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お役立ち 2025.12.09
認知症の方が転倒転落をくり返すのはなぜ?すぐにできる対策5つを解説
認知症の方に何度も注意を促しても、同じように転倒をくり返してしまうといった現場の悩みは少なくありません。
介護スタッフにとって転倒事故は「ケガをさせてしまうのではないか」「ご家族に申し訳ない」などと、心身の負担が大きくなりがちです。
しかし、認知症の方が転倒転落をくり返すのは、介護スタッフの問題とは限らず、さまざまな要因が重なって起こります。
この記事では、認知症の方が転倒してしまう原因と現場でできる予防策など、安全支援のポイントを解説します。
▼目次
- 1.認知症の方が転倒転落をくり返す原因
- 記憶障害により注意や指示を忘れてしまう
- 焦りや妄想、一人歩きなどの症状の出現
- 筋力やバランス能力の低下、薬の影響によるふらつき
- 判断力や注意力が低下によるつまずき
- 暗い照明、ベッドからトイレが遠いなど環境の問題
- 2.認知症の方が転倒しやすい場所
- 3.すぐできる認知症の転倒転落予防策5つ
- 1.ベッドの高さを下げ、衝撃吸収マットを敷く
- 2.居室内の動線を見直し、つまずきやすいものを撤去する
- 3.トイレの場所を分かりやすく表示し、定期的な声がけをおこなう
- 4.転倒リスクの高いご利用者を把握し、情報共有を徹底する
- 5.見守りカメラやセンサーマットで早期発見の仕組みをつくる
- 4.認知症の方の転倒予防に役立つ見守りツール
- 5.認知症の方の転倒は見守り強化で予防できる
1.認知症の方が転倒転落をくり返す原因
認知症の方が転倒をくり返す背景には、認知機能の低下だけでなく、身体機能の衰えや環境の問題など、複数の要因が関係しています。
ここでは、転倒につながる主な原因を5つに分けて解説します。
効果的な予防策を立てるために、まずは原因を理解しましょう。
記憶障害により注意や指示を忘れてしまう
認知症の方が転倒をくり返す理由としてあげられるのが、記憶障害です。
「ゆっくり歩いてくださいね」「立ち上がるときは呼んでください」とスタッフが声をかけても、数分後にはその注意を忘れてしまいます。また、以前に転倒した経験そのものも記憶に残らないため、「前回も転んだから気をつけよう」という学習が困難です。そのため、同じ場所や動作で、何度も転倒をくり返してしまいます。
「さっき注意したのに」と感じるかもしれませんが、ご本人にとっては「初めてのこと」なので、決して注意を無視しているわけではありません。
焦りや妄想、一人歩きなどの症状の出現
認知症の方は「トイレに行かなきゃ」という強い焦りや、「家に帰らなきゃいけない」という思い込みから、突然立ち上がって歩き出すことがあります。
これらはBPSD(行動・心理症状)という症状で、ご本人にとっては「今すぐやらなければ」という切迫感があります。
周囲が止めようとしても、その理由を理解できず、無理に動こうとして転倒につながるケースも少なくありません。
とくに夕方から夜間にかけて症状があらわれやすく、「帰宅願望」や「夜間せん妄」などが転倒リスクを高める要因となります。
筋力やバランス能力の低下、薬の影響によるふらつき
加齢とともに筋力やバランス能力が低下するのは、当然の現象です。それに加えて認知症の方は、活動量の減少によってさらに身体機能が衰えやすい傾向があります。
また、睡眠薬や血圧を下げる薬、精神疾患の薬などの副作用として、ふらつきやめまいが生じることもあり、とくに服薬開始直後や用量変更時には注意が必要です。
ご本人は自分のからだの状態を正しく認識しにくく「立ち上がれると思っていたのに、実際には足に力が入らなかった」という状況を招き、転倒につながります。
▼参考:認知症診療ガイドライン2017第2章症候、評価尺度、診断、検査|日本神経学会
判断力や注意力が低下によるつまずき
認知症により判断力や注意力が低下すると、足元への注意が向かなくなります。
床に置いてある荷物や小さな段差、電気コードなどに気づかずにつまずいたり、トイレのスリッパを履こうとしてバランスを崩したりすることも珍しくありません。
また「このくらいの段差なら大丈夫」という判断自体ができなくなり、危険な行動をとってしまうこともあります。
ご本人に「気をつけて」と声をかけても、記憶障害により数分後には忘れてしまうため、くり返し転倒するのです。
暗い照明、ベッドからトイレが遠いなど環境の問題
夜間の廊下が暗い、ベッドからトイレまでの距離が遠い、居室内に家具が多く動線が狭いなど、転倒しやすい環境もリスクを高めます。
とくに夜間にトイレへ向かう際、暗いなかで目が慣れないまま歩き出して転倒するケースがあり、認知症特有の焦りや妄想などの症状が加わると、さらに危険性は増します。
▼関連記事:ヒヤリハットが介護現場で起こる3つの理由|多い事例や対策を解説
2.認知症の方が転倒しやすい場所
3.すぐできる認知症の転倒転落予防策5つ
