Contentsお役立ち情報・製品動画
高齢者で転倒しやすい人の特徴とは?繰り返す原因や転倒予防の対策を解説
高齢者の転倒の原因は、加齢による身体能力の低下や、認知症による判断能力の低下などさまざまです。高齢者が転倒してしまうと、骨折や脳出血など重大な外傷につながることがあります。
介護・看護職員は、これらの原因や危険性を理解して、転倒予防の対策を実施することが重要です。本記事では、高齢者が転倒を繰り返す原因や特徴、転倒による危険性、取るべき対策、転倒後の対応方法を解説します。
▼目次
1.高齢者で転倒を繰り返す人の原因や特徴について
高齢者で転倒を繰り返す人の原因には、内的要因(身体的要因)と外的要因(環境要因)があります。まずは、転倒の原因となる要因について解説します。
内的要因
内的要因は、加齢による身体機能の変化や疾患による身体症状などに分けられます。
【加齢変化】
● 筋力の低下
● 姿勢の変化
● 運動速度の低下
● バランス感覚の低下
● 聴覚・視覚の低下
● 運動速度の低下
● 姿勢反射の低下
【身体症状】
● 認知症(注意力・認知力・判断力低下)
● パーキンソン病(手のふるえや筋肉のこわばり)
● 起立性低血圧(立ちくらみやめまい)
● 不整脈(めまいや意識障害)
● 変形性関節症(可動域・バランス感覚の低下)
ほかにも睡眠薬や抗不安薬などにより、ふらつきが発生して転倒する場合があります。
外的要因
外的要因は身体以外の転倒原因です。一例をあげると次の通りです。
● 足に合っていない履物
● 滑りやすい床や地面
● 足元が見づらい暗い場所
● 階段や段差
● 手すりの無い生活スペース
● 通路にある電気コードや車椅子など障害物
● 病院や施設など不慣れな生活環境
転倒の原因は高齢者それぞれに異なります。その人の特徴を捉えて転倒対策を実施していくことが重要です。
2.高齢者にとっての転倒の危険性
3.高齢者の転倒予防の対策
高齢の患者さん・ご利用者が生活するなかで転倒が発生しやすい場所は、自室内・ベッド周りやトイレ、浴室、廊下・階段、デイルームなどが挙げられます。ここからは、高齢者の転倒予防の対策と、予防トレーニングやパンフレット指導について解説します。
自室内・ベッド周り
患者さん・ご利用者が多くの時間を過ごす自室内・ベッド周りは、転倒が多い場所です。とくに起床時のふらつきや夜間排尿がみられる患者さん・ご利用者は、転倒リスクがあります。自室内・ベッド周りの転倒対策の一例は次の通りです。
● ベッドは壁際に設置する
● 患者さん・ご利用者に合った履物を用意する
● フットライトを設置する
● 床に電気コードなどの障害物を置かないようにする
● ポータブルトイレを設置する
● ベッドの高さを調整する
トイレ
自室内と同様にトイレ周りも転倒事故は多いです。トイレまでの歩行や下衣の脱衣などの排泄動作に転倒リスクがあります。歩行や排泄動作が不安定な場合は、ADLに合わせた介助を実施します。
注意すべきは頻尿である患者さん・ご利用者です。夜間に急いでトイレに行こうとしたり、完全に覚醒していない状態で歩行したりすることで転倒が生じます。日中は一般トイレを利用できるADLの方でも、転倒が発生する可能性があります。
排尿回数や覚醒状況、日々のADLを考慮して、夜間のみポータブルトイレを利用する、夜間離床センサーをONにするなどの対策を検討しましょう。
浴室
浴室は滑りやすい床を歩いたり、浴槽をまたぐ動作が必要になったりするため、転倒が多い場所です。衣服を着ていない状態で転倒すると身体の損傷が大きくなるため、特に注意が必要です。
浴室での転倒対策や注意すべき点は次が挙げられます。
● シャワーチェアや滑り止めマットを用意する
● 入浴前に排泄をすませてもらう
● 脱衣所の床が濡れていないことを確認する
● 段差に注意しながら浴室内に移動する
● 立ち上がりの際は身体や足元、手すりについた石鹸を十分に流す
● 浴槽をまたぐ際は転倒に注意する
廊下・階段
階段の上り下りは、高齢者にとって負担が大きく転倒した際の危険性も高いです。ADLが自立していない患者さん・ご利用者の場合は、必ず介助を実施します。階段での転倒対策の一例は次の通りです。
● 上るとき:職員は斜め後ろに立ち、脇や腰を支えるように介助する。患者さん・ご利用者が階段に足全体を乗せているかを注意する
● 下りるとき:職員は斜め前に立ち、脇や腰を支えるように介助する。患者さん・ご利用者が階段を踏みはずないように注意する
