や、伝達漏れ・認識のずれの防止につながるでしょう。
 
電子カルテと連携できるシステムや導入によるメリットについては、以下の記事でも紹介しています。
 
▼関連記事:
電子カルテと連携できるシステムと標準化の背景|メリット・課題を解説
 

患者さんと向き合う時間を確保し、看護ケアの質を高められる

看護DXによって看護記録や連絡などの間接業務を効率化できれば、生まれた時間を患者さんの観察やコミュニケーションなどに充てられます。
患者さんが抱えている不安や問題、生活背景を丁寧に把握できれば、個別性のある看護ケアの提供につなげやすくなるでしょう。
 

確認漏れや入力ミスを防ぎ、医療安全の向上につながる

看護DXを導入して確認や記録を支援する仕組みを整えれば、確認漏れや入力ミスのリスク軽減につながるでしょう。看護の現場には、患者確認や配薬・点滴、バイタルデータの入力など、正確性が求められる業務が数多くあります。
 
忙しい時間帯や業務が重なった場面では、看護師の注意力だけでミスを防ぐことが難しい場合もあります。患者認証システムや測定データの自動記録などを活用することで看護師の注意力を補い、医療安全を支える体制を強化できるでしょう。

3.看護DXの活用事例

看護DXは、ナースコールとスマートフォンの連携やセンサーによる見守りなど、さまざまな形で現場に取り入れられています。ここでは、看護DXの具体的な活用事例7つを見ていきましょう。

ナースコールとスマートフォンの連携

 

事例
前橋赤十字病院では、「NICSS-R8」と「ハンディナースコールシステム」を導入し、ナースコール端末をPHSからiPhoneへ変更。患者氏名や呼出種別を確認でき、緊急度の高い呼出を優先して通知することで、迅速な対応につなげています。

 
ナースコールとスマートフォンを連携すると、場所を問わず呼出を受けられます。患者氏名や呼出内容、優先度を確認してから対応できるため、看護師の迅速な判断や情報伝達、業務効率化につながります。。
 
▼関連記事:
納入事例 日本赤十字社 前橋赤十字病院 様|ケアコム
 

見守りカメラとナースコールの連動による転倒・転落対策

 

事例
宇治リハビリテーション病院では、ナースコールと見守りカメラを連動。センサー呼出時に病室の映像を確認できるため、訪室の優先順位を判断しやすくなり、夜間の職員の負担軽減や転倒・転落対策につながっています。

 
見守りカメラとナースコールを連携すると、センサーが反応した際に患者さんの状態を映像で確認できます。訪室前に状況を把握できるため、迅速かつ適切な対応につながります。
 
▼関連記事:
納入事例 医療法人せいふう会 宇治リハビリテーション病院 様|ケアコム
 

音声入力システムによる看護記録の時間短縮

 

事例
柏葉脳神経外科病院では、看護記録に音声入力システムを導入しました。スマートフォンで音声入力した内容を電子カルテへ転送することで、紙から電子カルテへ転記する手間を省き、記録時間の短縮にもつながっています。

 
日本看護協会の資料では、音声入力で記録の入力速度がタイピングの約4.5倍になった事例も報告されています。音声入力で観察内容をその場で記録できるため、時間外業務の削減や記録漏れの防止も期待できるでしょう。
 
▼関連記事:
看護DX事例から学ぶ!看護業務の負担を軽減するシステムと導入ポイント

4.看護DXの実践ガイド|導入を成功させる6つのポイント

看護DXは、デジタルツールを導入するだけで、必ずしも業務改善につながるとは限りません。
現場の課題や目的を明確にしたうえで、看護師の意見を取り入れながら段階的に進めることが大切です。
ここでは、看護DXを現場へ定着させ、導入効果を高めるために押さえておきたい6つのポイントを解説します。
 

現場の課題と達成したい目標を明確にする

看護DXを導入する前に、現在の業務を可視化し、どの作業に時間がかかっているのか、どの業務で負担やミスが生じているのかを確認しましょう。
 
現場の看護師への聞き取りや業務時間の測定をおこない、「1勤務あたりの記録時間」や「ナースコールへの平均対応時間」など、業務量や所要時間を把握します。
 
現場の課題が明確になれば、「記録時間を1勤務あたり10分短縮する」「ベッドサイドで患者さんとかかわる時間を10分増やす」などの具体的な目標を設定しやすく、システムの選定や効果の評価を判断しやすくなるでしょう。
 

