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お役立ち 2024.03.11

看護マネジメントとは?看護組織を担う管理職に必要な力と役割を解説

日々変化する医療現場を、よりよいものにする方法のひとつである看護マネジメント。
看護マネジメントをうまく実施できると、組織が効率的に動けるため結果として、患者さんに寄り添ったケアができるでしょう。

 

看護マネジメントにはキャリアや知識だけではなく、現場の課題を客観的に分析する力や周囲とコミュニケーションを円滑におこなう力が必要です。

 

本記事では、看護マネジメントのプロセスや役割を詳しく解説します。
この記事を読むことで管理職に必要な力を理解し、根拠を持った看護マネジメントの実施につなげてください。

▼目次

1.看護マネジメントとは?


看護マネジメントとは「医療現場で必要とされる看護のあり方を常に考え、目標を統一しその目標を実現したり達成したりするために取り組むこと」です。
ここでは、看護マネジメントのプロセスと役割を詳しく解説します。

看護マネジメントのプロセス

看護マネジメントのプロセスは「部署の方針を計画し看護組織をまとめ、患者さんへよりよいケアを提供するためこと」です。
看護マネジメントは主に「看護部長」「看護師長」「主任」が担います。

 

というのも、看護師がそれぞれの判断でケアを実施すると、うまく連携できず患者さんに必要なケアができないためです。具体的には、担当の看護師が変わるたびにケアの方法が異なったり、看護師によって退院のゴールが違ったりするかもしれません。
この場合、患者さんが困惑してケアへの満足度が低下する恐れがあります。

 

管理職が看護マネジメントを考えていくことで、スタッフ間で看護ケアの目標を統一でき、患者さんへ継続的かつ、よりよいケアができます。
さらに、管理職だけで課題を検討するのではなく、現場の声を聞きながら問題点を見つけて改善していくと、チーム力の向上が期待できるでしょう。

看護マネジメントに求められる役割

看護マネジメントに求められる役割は、「看護師の組織化」と「問題の把握」です。
なぜなら、看護師を組織化できなかったり問題を把握できなかったりすると、患者さんへのケアに影響するだけではなく、インシデントやアクシデントにつながる可能性があるためです。

 

例えば、患者さんへの申し送りが看護師間で正確に行われなければ必要なケアがおこなわれなかったり、患者さんに負担をかけたりします。さらには、情報共有がスムーズでなければ、アレルギー情報を見逃して誤薬が起こる場合があります。

 

自分が行う業務をチームで役割分担しつつ、連携を取らなければ患者さんに適切なケアを十分におこなえないでしょう。そのため、患者さんへのケアのために看護師がコミュニケーションを取り、効率よくケアすることが大切といえます。

2.看護マネジメントを担う3つの管理職

2.看護マネジメントを担う3つの管理職

看護マネジメントを担うのは以下の通りです。

 

● 主任
● 看護師長
● 看護部長

 

看護マネジメントを担う管理職の種類をそれぞれ解説していきます。

主任

主任の主な役割は看護業務のほかに、看護師長の補佐と看護師の指導・教育です。
一般の看護師や他の職種のスタッフとコミュニケーションを密におこない、現場の問題や課題の把握をします。さらに、スタッフに指導すると患者さんへのよりよいケアができ、部署全体で看護師の成長を期待できます。

 

看護師長と現場を支える看護師の仲立ちをする存在といえます。

看護師長

看護師長の役割は、部署全体をまとめ他の部署と連携したり、チーム医療を円滑に進めたりすることです。部署の代表として全体の問題や課題を把握できることで、医療事故やインシデントの予防や対策をします。
部署内の目標を決めて、達成できるように主任とともにスタッフを支援します。院長や看護部長などといった経営陣との橋渡し役も担う存在です。

看護部長

看護部長は、看護部門の責任者です。チーム医療を維持、向上していくために他職種と連携を図り、病院の運営にかかわる重要な役割です。

 

看護部として「どのような看護をしていくのか」「患者満足度の向上のために何を実施するのか」など理念を掲げ、看護師が同じ目標に向かって働ける環境づくりをします。

 

看護部長は、看護部の組織を統括するマネジメント業が主な役割であり、他職種や他の病院との連携もおこないます。

3.看護マネジメントに必要なスキル

看護マネジメントに必要なスキルは6つあります。

 

● 知識・経験 
● 考える力
● コミュニケーション力
● 客観視できる力
● 分析できる力
● マネジメント力

知識・経験

看護師としての知識や経験は、看護マネジメントに必要です。
臨床の場では、臨機応変な対応が求められるためです。

 

患者さんや看護師、他の職種のスタッフなど状況は大きく異なります。たとえば、看護師と患者さんとの間でトラブルが発生した場合や他の職種のスタッフと看護師で意見が食い違う場合などは、双方が納得するような解決方法を示さなければなりません。

 

そのため、的確な指示や状況把握、周囲との連携を図るために十分な経験と知識が必要です。

考える力

考える力は、患者さんの生命にかかわるケアを実施する看護師がリスクを予測し回避するために重要です。
ただし、慎重にケアしたり、確認を繰り返したりしてもミスは起こるもの。
そのため、マネジメントにより考える力を発揮してミスが可能な限り起こらないようにし、万が一ミスが発生したときには患者さんへの影響を最小限にできるような迅速な対応が重要です。

