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お役立ち 2024.05.10
看護師のクリニカルラダーとは?レベル別の目標や評価について解説
看護師のクリニカルラダーとは「看護師の専門性の向上とキャリアアップを促し、質の高いケアを実現するためのプログラムのこと」です。クリニカルラダーで目標を設定し評価することで、看護師は幅広い知識と経験を積み重ねられます。
本記事では看護師のクリニカルラダーとは何か、構成される項目や実際の教育に活かす方法を解説します。クリニカルラダーの目標や評価の方法について悩む看護師の悩みを解決できるきっかけになれると幸いです。
▼目次
1.クリニカルラダーとは看護師の実践能力を向上させるための評価指標
クリニカルラダーとは「看護師それぞれの実践能力を向上させるために用いる評価指標」のことです。看護師が自身の目標や課題を評価し、スキルアップできるように用いられます。
つまり、クリニカルラダーとは看護師の育成につなげるためのシステムといえます。
ここでは、クリニカルラダーの目的やキャリアラダーとの違いを詳しく紹介します。
クリニカルラダーの目的
クリニカルラダーの目的は次の3つです。
• 看護実践能力の適切な評価による看護ケアの質の保証
• 患者さんへの安全で安心な看護ケアの提供
▼参考:日本看護師協会版「病院管理者のマネジメントラダー」
看護師はさまざまな経歴や経験を持っています。
ただし、患者さんへのケアは看護師それぞれが異なる方法で実施していると、統一したケアができません。結果として、ケアの効果があらわれにくくなり患者さんが看護師に不信感を抱いたり、不満を感じたりする場合があります。
さらに、指導者によって異なる方法で指導されると、新人の看護師や経験が浅い看護師は混乱する可能性があります。実際に、先輩の看護師によって異なる指導を受け悩む看護師は少なくありません。
そのため、看護師の経験や経歴が異なっているケースでも、患者さんへ統一したケアをおこなうことが大切です。
クリニカルラダーに沿って指導を進めると、目標が明確となり適切な評価ができるため安全で安心な看護ケアを提供できるでしょう。
クリニカルラダーとキャリアラダーの違い
クリニカルラダーとキャリアラダーは、どちらも看護師の成長やキャリアを形成するために用いる評価指標です。ただし、それぞれ目的が違います。以下の表を参考にしてください。
目的 | ポイント | |
---|---|---|
クリニカルラダー | 看護師の臨床経験や能力向上 | 看護技術や知識の向上 |
キャリアラダー | 看護師全体のキャリアの多様性を支援 | 看護師という仕事の拡大や多様化 |
先述したように、クリニカルラダーは看護師の知識や経験の向上のためのシステムです。一方で、キャリアラダーは看護師のキャリア開発の評価に用いられます。(病院や施設によっては、同じ意味で使われることもあります。)
2.クリニカルラダーの4つの構成と5つのレベル
クリニカルラダーを構成しているのは次の4つです。
• 専門的・倫理的・法的な実践能力
• マネジメント能力
• 臨床実践能力
• 専門性の開発能力
それぞれ5つのレベルに分けられています。
専門的・倫理的・法的な実践能力
専門的・倫理的・法的な実践能力とは「自分の判断に行動と責任を持ち、倫理的・法的規範に従い看護実践をする能力」のことです。
具体的には、以下のように3つに分けられます。
専門的・倫理的・法的な実践能力 | 構成要素の定義 |
---|---|
責務に基づく実践 | 看護師としての責任感と職業倫理に基づいて自分の判断や行為、おこなったことの結果に責任を負う。自身の役割や能力に合った看護実践をおこなう。 |
倫理的実践 | 看護師としての倫理的に意思決定し行動する。患者さんの生命やプライバシーを尊重し、看護実践をおこなう。 |
法的実践 | 看護師として法令やガイドラインに基づき看護実践をおこなう。 |
▼参考:日本看護協会「看護実践能力」
それぞれの実践能力に基づく定義を知っておくことで、クリニカルラダーが活用しやすくなるでしょう。