現場の看護師の意見を取り入れ、不安を解消する

看護DXで導入するシステムを管理者だけで決めると、実際の業務に合わず、十分に活用されない可能性があります。
 
現場の課題に適したシステムを選ぶため、選定前に看護師へヒアリングをおこない、負担に感じている業務や必要な機能を確認しましょう。
 
また、「操作を覚えられるか」「かえって業務が増えないか」など、新しいシステムの導入に不安を感じるスタッフもいます。導入の目的や期待される効果を共有し、操作を学ぶ機会や導入後に相談できる窓口を設けることで、スタッフの理解が深まり、システムも定着しやすくなるでしょう。
 

小さく段階的に導入する

複数の課題を一度に解決しようといくつものシステムを同時に導入すると、新たな作業の追加や業務手順の変更が重なり、現場が混乱するおそれがあります。
 
まずは一部の病棟や特定の業務で試験運用をおこない、システムの操作性や業務への影響を確認しましょう。試験運用で得られた意見をもとに、設定や運用手順を見直してから対象範囲を段階的に広げることで、システムを現場に定着させやすくなります。
 

導入後の効果を振り返り、運用方法を継続的に改善する

看護DX導入後は、事前に設定した目標を達成できているか確認することも重要です。
記録時間や時間外勤務、ナースコールへの対応時間など、数値で把握できる評価項目を決めておくと、導入効果を評価しやすくなります。
 
また、数値だけで判断せず、看護師や患者さんから意見を集めるようにします。「操作に時間がかかる」「通知が多すぎる」といった問題があれば、システムの設定や業務手順を見直し、継続的に運用を改善しましょう。
 

操作研修や習熟度に応じたサポート体制を整える

新しいシステムを円滑に活用するためには、サポート体制も重要です。
 
操作研修では基本操作だけでなく、エラーや通信障害が発生した場合の対応方法も確認しておきましょう。
 
動画マニュアルや手順書を用意するほか、病棟内で質問や相談ができる担当者を決めておくことも大切です。デジタル機器への習熟度に個人差があっても、それぞれの看護師が自分のペースで操作方法を確認し、新しいシステムに対応しやすくなります。
 
現場で困ったときにすぐ確認できる体制を整えることで、システムの定着にもつながりやすくなるでしょう。
 

外部研修を活用して看護DXへの理解を深める

日本看護協会や都道府県看護協会などでは、医療・看護DXやICT活用に関する研修、事例共有会などが開催されることがあります。
 
外部研修を活用すれば、デジタル技術の基礎知識だけでなく、他院の導入事例や運用上の課題、現場への定着方法を学べます。
 
研修内容や対象者・開催時期・参加方法は主催団体によっても異なるため、日本看護協会や都道府県看護協会のWebサイトで参加条件を確認しておきましょう。

5.看護DXの導入で活用できる補助金制度

看護DXの導入では条件を満たせば、次のような補助金制度を活用できる可能性があります。
 

制度名 特徴
医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業 ICT機器やデジタルシステムを導入し、業務の効率化や職員の負担軽減に取り組む病院を支援する制度
働き方改革推進支援助成金 労働時間の削減に向けた設備・機器などの導入や、職場環境の改善に関する取り組みを支援する制度
デジタル化・AI導入補助金2026 職場の課題やニーズに合ったITツールの導入経費の一部を補助し、労働生産性の向上をサポートする制度

 
補助金制度はすべての病院が対象となるわけではありません。対象施設となる要件や補助率、申請期限は制度ごとに異なります。厚生労働省や各制度の公式サイトで最新情報を確認しましょう。

6.看護DXを導入して、業務効率化や看護師の負担軽減を目指そう

看護DXには、ナースコールとスマートフォンの連携や見守りセンサー、看護支援システム、音声入力など、さまざまな方法があります。
 
デジタル機器を活用することで、業務時間の短縮や看護師の負担軽減、医療安全や看護ケアの質の向上が期待できる場合があります。看護DXを職場に定着させるためにも、現場の課題を明確にし、看護師の意見を取り入れながら段階的に進めていきましょう。
 
▼参考:厚生労働省委託事業等各種報告書|厚生労働省
▼参考:これからはじめる看護DX事例紹介-病院編-|いきいき働く医療機関サポートWeb(厚生労働省)
▼参考:令和3年度 厚生労働省補助金事業「看護業務効率化先進事例収集・周知事業」報告書|日本看護協会リポジトリ
▼参考:令和7年度予算・政策に関する要望書|日本看護協会
 
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