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特集お役立ち 2023.08.18

転倒転落リスクの看護計画|短期・長期目標や個別性を考慮した立案方法を解説

転倒転落の看護計画は、患者さんが安心・安全な療養生活を送るために立案します。転倒転落の関連因子をアセスメントして、患者さんの個別性に合わせた計画を立てることが重要です。

 

本記事では、転倒転落の看護計画を立案する前に確認すべきことや、転倒転落の看護計画の具体例を解説します。看護計画の立案に不慣れな新人看護師や教育を行う際には、ぜひ参考にしてください。

 

▼目次

1.転倒転落の看護計画を立案する前に確認すべきこと

転倒転落の看護計画を立案する前に確認すべきことは次の通りです。

 

● 短期目標と長期目標を立てる
● 認知症や筋力低下などの関連因子を整理する
● 個別性を考慮する

 

それぞれ解説します。

短期目標と長期目標を立てる

長期目標は「転倒転落を起こさない」などの看護問題の解決を示す内容で設定します。短期目標は、長期目標に至るまでの関連因子を解決する内容を設定します。短期目標の具体例は次の通りです。

 

● ふらつきのない安定した歩行能力を獲得できる
● 身体機能の回復のために栄養状態を改善できる
● 安全に歩行できる環境を整える

 

関連因子の数だけ短期目標を設定して、それぞれの目標を達成できる援助を立案しましょう。

認知症や筋力低下など関連因子を整理する

看護計画を立案するには、転倒転落の関連因子を整理する必要があります。転倒転落の関連因子の一例をあげると次の通りです。

 

患者側 ●   認知症による理解力・注意力・判断力の低下

●   筋力低下による歩行能力の低下

●   夜間頻尿による行動頻度の増加

●   ドレーン類や尿カテーテルによる転倒リスク

●   睡眠剤・鎮痛剤によるふらつき

職員側 ●   転倒転落リスクの関連因子の理解不足

●   離床センサー類の設置の不十分

●   入院・転入患者のオリエンテーション不足

●   睡眠剤導入後の観察不足

●   ポータブルトイレの設置場所の不備

施設環境 ●   夜間照明の不足

●   すべりやすい・つまずきやすい床

●   ナースコールや床頭台の位置が不適切

 

個別性を考慮する

患者さんの個別性を考慮することも重要です。患者さんの性格、自宅環境、生活歴はそれぞれ異なるためです。
例えば、次のような患者さんがいるとします。

 

● 遠慮がちな性格
● 退院後独居
● 家に人が来ると気疲れしてしまう

 

遠慮がちな性格は、介助が必要な際に看護師を呼ばない可能性があるため、転倒転落につながります。必要なときはナースコールを押してもらえるように理解を促す必要があるでしょう。
退院後独居であるため、自宅環境やADLに応じたリハビリや介護用具の導入、サービス調整が必要です。また、できるだけ同じ職員を担当にするなど、気疲れに対する考慮も必要になります。
患者さんの現病歴や既往歴だけでなく、性格や生活歴、自宅環境などの個別性を考慮して、短期・長期目標を設定しましょう。

2.高齢者の転倒転落リスクの看護計画

転倒転落リスクの看護計画の具体例を紹介します。看護計画の内容は医療機関によって異なるため、あくまで一例として参考にしましょう。

看護問題

看護問題とは、患者さんの健康上の問題のなかで、看護師が介入して解決へつなげられる問題のことを指します。まずは、転倒転落を引き起こす関連因子を整理しましょう。

 

看護問題 骨折後のADL低下による転倒転落リスク
関連因子 ●   長期安静状態による歩行能力の低下

●   遠慮がちな性格による転倒転落リスク

 

看護目標

看護問題の解決を示す長期目標と、長期目標に至るまでの短期目標を設定します。

 

長期目標 転倒転落を起こさず療養生活を送ることができる
短期目標 ●   ふらつきのない安定した歩行ができる

●   必要なときはナースコールを利用できる

観察計画(op)

目標を達成するための観察計画を立案します。転倒転落の場合は、身体能力や日常生活の様子などを観察します。

 

計画 根拠
1.歩行動作(ふらつきの有無など)
2.疼痛の有無
3.拘縮の状態
4.認知力・注意力・判断力
5.睡眠時間
6.生活環境(ベッドの高さや床頭台の位置など)
7.衣服や履物
8.使用中の薬剤(睡眠剤など)
9.血液検査データ(栄養状態など)
1.歩行や立位が不安定であると転倒リスクがある
2.疼痛があると歩行の妨げとなり、転倒リスクがある
3.下肢が十分に曲がらないと安定した歩行ができない可能性がある
4.認知力・注意力・判断力が低下していると危険を知覚できない可能性がある
5.睡眠不足であると注意力や体力が低下して転倒リスクがある
6.ベッドの高さが適切でないと立ち上がりがスムーズにできず転倒リスクがある
7.下衣や履物のサイズが合っていないと転倒リスクがある
8.睡眠剤により覚醒不良となると転倒リスクがある
9.栄養状態が改善されていないと筋力や体力が回復しない可能性がある

援助計画(tp)

患者さんに実施する援助計画を立案します。歩行介助だけではなく、衣服や履物、物品配置など生活環境に対する援助も実施しましょう。

 

計画 根拠
1.歩行介助を実施する
2.身体機能訓練を実施する(筋力の維持・向上)
3.栄養を調整する
4.患者さんに合った衣服や履物を用意する
5.ベッドの高さやポータブルトイレの位置を調整する
6.夜間用のフットライトを用意する
1.患者さんの歩行能力に合わせて介助を実施することで転倒リスクを軽減できる
2.臥床状態が続くと身体機能は低下する。治療状況に合わせて早期に取り組む必要がある
3.必要なカロリーを算出する。医師や栄養士に食事メニューの調整を依頼する
4.身体に合った衣服や履物を着用することで歩行や姿勢が安定する
5.ベッドの高さを調整することで立ち上がりがスムーズになる。動線を考慮してポータブルトイレを設置する
6.夜間足元を見やすくするためフットライトを設置する

教育計画(ep)

患者さんやご家族の転倒予防の認識を高めるための教育計画を立案します。身の回りの転倒リスクや環境整備の重要性を伝えて、危険に対する認識を高めましょう。

 

計画 根拠
1.ふらつきや疼痛がある際は無理に歩行しないことを患者さんやご家族に伝える
2.衣服や履物は自分の足に合ったものを選択するように患者さんやご家族に伝える
3.生活環境を整える重要性を患者さんやご家族に伝える
1.危険な歩行につながることを理解してもらい転倒リスクを軽減する
2.身体に合った衣服や履物を着用することで歩行や姿勢が安定することを理解してもらい、転倒リスクを軽減する
3.退院後、自宅の生活環境を整えてもらうことで転倒リスクを軽減する

 

患者さんの個別性に考慮しながら、根拠に基づいた看護計画を立案しましょう。

3.患者さんの個別性を考慮した転倒転落の看護計画を立案しよう

転倒転落の看護計画を立案する際は、原因となる関連因子を整理する必要があります。また、現病歴や既往歴だけでなく、患者さんの性格や生活背景、自宅環境などの個別性を考慮します。その上で、退院後の生活を見据えた計画を立案することが重要です。

 

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