コミュニケーション力

コミュニケーション力は、看護師や他の職種スタッフと業務に取り組むうえで大切です。

 

管理職は看護師が話しやすい雰囲気作りをできると、スムーズな意見交換につながるでしょう。相談しやすい環境でなければ「報告したら怒られるかもしれない」「報告してもきっと変わらない」などと、一般の看護師が考えてしまいミスにつながるかもしれません。

 

さらに「◯◯さんがきついから勤務を変えてもらいたい」「仕事がつらいから辞めたい」などと考えているときに、相談できなければスタッフが定着できない恐れがあります。

 

看護師それぞれが悩んでいることに耳を傾けコミュニケーションを図ることが、チームとしてのよりよい看護ケアの提供につながるでしょう。

客観視できる力

医療現場での問題を客観的に把握できる力も管理職に必要です。
医療現場で患者さんに適切なケアをおこなうためには、物事を俯瞰して見なければなりません。

 

問題が起きた際にも客観視できると、的確に指示を出したり対処したりできるため、落ち着いて対処することが大切です。

分析できる力

看護マネジメントには、看護組織の課題を分析する力が求められます。
どのような組織でも課題はあるものです。課題を分析し解決するのが看護マネジメントの役割です。

 

ただし、課題の提示だけでなく、解決方法を提案したり話し合って対処したりする力が求められます。
看護マネジメントを発揮できるとチームでの分析につながるため、最善な施策を導き出せるでしょう。

マネジメント力

チームをまとめるためのマネジメント力も大切です。

 

看護部の理念のみならず部署目標や看護師それぞれの目標があります。チーム力の向上、一般の看護師のスキルアップやキャリアアップを支援するかかわりも欠かせません。

 

管理職としてチームを動かす力が求められるといえるでしょう。

4.看護マネジメントのポイント

看護マネジメントのポイントは以下の2つです。

 

● 看護マネジメントラダー
● リフレクションの活用

 

看護マネジメントを担う管理職が実施すべきポイントを具体的に解説します。

看護マネジメントラダー

看護マネジメントラダーは、日本看護協会が提示している病院の管理者向けの指標です。2018年に作成されたものであり、主に以下の6つの能力に分類されます。

 

能力 内容
組織管理能力 ・資源(人的・物的リソースなど)を活用すること
・他部門と交渉したり調整したりすること
質管理能力 ・患者さんの生命や生活をはじめ尊厳を尊重しつつ、看護ケアの質を保証すること
・必要なデータを収集し可視化したり、評価・改善したりすること
人材育成能力 ・組織として看護師を育成したり支援したりすること
・管理職がスタッフの目標に合わせて支援を行うこと
危機管理能力 ・可能な限りリスクを避け、リスクが生じた場合でも影響を最小限に抑えるように努めること
・リスク分析により予防策を実施すること
政策立案能力 ・看護の質向上を目的に制度や政策を活用したり、制度そのものを提案したりすること
・制度の改正や提案をおこなう場合もあり看護の質向上に努めること
創造する能力 ・新たなものを創り出し、幅広い視野から組織の方向性を見出すこと
・地域のニーズを検討し、必要な看護ケアを実施すること

出典元:病院看護管理者のマネジメントラダー|日本看護協会

 

医療現場において、管理職者は課題に取り組むことが重要です。特に、現在は地域包括ケアシステムが推進されており、これらの6つの能力を活かして課題を解決しなければなりません。

看護マネジメントリフレクション

一般的に、リフレクションとは「自身が経験した事を振り返り、考えや行動を改善する方法」のことです。

 

看護マネジメントでもリフレクションを活用し、組織をまとめるための思考や行動を身につけることが重要です。具体的なリフレクションの方法は以下の3つです。

 

リフレクションの方法 特徴
KPT(Keep・Problem・Try) ・「続けていくこと」「問題点」「次回取り組むこと」の3つの視点に分けて振り返る
・問題点の活かし方を具体的に検討できる
KDA(Keep・Discard・Add) ・「続けていくこと」「破棄すること」「追加して取り組むこと」の3つの視点で振り返る
・必要なものを整理できるためキャパオーバーを防げる
YWT(Y:やったこと・W:わかったこと・T:つぎにやること) ・シンプルな手法
・経験したことからの気づきを整理し、次からの計画を立てる

 

看護マネジメントをおこなう際には、看護師の能力やキャリアを評価し、看護師の質の向上や成長を促すためのツールやシステムを導入して実施します。

 

看護実践を振り返り、次に生かすようにできると看護マネジメント力の向上が期待できます。自身に合う方法で看護マネジメント力を分析して、実践の場で活用しましょう。

 

参考:経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」

5.看護マネジメントは患者さんへのケアをより良くするための方法

看護マネジメントは、知識や経験だけではなく組織やケアを客観的に考え、周囲と円滑にコミュニケーションを取る事が重要です。
医療現場において、より良い患者ケアのために管理職は課題を分析しなければなりません。
結果として、看護マネジメントが患者さんへの満足度が高いケアをできるでしょう。