大掛かりな設備投資をしなくても、環境の見直しやケアの工夫で転倒リスクは減らせます。それぞれの対策を組み合わせ、実践的な転倒予防につなげましょう。
1.ベッドの高さを下げ、衝撃吸収マットを敷く
基本的ですぐにできる対策は、転倒しても大きなケガにつながらない環境をつくることです。
たとえば、就寝時のみベッドの高さを最低位まで下げておくと、万が一転落しても衝撃を小さくできます。
ベッド周辺に衝撃吸収マット(クッションフロア)を敷くことでも、骨折といった重大事故を防ぎやすくなるかもしれません。
ベッド柵で転落予防を講じる場合は、ご本人が乗り越えようとするリスクもあるため、状態に応じて使用の有無を検討するとよいでしょう。
2.居室内の動線を見直し、つまずきやすいものを撤去する
転倒の原因となる障害物を減らすことも基本的な対策のひとつです。
床に置いてある荷物や雑誌、電気コード、小さな段差、滑りやすいマットなどを片付け、ベッドからトイレまでの動線をできるだけシンプルにします。
また、夜間に備えて足元が見える程度の常夜灯をつけておくと、転倒リスクを減らせます。
スリッパは脱げやすく転倒の原因になるため、滑り止めのついた室内履きに変更することも検討してください。
3.トイレの場所を分かりやすく表示し、定期的な声がけをおこなう
認知症の方は、トイレの場所を忘れてしまい、迷って歩いている最中に転倒してしまうことがあります。
こうしたときは、居室内のトイレのドアに大きく「トイレ」と書いた表示を貼る、トイレまでの動線に目印をつけるなど、視覚的にわかりやすくする工夫が有効です。
排泄パターンを把握し「そろそろトイレはいかがですか?」と定期的な声がけも、焦って一人で動き出すのを防げます。
トイレはデリケートな内容でもあるため、無理強いせず、さりげなく誘導することがポイントです。
4.転倒リスクの高いご利用者を把握し、情報共有を徹底する
転倒予防では、リスクの高い方を正確に把握することが欠かせません。
人手不足の現場では、すべての方を同じように見守るのは現実的ではなく、優先度をつけた見守りが重要となります。
そのためには、転倒リスクアセスメントツールを活用し、定期的に評価を見直すことがポイントです。
過去の転倒歴や歩行時のふらつき、夜間の一人歩きの有無など、リスクにつながる情報はかならず記録に残し、申し送りやケア記録で全スタッフが共有しましょう。
また、服薬内容の変更や新しく処方があった場合は、副作用によるふらつきに注意が必要です。スタッフが連携し、観察ポイントをそろえて見守れる体制を整えてください。
▼関連記事:介護アセスメントとは?基本的な進め方と質を高める方法4つを解説
5.見守りカメラやセンサーマットで早期発見の仕組みをつくる
夜勤帯をはじめとしたスタッフの目が届きにくい時間帯には、テクノロジーの力を借りることも選択肢のひとつです。
たとえばセンサーマットは、ベッドから降りるとナースコールで知らせてくれるため、転倒する前に駆けつけられます。ただし、音に驚いて転倒するケースもあるため、設置場所には注意が必要です。
その点、見守りカメラなら訪室しなくてもご本人の様子を確認でき、起き上がりの兆候を早期に察知できます。
プライバシーに配慮した機種も増えており、ご家族への説明をしっかりおこなえば、導入のハードルも下げられるでしょう。
「機械に頼るのは気が引ける」と感じるスタッフもいるかもしれませんが、見守りの補助として活用することで、スタッフの精神的負担を軽減し、より適切なタイミングでケアを提供できるようになります。
4.認知症の方の転倒予防に役立つ見守りツール
人手不足のなかで転倒予防を徹底するには、見守りツールの活用が現実的な選択肢といえます。
介護現場で活用されているおもなツールには、つぎのようなものがあります。
● センサーマット
● 離床センサー付きベッド
● 人感センサー
● 見守りカメラシステム
なかでも見守りカメラシステムは、センサーマットよりも早い段階で危険を察知できる点が特徴です。
訪室しなくても像で状況確認ができるため、すぐに駆けつけるべきか、様子を見るべきかが判断しやすく、訪室の優先順位をつけられます。
また、映像を振り返ることで「どのような動作で転倒したのか」を客観的に確認でき、より効果的な予防策を立てられます。
▼関連記事:介護現場のICT導入のメリット3つ!導入事例や効率的な進め方を解説
5.認知症の方の転倒は見守り強化で予防できる
認知症の方の転倒転落は、スタッフの努力だけでは防ぎきれない部分もあります。
大切なのは「転倒をゼロにする」と完璧を目指すのではなく、「重大事故を防ぐ」「早期に対応できる仕組みをつくる」といった現実的な目標を設定することです。
環境の見直し、情報共有の徹底、そして見守りカメラやセンサーなどの技術も活用しながら、無理なく続けられる予防策を取り入れていきましょう。
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