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お役立ち 2024.02.14

介護のリスクマネジメントとは?実践方法を4ステップで解説

介護の現場では、すべての事故やヒヤリハットを防ぐことは難しいのが現状です。
ただし、事故やヒヤリハットはご利用者の命にかかわる重要な問題であり、その後のQOLにも大きく影響する恐れがあります。

 

そこで重要になるのが「リスクマネジメント」です。

 

ここでは、介護施設におけるリスクマネジメントについて詳しく解説します。
4ステップでリスクマネジメントを実践し、ご利用者とスタッフともに安心できる施設環境を実現しましょう。

▼目次

1.介護のリスクマネジメントとは?

まずは、介護のリスクマネジメントについて解説します。

リスクマネジメントとは「事故を未然に防止したり、起こった事故に迅速に対応したり、損害を最小限にすること」です。※1

 

介護の施設においてリスクマネジメントを実施する目的は、主に以下の3つです。

 

● ご利用者の安全を確保する
● 介護サービスの質を高める
● スタッフを守る

 

介護施設における事故は転倒が多く、事故全体の50%を占めます。次いで、誤嚥が9.3%、転落9.3%と続きます。※2

 

実際にあった事例や想定される事例の原因を分析し、対策を周知することで事故を未然に防ぐことが重要です。事故の発生は、ご利用者を危険にさらすだけではなく、スタッフの心身の負担につながりかねません。事故が発生した状況によっては、訴訟問題になるでしょう。

 

ただし、現在の介護の現場において、リスクマネジャーがいない施設が全体の27.6%を占める現状です。※3 リスクマネジャーがいない施設では、事故の予防や発生した事故の分析ができない恐れがあります。

 

介護施設の状況に合わせてリスクマネジメントをおこない、可能な限り事故を防ぐ取り組みが大切です。

 

※1 参考:久留米市役所「介護サービスとリスクマネジメント」

 

※2 参考:公益財団法人 介護労働安定センター「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書

 

※3 参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」

2.【事例あり】介護現場で起こりやすい事故やヒヤリハット

まず、介護現場で起こりやすい事故やヒヤリハットを解説します。実際の事例を用いて紹介するので、日々の実践で活用してください。

浴室での転倒

<事例>入浴するために、ご利用者が脱衣所で服を脱ぎ浴室に移動。スタッフは入浴介助の準備をするために「気をつけて歩いてくださいね」と声をかけ、脱衣所に残り準備していました。すると、ガタンっと音が聞こえたため、浴室を見るとご利用者が転倒していました。手すりがないところでした。すぐにほかのスタッフを呼び対応しました。

 

入浴の介助は、介護スタッフの欠かせない重要なケアです。ただし、浴室での転倒は起こりやすい事故のひとつです。

 

実際に、事例のように注意していても転倒するリスクが高いです。

 

というのも、ご利用者は高齢者ばかりであり、体力が低下していたり、バランス感覚が衰えていたりしているためです。さらに、浴室は床が湿った状態であり、非常に滑りやすくなっています。

 

転倒すると、骨折したり、出血したりする可能性があるため注意しなければなりません。

 

関連記事:▼高齢者で転倒しやすい人の特徴とは?繰り返す原因や転倒予防の対策を解説

ベッドからの転落

<事例>認知症の方が介護施設に入所中。夜間「おーい」と声が聞こえるため訪室するとベッドから転落しているところを発見しました。ご利用者に状況を確認すると「トイレに行こうと思った」と。すぐにほかのスタッフを呼び対応しました。

 

転落の危険性があり「移動するときはナースコールを押してください」と説明しても、認知症の方は、忘れてしまい一人で移動しようとするケースは少なくありません。

 

ベッドから転落すると、骨折や脳出血などを起こし寝たきりとなる可能性があります。

食事中の誤嚥や窒息

<事例>脳梗塞の既往がある方が介護施設に入所中。嚥下機能が低下しており、ミキサー食を食べていました。誤嚥の危険性が高いため、食事中はスタッフが見守っていました。しかし、食事の途中でせき込んでしまいました。その日のうちに発熱したため、病院を受診したところ「誤嚥性肺炎」と診断され、入院して治療することになりました。

