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お役立ち 2023.11.03

介護施設の防災マニュアルに取り入れたいポイントや災害時の備えについて解説

介護施設では、火災をはじめ地震や水害などの大規模災害への備えが必要不可欠です。
特に介護施設ではご自身では思うように体を動かせず自力避難が困難な方や、認知力の低下により咄嗟に判断できない方などが利用していることもあり、避難に時間がかかってしまうというケースもみられます。

 

さらに夜間や休日に災害が起こった場合、介護スタッフの人数が限られているため、的確かつスピード感のある避難行動を行わなくてはなりません。
介護施設では、これらの想定を踏まえて防災マニュアルの作成や避難訓練を実施して、日頃から高い防災意識を持っておくことが大切です。

 

この記事では、介護施設における防災マニュアルの必要性や取り入れるポイントについて解説します。

▼目次

1.介護施設における防災マニュアルの必要性

防災マニュアルとは災害が起きた際に、スタッフ一人ひとりが取るべき行動や役割分担などをあらかじめマニュアル化したものです。
避難経路や避難方法、患者さん・ご利用者の安否確認の方法、備蓄品の取扱いなどを定めておくことで、緊急時の備えとなります。
患者さん・ご利用者だけでなくスタッフの命を守るためにも、災害が起こった際に適切に避難行動を行えるように準備を進めておきましょう。

 

災害発生時に介護施設で求められる対応は以下の通りです。

 

患者さん・ご利用者の安否確認と救護活動

● 患者さん・ご利用者と介護職員の安否確認
● 体調に異変がないかチェックする
● 安全な場所へ移動する
● 24時間医療機器を必要とする患者さん・ご利用者もいるので、機器に不備がないかバッテリーの残量が十分にあるか確認する

 

災害時においては人命保護が最優先となります。まずは患者さん・ご利用者と介護職員の安否を確認しましょう。
安否の確認ができたら患者さん・ご利用者一人ひとりの体調を観察し、優先的にケアを必要としている人がいないか把握します。外傷を負ってしまったり、災害でパニックになってしまったりすると、普段より手厚いケアが必要になるケースもあります。
酸素や輸液ポンプなどを使用している場合は、これらの医療機器を使用したまま避難を余儀なくされます。酸素の残量や医療機器のバッテリーを確認し、生命維持を最優先させましょう。

災害状況の情報収集

災害発生時に最も重要なのが情報収集です。ライフラインの寸断が起こりうる緊急事態の中で、正しい情報を集めなければなりません。
停電すればテレビは視聴できなくなるおそれがあり、災害時用のラジオを用意しておくことをおすすめします。
自治体では防災無線を配備し、災害の状況や避難指示などの重要な情報を発信しています。
災害が発生している場所や規模をリアルタイムで把握することで、安全な経路での避難行動が可能となります。

避難行動

介護施設の患者さん・ご利用者は自力避難が困難な方も多く、身体的・精神的レベルもさまざまです。一人ひとりの歩行状態やADLに合わせて避難のサポートが必要となります。
車椅子での避難や寝たきりの方の避難は人手も時間もかかるので、普段から避難方法を訓練しておくことが大切です。

 

認知症を発症している場合、災害の状況や避難指示を理解できないケースもあります。職員が焦ったり不安を煽るような言動をとったりすると混乱して避難行動の遅れに繋がることが予想されます。
落ち着いて避難できるよう、起こりうる状況を想定したマニュアル作成と日頃の訓練で備えておきましょう。

2.介護施設の防災マニュアルに取り入れるべきポイント

災害への備えを万全にするために、防災マニュアルに取り入れるべきポイントを解説します。

避難経路の確認

災害の規模によっては、予定していた避難経路を使えないこともあります。そのため、複数の避難経路を確認しておくことが重要です。

 

土砂災害や津波、火山の噴火など地域ごとに発生しやすい災害の種類はさまざまです。
過去の災害を教訓とし、多くの自治体では危険な地域を記したハザードマップが作成されています。
ハザードマップを元に、施設の周囲や避難経路を実際に確認してみてください。

備品の定期チェック

災害に備えて介護施設が用意しておくべき備蓄品をご紹介します。
備蓄品の目安は3日分とされています。帰宅困難者や近隣施設からの受け入れも想定して、余裕をもって備蓄しておくことをおすすめします。

 

● 保存水
● 保存食
● 毛布、保温シート
● 医薬品類
● 携帯ラジオ、懐中電灯、電池
● トイレットペーパー、オムツなどの衛生用品
● とろみ剤、流動食

 

災害の規模によっては食料や水などが長期間手に入らなくなる可能性も出てきます。備蓄品の数や期限を定期的にチェックしておきましょう。

緊急連絡先の確認

患者さん・ご利用者の家族や親戚、かかりつけ医などの緊急連絡先をリスト化しておきましょう。
リスト化しておくことで、災害時に体調不良や外傷などが起きた際に、家族に速やかに連絡をできるというメリットがあります。
災害時、家族は患者さん・ご利用者の安否を心配します。緊急時にも連絡を取りやすいように、電話、メール、SNSなど複数の連絡手段を確保しておくことが望ましいです。

