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お役立ち 2024.12.26

【2024年最新】介護士の賃上げ|介護職員等処遇改善加算とは

「介護士の賃上げの具体策が知りたい」
「介護士の賃上げが進んだけれど、実際に給料はどれほど上がったの?」
 
介護士の賃上げ政策が進むなか、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
これまでの処遇改善政策により、介護士の給与は上昇傾向です。
 
しかし、全産業の平均額を下回る状況は続いており、介護士の賃上げはこれからの高齢化を支えるために欠かせない課題です。
 
この記事では、介護士の賃上げ政策の最新情報を詳しく解説します。2024年6月から施行された新加算「介護職員等処遇改善加算」にもふれ、経営者として知っておくべき情報や経営戦略をお伝えします。
介護職員の定着と質の高いサービスを目指す経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

▼目次

1.介護士の賃上げが必要な理由

介護士の賃上げが必要な理由は、以下のとおりです。
 

● 介護現場の人手不足解消
● 質の高いサービスの維持

 
厚生労働省の調査によると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要です。
一方、同調査で発表された介護職員の数は2022年度時点で約215万人であり、2026年度に向けて35万人の増員が求められています。
 
しかし、介護士の賃金の低さが人材確保を難しくしています。
2023年時点の介護職員の平均月収は26万3,600円で、全産業平均の31万8,300円と比べて5万4,700円低い状況です。
賃金が低いと職員の労働意欲が低下し、モチベーションや介護の質に影響をおよぼします。
 

このまま低賃金が続くことで介護士の不足が続けば1人あたりの業務量が増え、結果としてサービスの質が低くなります。そのため、ご利用者が安心して介護を受けられる環境を守るために、賃金の改善を通じて離職を防ぎましょう。
 
▼参考:厚生労働省「介護人材の処遇改善等(改定の方向性)」
▼参考:政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
▼参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況(賃金の推移)」

2.介護士の月額6,000円賃上げ施策の終了と今後の展望

2024年2〜5月に実施された月額6,000円の介護士の賃上げ施策は、2024年6月から施行した「介護職員等処遇改善加算」導入までの準備期間としての役割を果たしました。
この期間中、事業所は新加算を取得するための手続きや条件の整備、財務面の調整を進められたのです。
 
2024年6月にはじまった新制度では、事業所が加算を取りやすく介護士の賃金を引き上げる仕組みが整備されています。月額6,000円の一時的な賃上げで終わらないよう、事業所が加算制度をしっかり活用する工夫が必要です。
 
加算制度や介護報酬の見直しは、介護士の待遇を改善し、介護業界の働きやすさの向上を目指しておこなわれています。この取り組みで人材確保が進み、安心で質の高い介護を提供できる未来が期待できます。

3.介護士の給料は上がる?2024年度介護報酬改定の賃上げへの影響

2024年度の介護報酬改定によって、介護士の給料の増加が見込まれています。
理由は、以下のとおりです。
 
● 介護職員等処遇改善加算への一本化による算定要件の簡素化
● これまでの施策による介護士の賃上げの効果

 
それぞれ見ていきましょう。

介護職員等処遇改善加算への一本化【2024年6月施行】

2024年6月から処遇改善加算と特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3つが統合され「介護職員等処遇改善加算」となりました。
 
この一本化により、介護士の賃金アップが期待されています。
新設された「介護職員等処遇改善加算」が、従来の加算率より上昇したことが理由の一つです。
 
以下は、訪問介護における介護職員等処遇改善加算の加算率です。
 

加算区分 加算率
加算Ⅰ 24.5%
加算Ⅱ 22.4%
加算Ⅲ 18.2%
加算Ⅳ 14.5%

▼参考:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
 
訪問介護の場合、統合前に得られた最高の加算率は22.4%で、処遇改善加算Ⅰと特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等改善加算を取得する必要がありました。
一方、統合後は最上位の加算区分で24.5%が設定されており、賃金アップがより現実的になっています。
 
また、加算制度の一本化により取得条件が簡素化され、加算を活用する事業所が増えると見込まれます。
 
これまでは、賃金改善の仕組みの複雑さが原因で加算を取得しない事業所も多くありました。わかりやすい仕組みが導入されたことで、賃金改善を進める事業所の増加が期待できます。
 
各事業所の状況に応じた最適な加算区分の選択が経営戦略のカギです。
賃金アップを促進するわかりやすい新制度の導入が、介護現場の働きやすさや職員確保へよい影響を与えるでしょう。
 
▼参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」

これまでの施策がもたらした介護士の賃上げへの効果と今後の期待

統合前の加算制度の活用や基本報酬のアップにより、介護士の賃金は段階的に増えてきました。
 
たとえば、訪問介護事業所の加算取得による介護職員の賃金は以下のとおりです。
 

項目 平均月収(令和4年12月)
特定処遇改善加算も取得(1) 32万880円
処遇改善加算のみ(2) 26万8,030円
賃金の差 (1)-(2) 5万2,850円

▼参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
 
また、介護職員の平均月収も令和4年の25万7,500円から令和5年26万3,600円へ増加しました。それまでも年々増加傾向で、加算制度や介護報酬の改定が影響していると考えられます。
 