 

誤嚥性肺炎は、高齢者、特に脳梗塞の既往がある方によく見られる疾患のひとつです。窒息に至るケースも少なくありません。咳反射が弱くなったり、口腔内の細菌が多くなっていたりすることが要因と考えられます。※4

 

誤嚥したからといって必ず誤嚥性肺炎を起こすとは限りません。ただし、誤嚥性肺炎を起こすと入院加療が必要となり、入院中に体力が低下して生活の質が下がる可能性があります。※5

 

※4 参考:一般社団法人 日本呼吸器学会「誤嚥性肺炎」

※5 参考:福岡県保健医療介護部介護保険課「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」

誤薬

<事例>高血圧の既往があり降圧剤を服薬している方が入所中。昼ごはんのあとで薬を渡そうとしたところ、別のご利用者の薬を渡してしまいました。スタッフの確認漏れが原因でした。医師に報告したところ、ご利用者の状態には大きな変化はなかったため、経過観察で対応することになりました。

 

介護施設では、服用を必要とする方が多く入所しています。

 

服薬のタイミングが重なり、誤薬が発生することがあります。薬によっては、血圧が下がりすぎたり、血糖値が下がりすぎたりする可能性があります。

ご利用者の所有物の紛失や破損

<事例>介護施設に入所中の方に清拭ケアを実施中に、ベッドサイドに置いてあったスマホを落として破損してしまった。介護施設で弁償することになった。

 

ご利用者のケアをしているときや搬送しているときに、所有物を破損する可能性があります。入所中の方だけではなく、デイサービスを利用している方や居宅でのサービスを受けている方も起こりやすいです。

 

また、介護施設に入所している方の中には、利用者自身で所有物を管理できず、施設が預かる場合も。預かり物の管理が不十分であれば、ご利用者とトラブルに発展する可能性があります。

3.介護のリスクマネジメントの実践方法を4ステップで解説

次に、介護のリスクマネジメントの実践方法を4ステップで解説します。

● 起こり得る介護事故の事例を把握する
● 事例を分析する
● 具体的な対処方法を検討する
● スタッフ内で共有し周知する

 

リスクマネジメントを実践し、ご利用者の安全を守り、スタッフが働きやすい環境を実現しましょう。

ステップ1.起こり得る介護事故の事例を把握する

まずは、起こり得る介護事故の事例を把握することが大切です。

というのも、どのような事例が起こり得るのか把握できなければ、対処法を検討できないためです。

 

自施設での過去の事故やヒヤリハットだけではなく、他施設の事例や報告書なども収集します。この際「ハインリッヒの法則」の考え方を知っておきましょう。※6

 

ハインリッヒの法則とは「330件の事故のうち1件の重大な事故の背景には、29件の軽傷、障害のない事故を300件起こしている」とする考え方です。

 

介護施設でも同様のことがいえ、1件の重大な事故の裏には300件のヒヤリハットが隠れているといえます。そのため、数多くの事例を集めることが重要です。

 

さらに、実際に起きた事故ではなくても、起こりそうな事故をスタッフで検討してもいいでしょう。

 

※6 参考:厚生労働省「安全衛生キーワード」

ステップ2.事例を分析する

次に、1で集めた事例を分析します。実際に、分析する方法は以下のとおりです。※7

 
● 4M4E分析
● インシデントレポートKYT
● SHEL/P-mSHELLモデル
 

分析方法を活用して「なぜ事故が発生したのか」を考えていくことが重要です。事例が起きたケースを時系列で書き出し、要因を洗い出してもいいでしょう。

 

介護施設で普段から使っている分析方法で事例を細かく分析してください。

 