防災訓練の実施

介護施設は自力避難が困難な方を入所対象としており、また不特定多数の方が出入りする「特定防火対象物」と規定されています。そのため、消防法により年2回の避難訓練が義務化されています。
宿泊を伴う介護施設では、2回のうち1回は夜間に訓練するか、夜間に災害に見舞われた想定での訓練が求められています。
地震、火事、水害、職員の人数が少ない時間帯など、さまざまなケースを想定して防災訓練を実施しておき、いざという時に取るべき対応をシュミレーションしておくことが大切です。

施設の耐震・防火対策

災害時において天井落下、窓の損壊などで怪我や建物の下敷きになった例も数多く報告されています。そのため、建物や設備の安全性についても対策が必要です。

 

● 建物の耐震性能を把握しておく
● 防火素材のリネン
● 大型家具の固定
● 避難経路には倒れやすいものや割れやすいものを置かない

 

1981年以前に建築されている建物は旧耐震基準で設計されており、中規模の地震であっても倒壊や損傷などの影響を受けやすいです。
旧耐震性基準の建物は、速やかに補修作業や耐震対策を実施していくことが求められます。
建物内部でも、大型家具の固定、避難経路に障害物を置かないなど、日頃から災害を想定しつつ環境を整えていくことも大切です。

3.災害時に介護施設で発生しやすいリスク

介護施設は寝たきりの方や歩行が困難な方など、日常的に援助が必要な方が利用しています。健康な方とは違い、次のような問題が発生しやすいという特徴があります。

自力避難が困難で逃げ遅れる

介護施設の患者さん・ご利用者は高齢で尚且つ介護が必要な状態のため、災害発生時に自力での避難が難しく、逃げ遅れてしまうケースもあります。
体力の衰えが原因で長距離の移動が困難であったり、避難中に転倒してしまったり、災害弱者になりやすいです。

 

さらに介護施設の場合、夜間は1〜2名体制での勤務体制がほとんどで、限られた人数で患者さん・ご利用者の避難を支援しなければなりません。
高齢者の避難には多くの人手が必要です。自分や家族の安全が確保できた職員は、職場へ駆けつけるようマニュアル化し連携を取れるように対策を取っておく必要があります。

 

介護施設の人手不足についてはこちらで解説しています。
▼介護施設の人手不足を解消するには?業務改善のポイントについて解説

避難所での生活に適応できない

災害の規模によっては住み慣れた介護施設を離れての避難生活が必要となる可能性もあります。慣れない環境で体調を崩し、精神的に参ってしまうことも少なくありません。
避難生活が長期化した場合、身体的・精神的なストレスから免疫力も低下しやすくなり、持病の悪化や他の病気を併発しやすくなってしまいます。

医療機器・介護物資の不足で普段どおりの生活を送れない

簡易的な避難所では、医療や介護に必要な物資が限られていることがほとんどです。
常時必要な医薬品やおむつなどが不足することにより、健康維持が困難になる可能性があります。
また、高齢者は食事形態にも注意が必要です。介護施設では細かく刻んだ食事や、嚥下しやすいようにとろみ剤が必要なケースもあります。
こういった高齢者の特徴に合わせた物資を備えておくことで、避難先でも患者さん・ご利用者の健康を守れるようになります。

4.介護事業所のBCP策定が義務化されている

BCP(事業継続計画)とは、自然災害や感染症の拡大などの緊急事態が発生した際にも営業が停止することがないよう、あらかじめ対策をとっておくことです。
緊急事態においては、介護施設の運営に必要な物資や人材の不足が懸念されます。患者さん・ご利用者の生活を守るために、限られた人員や物資でどのように営業を継続していくのかという観点で対策を講じておく必要があります。

 

2021年の介護報酬改訂により、介護事業所に対し2024年4月までにBCPの策定が義務化されました。BCPを策定していない事業所に対しての罰則は発表されていませんが、緊急事態が発生した際にBCP策定を行っていたかどうかと責任を問われる可能性も出てくるでしょう。
介護事業所の営業が継続できなければ患者さん・ご利用者が生活できなくなるだけでなく、介護職員の雇用を守れないというリスクも出てきます。

 

BCP策定のメリット
● 患者さん・ご利用者と職員の生命を守ることができる
● 事業の被害を最小限に抑えることができる
● 税制優遇や補助金を受け取れる

 

災害など非常事態が起きても安定した介護サービスを提供できると、患者さん・ご利用者や家族から信頼のおける施設として評価されます。
自然災害や感染症の蔓延などの緊急事態が発生しても、安全に施設運営を継続できるよう対策を進めておきましょう。

5.介護施設では防災マニュアルの作成と定期的な避難訓練の実施が大切

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