このように、加算の整備や介護報酬改定は介護士の給料に影響します。
2024年6月以降、新加算を算定できる事業所が増えれば、さらに多くの介護士が恩恵を受けられるでしょう。
 
賃金アップを通じて職場環境の改善が進めば、介護士の定着率向上や新規採用の促進といった効果も期待できます。
 
参考:政府統計の総合窓口「令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

4.介護士の賃上げのために事業所ができる2つのこと

介護士の賃上げに向けて、事業所ができる具体的な方法は以下のとおりです。
 
● 加算取得に向けた環境整備
● 能力に応じた段階的な賃上げ

 
介護士の賃上げは、人材確保とスタッフの定着に重要な要素です。しかし、全産業の平均と比べると依然として低い状況にあるため、根本的な改善が必要です。
 
事業所の経済的負担を大きくせずに、介護士の賃上げを成功させるポイントを見ていきましょう。

1. 介護職員等処遇改善加算の取得に向けた環境整備

2024年6月施行の「介護職員等処遇改善加算」を活用できれば、介護士の賃上げを効率的に進められます。
加算の算定には、以下の要件の達成が必要です。
 
● キャリアパス要件:立場や仕事内容に応じた賃金体系の整備、昇給制度の導入
● 月額賃金改善要件:新加算の一定割合以上を月給に反映すること
● 職場環境等要件:職場環境の改善に向けた取り組みをおこなうこと
 
要件をどれだけ満たしているかによってI〜Ⅳの4段階に分類され、加算Ⅰは条件が厳しい分、加算率は高くなります。
 
新しく事業所を立ち上げる場合や、加算取得未経験の事業所は、まず取得しやすい加算Ⅳの取得を目指し、段階的に環境整備を進めましょう。
 
加算の取得に向けた準備段階として、事業所内でスタッフへの情報提供や意識改革をおこなうことも大切です。
加算の要件に対する理解を深めてもらい、現場の協力を得ることで、スムーズに取得できるでしょう。
 
介護士の賃上げは人材確保とスタッフの定着に欠かせません。
スタッフの定着はサービスの質向上にもつながり、事業所の評価が高まる効果が期待できます。
 
▼参考:
厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」

2. 能力に応じた段階的な賃上げ

全職員の賃金を一律に引き上げることは経営負担を増大させるため、計画的なアプローチが必要です。
そのため、職員の能力や成果に応じた段階的な賃上げが重要になります。
 
たとえば、介護福祉士やケアマネジャーの資格取得者には、毎月の資格手当を支給する制度を導入するとよいでしょう。また、リーダー職や管理職などの責任あるポジションに昇進した職員には、役職手当やボーナスを追加支給することでキャリアアップの意欲を高めることが可能です。
年齢や経験にもとづいた賃金体系にくわえて、スキルや役職に応じた報酬制度を明確にすることで、職員にとってやりがいを感じてもらえます。
 
このように、年功序列だけに左右されない個人の能力を評価する賃金アップのシステムを整えることで、職員の成長と経営のバランスを考慮した賃上げ策がおこなえます。
 
あわせて資格取得費用の補助や研修参加への支援をおこなえば、職員のスキルアップが促進され、サービスの質向上の相乗効果がねらえるでしょう。

5.介護士の賃上げにともなう経営対策

介護士の賃上げは人材確保に効果的ですが、事業所の経営には課題をもたらします。
人材が増えることで人件費が増加し、収益が圧迫される可能性があるためです。
 
人件費による経営圧迫を防ぐには、全体的な人件費をおさえながら個人の給料を引き上げる工夫が必要です。
 
たとえば、ICT(情報通信技術)の導入による業務効率化があげられます。
介護情報システムやモバイル端末を活用することで、職員の負担を軽減することにつながります。それにより効率的に業務をおこなえるようになり、賃上げ資金に回すことが可能です。
 
こうした技術やツールの導入は、初期費用がかかるものの、業務の効率化によって必要な人材を過剰に確保する必要がなく、長期的な人件費削減が期待できます。
厚生労働省もICTの導入を推奨しており、事業所が取得できる加算も新設されたため、経営を後押ししてくれるでしょう。
 
介護士の賃上げを実現しつつ経営効率化を進め、安定した事業運営を目指すことが経営者に求められる課題です。
給料アップと経費削減を両立させる工夫をし、質の高い介護サービスを長く提供できる仕組みを築くことが重要です。
 
▼参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」

6.介護士の賃上げを効率的におこなう経営戦略を図りましょう

介護士の賃上げは、介護事業所の成長と安定化のチャンスです。
効果的な賃上げ施策により、優秀な人材確保とスタッフの定着率の向上が期待できるためです。
 
2024年6月からはじまった介護職員等処遇改善加算の最大活用と効果的な賃上げ実施、経営効率化の同時進行で経営戦略を図ることが事業所成功のカギとなります。
 
長期的な視点で賃上げ戦略を立て、質の高いサービス提供と事業の成長を実現しましょう。
 
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