※7 参考:神奈川県医療安全推進ネットワーク交流会 事例分析分科会「インシデント・アクシデント分析の実際」

ステップ3.具体的な対処方法を検討する

そして、2で洗い出された要因一つひとつの対処方法を検討しましょう。例えば、誤薬の事例で考えると以下のように考えられます。

 
● 薬を準備する段階で間違いはなかったのか
● ご利用者に薬を渡すとき氏名を確認したのか
● 薬を渡すときに業務が重なっていなかったのか
 

ほんの一例ですが、要因が挙げられます。要因に対して、一つひとつ解決策を検討します。

 
●    薬袋と処方せんを確認する
●    服用してもらう前に必ず名前と薬など「5つのR」でチェックする※8
●    業務が中断した際には、はじめからチェックしなおす
 

解決策をスタッフ全員で話し合い、同じ事故が起こらないようにすることが大切です。※9 介護施設の管理者とスタッフの連携も重要です。管理者は、スタッフの声に耳を傾け、スタッフと一緒に対処方法を考えていくことが求められるでしょう。

 

※8 参考:厚生労働省「安全な医療を提供するための10の要点」

※9 参考:福岡県保健医療介護部介護保険課「介護事故防止対応マニュアル作成の手引」

ステップ4.スタッフ内で共有し周知する

話し合ってもスタッフ内で共有し周知できなければ、解決策が活かせません。次の事故とヒヤリハットを防ぐためには、解決策を徹底することが重要です。

 

話し合った内容を議事録としてまとめ、スタッフが実際に行動できるようにしましょう。

 

また、介護施設の「事故防止マニュアル」の周知も進めていくことが大切です。

4.介護現場で事故・ヒヤリハットが起こった際の対処法

ここでは、実際に事故やヒヤリハットが起こった際にスタッフが取るべき4つの行動を解説します。

状況に応じた対処法を実施

介護施設において、事故やヒヤリハットが起こった際の迅速な対応が重要です。

 

というのも、事故によっては、ご利用者が重篤な状態となる可能性があるためです。例えば、ベッドから転落して頭を打った場合は脳出血をきたし、浴室で転倒した場合は骨折するかもしれません。

 

一概に「この方法が良い」という方法はありません。病院に搬送したり、経過観察をしたりなど状況に合わせて対処しましょう。

家族への報告

事故が発生した際には、ご利用者の家族には連絡しましょう。
その際、なぜ事故が発生したのか、今後どのように対処するのかなどをまとめておくとスムーズに報告できます。

 

報告が遅くなった場合、家族は介護施設やスタッフに対して不信感を抱くかもしれません。訴訟問題に発展すると、スタッフは心身ともに疲れてしまいます。

 

そのため、事故が発生したら可能な限り早い段階で家族に報告してください。

事故やヒヤリハットの原因調査

介護施設で事故やヒヤリハットの発生をなくすことは難しいです。
ただし、件数を減らす、重大な事故のレベルを軽くできるかもしれません。軽減するためには、発生した事故やヒヤリハットの原因を調査することが不可欠です。

 

同じ事故を起こさないためにも必ず原因を調査しましょう。

ご利用者や関係各所に報告

介護施設において以下の事故に当てはまる場合は、ご利用者の家族だけではなく市町村にも速やかに報告しなければなりません。

 

● 死亡に至った事故
● 医師の診断を受け投薬や処置などが必要となった事故

 

事故が発生してから遅くとも5日以内に報告します。※10

 

※10 参考:厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」

5.システムを導入し、事故を可能な限り減らそう

介護の現場では事故やヒヤリハットをすべて防ぐことは難しいです。

 

ただし、システムの導入により事故を未然に防いだり、事故が起きた際に迅速に対応できたりする可能性があります。

 

そこで、ケアコムのシステム導入がおすすめです。離床センサーや見守りカメラシステム、トイレ離座検知システムを導入すると、ご利用者が安全に生活でき、スタッフが働きやすい職場環境を実現できるでしょう。

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