廊下の転倒対策は、車椅子などの障害物の有無を確認して、移動に必要な動線を確保することです。また、定期的に床が濡れていないかの確認も必要でしょう。
デイルーム
デイルームでは、患者さん・ご利用者のADLや抱えている疾患・症状を把握して、見守りを実施することが転倒対策になります。職員全体で「誰の」「どの動作に危険があるのか」を共有して、転倒を防ぎます。
とくに患者さん・ご利用者の急な立ち上がりに注意が必要です。移動の動線を妨げている障害物がないかも確認しましょう。
予防トレーニングやパンフレット指導
長期的に転倒を予防していくには、日々の予防トレーニングや転倒に関する指導などが大切です。予防トレーニングは多数あり、座位・立位・臥床など患者さん・ご利用者のADLに応じたトレーニングを選択します。
パンフレットは、自宅に退院・退所された場合に継続して実施できる予防トレーニングや、身の回りの転倒リスクなどについて記載しましょう。
4.高齢者の転倒後の対応方法
ここからは、転倒後の起こし方と観察項目について解説します。施設と病院それぞれの基本的な対応方法も解説します。
起こし方
転倒後の起こし方は、患者さん・ご利用者のADLによって異なります。ここでは、職員の指示をある程度理解でき、四つん這いの姿勢を取れる人に対する起こし方を解説します。
1.付近に手すりのある椅子をもってくる
2.身体を起こして横座りの状態にする
3.手と膝をついて四つん這いになってもらう
4.椅子の近くまで移動してもらう(職員は骨盤を保持する)
5.椅子の手すりにつかまってもらい片足を前に出す(職員は前に出す片足の反対方向に重心をかける)
6.ゆっくりと状態を起こしていく(骨盤を保持しながら立ち上がりを補助する)
7.立位を取る(まっすぐに立位が取れるまで支える)
観察項目
転倒後は重篤な症状が発生していないかを確認するために、患者さん・ご利用者を観察する必要があります。転倒後の観察項目は次の通りです。
● 意識障害やけいれんの有無
● 頭痛・嘔気・嘔吐・頭部外傷の有無
● 全身の外傷の有無
● しびれ・しゃべりにくい・ふらつきなどの神経症状の有無
● 疼痛・腫脹・熱感の有無
● 抗凝固剤使用の有無
施設での対応
転倒後の対応は施設によって異なります。施設の一般的な転倒後の対応は次の通りです。
一般的な処置で対応可能な場合 | 応急処置
↓ ベッドなどに移動 ↓ 医師の診察 ↓ 施設内で経過観察・治療 ↓ 事故報告書の作成・必要に応じて市町村や医療機関、保険会社へ連絡 |
重症が疑われる場合
(意識不明・出血多量・強い疼痛・嘔吐など) |
他の職員・医師・看護師などへ報告・相談
↓ 医師の診察・医療機関受診・ご家族へ連絡・保険利用の検討 ↓ ご家族へ総合的説明と今後の方針決定 ↓ 入院・治療 ↓ 事故報告書の作成・必要に応じて市町村や医療機関、保険会社へ連絡 |
病院での対応
病院でも転倒後の対応はそれぞれ異なります。一般的な転倒後の対応は次の通りです。
頭部受傷 | 意識レベルの確認・バイタルサインチェック・全身状態の観察(直後・1時間後・3時間後・6時間後)
↓ 医師に報告・診察の依頼 ↓ 必要時CT撮影・レントゲン撮影・縫合処置 ↓ 医師の指示への対応・家族へ連絡 ↓ 看護記録・転倒報告書の作成 |
頭部以外の受傷 | バイタルサインチェック・症状観察(直後・3時間後)
↓ 医師に報告・診察の依頼 ↓ 必要時CT撮影・レントゲン撮影・縫合処置 ↓ 医師の指示への対応・家族へ連絡 ↓ 看護記録・転倒報告書の作成 |
落ち着いて患者さん・ご利用者の状況を観察して対応することが大切です。
転倒転落における看護計画の立て方をこちらで解説しておりますので、あわせてご覧ください。
▼転倒転落リスクの看護計画|短期・長期目標や個別性を考慮した立案方法を解説
5.高齢者の転倒予防は日頃の対策が大切
高齢者の転倒原因は、認知症や筋力低下など、人それぞれです。患者さん・ご利用者それぞれの転倒リスクを把握して、日々対策・対応を行っていくことが重要です。
高齢者が転倒してしまうと、外傷前のADLに戻れないことがあります。転倒を防ぎ、患者さん・ご利用者が安全・安楽に療養生活や施設生活を送れるように、職員全体で対策を実施しましょう。
ケアコムの見守りセンサーであれば、予め危険動作を察知できるので、質の高い転倒予防対策が実施できます。詳細を知りたい方は、ぜひこちらから確認してください。
▼ケアコムの見守りカメラシステムについてはこちら