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看護における環境整備とは?目的から手順、観察項目、看護計画の立て方までを解説
看護における環境整備は、患者さんが安全かつ快適な療養生活を過ごすために実施する業務の一つです。転倒・転落や感染症予防などさまざまな目的があります。
本記事では、看護における環境整備の目的から手順、ポイント、看護計画の立て方までを解説します。「看護師としての環境整備を学び直したい」という新人看護師の方は、ぜひ参考にしてください。
介護における環境整備についてはこちらをご覧ください。
▼介護施設における環境整備の取り組み内容や重要性とは?メリット・デメリットも解説
▼目次
1.看護における環境整備の5つの目的
看護における環境整備の目的は次の5つです。
1. 患者さんにとって安全な環境を整える
2. 感染対策のためにも清潔な環境を保持する
3. 快適な療養環境にする
4. コミュニケーションの機会にする
5. 安全に業務を行える環境にする
それぞれ解説します。
1.患者さんにとって安全な環境を整える
環境整備は、患者さんが安全に療養できるように環境を整える目的があります。患者さんは、立位や歩行が不安定であったり、認知症により行動が予測できなかったりとADLや自立度はさまざまです。
わずか数センチの段差でつまずき、転倒につながることもあります。転倒・転落を防ぐためにも「患者さんの動線に障害物がないか」「滑り止めマットやセンサーマットの段差により転倒リスクはないか」などを注意する必要があります。
また、患者さんが生活しやすい物品配置にすることも必要です。ベッド周りや床頭台の物品配置なども、患者さんの自立度やご家族の意向に沿って整えましょう。
2.感染対策のためにも清潔な環境を保持する
療養環境を清潔に保ち院内感染を防ぐことは、看護における環境整備の基本的な目的の一つです。患者さんによっては、免疫力が低下している場合があり、感染症にかかりやすい方もいます。
新型コロナウイルスやノロウイルス、インフルエンザなどの感染症の蔓延を防ぐには、日々の環境整備が重要です。オーバーテーブルやベッド、ポータブルトイレ、床頭台は常に清潔な状態を保持しましょう。
3.快適な療養環境にする
療養環境を整えて、快適な空間にすることも環境整備の目的です。
例えば次のことに注意して療養環境を整えます。
● 快適な室温・湿度であるか
● カーテンやスクリーンによりプライバシーを配慮しているか
● 換気により空気を取り入れているか
● 寝具は清潔であるか
● 不快な匂いを取り除けているか
● 同室患者さんとの不和や騒音に悩まされていないか
療養環境を整えて、患者さんが心地よい入院生活が送れるようにしましょう。
4.コミュニケーションの機会にする
環境整備は患者さんとのコミュニケーションの機会にできます。
ただ話をするだけではなく、コミュニケーションを通じて次のような情報を収集しましょう。
● 入院生活や治療に対する不安や悩み
● 退院後の生活に対する不安や悩み
● 自宅環境の状況や生活習慣
● 在宅生活の協力者の有無
看護は入院から退院後の生活まで、一貫して援助する必要があります。コミュニケーションのなかで患者さんに必要な援助を導き出しましょう。
5.安全に業務を行える環境にする
環境整備は職員が安全に業務をできることにもつながります。例えば、移動・移乗実施する際に、障害物があると患者さん・看護師の双方にとって危険であるためです。
感染症は患者さんだけなく、医師や看護師などの職員にも感染する可能性があります。院内を清潔に保つことは、医療職員全体の安全を守ることにつながっているのです。
2.看護における環境整備の手順とポイント(留意点)
手順 | ポイント・留意点 |
1. 物品を準備する | 消毒用アルコールガーゼ・カーペットクリーナー・ポリ袋・ディスポーザブル手袋・使い捨てエプロンなど |
2. 患者さんに挨拶して、環境整備の説明と了承を得る | 患者さんの自立度に応じて手順を変更して、必要時介助も実施する |
3. 窓を開けて換気する | 患者さんのプライバシーに配慮する |
4. カーペットクリーナーでベッド上のゴミ掃除をする | ベッド上の私物を移動させる場合は、配置場所を覚えておく |
5. ベッドシーツのシワを伸ばし、枕や掛け布団を整える | シーツのシワは褥瘡の原因となるため、しっかりと伸ばす |
6. ベッド上にあった私物はもとの位置にもどす | 私物はもとあった場所にもどす |
7. 床頭台やサイドテーブル上の整理整頓を実施する | 私物を取り扱う際は患者さんに声掛けを行う |
8. 消毒液に浸したガーゼで床頭台・ベッド柵・オーバーテーブルなどを拭き取る | 高いところから順番に拭き取っていく |
9. 尿器やポータブルトイレの排泄物を処理する | 排泄物の性状や量を確認する |
10. 不要な吸引カテーテル、クッションなどを片付ける | – |
11. 患者さんの動線に障害物が無いか確認する | 転倒・転落が生じないように障害物を取り除く |
12. 不要なものがないか患者さんに確認して処理する | 患者さんに要望や意見がないかも傾聴する |
13. ナースコールを手元に置く | 手の届く位置に配置する |
14. 窓を閉めて、終了したことを患者さんに伝える | – |
15. 手洗いまたは手指消毒をする | – |
3.環境整備の看護計画の立て方
看護目標を設定する
環境整備を実施する際は、なんのために実施するのかという目標を立てることが重要です。
例えば次の通りです。
● 患者さんにとって心地よい療養環境にできる
● 病室を清潔に保ち感染症を防ぐことができる
● 転倒・転落の要因を取り除き安全な療養環境にできる
● コミュニケーションから患者さんの悩みや要望を傾聴して、看護につなげることができる
以上のような目標を設定することにより、援助実施後の評価基準にもできます。
観察項目を挙げる
適切に環境整備を実施するには、必要な観察項目を挙げる必要があります。
ここでは、一例として清潔と転倒・転落に関する観察項目を挙げます。
<清潔>
● シーツや寝衣服、ベッド周囲は汚れていないか
● ベッド上や周辺にゴミは落ちていないか
● 尿器やポータブルトイレの排泄物は処理されているか
● 湯呑みや箸、スプーンなどの食器類は清潔であるか
<転倒・転落>
● 離床センサーなどのコード類が障害物になっていないか
● 酸素のルートなどは整理されているか
● ベッドの高さは適切であるか
● ベッド柵は固定されているか
● 床が濡れていないか
● 履き物は手の届く位置に配置されているか
● ポータブルトイレの位置は適切か
看護計画を立案して効果的な環境整備を実施しましょう。