マネジメント能力
マネジメント能力とは「病院や施設で働くスタッフの一員として看護・医療の提供を効率的・効果的におこなうために、患者さんの状況や看護師内の立ち位置に合わせリーダーシップを発揮し組織をマネジメントする能力」のことです。
具体的には以下の3つで構成されます。
マネジメント能力 | 構成要素の定義 |
---|---|
業務の委譲/移譲と管理監督 | 看護スタッフ(看護師・准看護師・看護補助者)における業務の振り分けとほかの職種との連携を適切におこなう。 |
安全な環境の整備 | 安全な看護・医療ができる環境を実現できるように努める。リスクの評価や適切なマネジメント方法の検討をおこなうことで医療安全や感染予防、災害対応などに対応する。 |
組織の一員としての役割発揮 | 組織の一員として、業務の優先度を考え時間管理する。業務改善やチームワーク向上のために行動する。 |
▼参考:日本看護協会「看護実践能力」
臨床実践能力
臨床実践能力とは「患者さんの状況に応じた適切な看護を実践する能力」のことです。具体的には、以下の4つで構成されています。
臨床実践能力 | 構成要素の定義 |
---|---|
ニーズをとらえる | 情報収集をおこないアセスメントし共有する。 |
ケアする力 | 患者さんの状況に合わせて看護計画を立案・実施・評価する。 |
意思決定を支える力 | 患者さんと看護師の信頼関係のもと、患者さんらしく生きるための意思決定を支える。 |
協働する力 | ほかの職種が知識や技術を活かしながら、看護を実践する。 |
▼参考:日本看護協会「看護実践能力」
専門性の開発能力
専門性の開発能力は「看護師として資質や能力を向上させ、適切かつ質の高い看護実践をおこなう。看護の価値を人々や社会に提供し貢献できる能力」をいいます。
具体的には以下の4つで構成されています。
臨床実践能力 | 構成要素の定義 |
---|---|
看護の専門性の強化と社会貢献 | 看護師として専門性を高めるために、知識や技術の取得を目指す。支援が必要な方に手を差し伸べ社会に貢献する。 |
看護実践の質の改善 | 看護の成果を可視化し分析する。自身や組織の看護実践の良いところや反省点がわかり、看護の質を改善する。 |
生涯学習 | 自己研鑽をおこなう。スキルアップ、キャリアアップを目指す。 |
自身のウェルビーイングの向上 | 看護師の身体・精神・社会的な健康を向上する。ウェルビーイングの向上によって、適切で質の高い看護を実践できる。/td> |
▼参考:日本看護協会「看護実践能力」
クリニカルラダーの5段階のレベル
クリニカルラダーの5段階のレベルは次の通りです。
● レベル1:一般的な看護計画に基づいて自立して看護を実践する
● レベル2:患者さんの個別的な看護を実践する
● レベル3:幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する
● レベル4:複雑な状況で患者さんにとって最も良いと考えられる方法を選び患者さんのQOLを高めるための看護を実践する
▼参考:日本看護協会「看護実践能力」
クリニカルラダーの段階ごとに、明確な目標や実施すべき項目が明らかとなっています。
指導者や指導を受ける看護師も進み具合が分かるため、看護師の状況に合った指導ができるでしょう。
3.【看護】クリニカルラダーの評価と実施方法
クリニカルラダーは、パトリシア・ベナーが提唱した看護理論を用いて評価します。評価はS~Dまでの5段階であり、実施方法は主に4つの項目で進めます。
クリニカルラダーの評価方法
クリニカルラダーの4つの構成をそれぞれ以下の5段階で評価します。
S:非常によい
A:よい
B:ふつう
C:努力が必要
D:非常に努力が必要
指導者からの評価だけでなく、自己評価もおこないます。
指導者と指導を受ける看護師、それぞれが臨床看護を客観的に評価できるため、お互いの認識や評価のズレに気づけます。
また、評価したことが課題や今後の目標を見つめ直すきっかけになり、更なるキャリアアップを目指せるでしょう。
クリニカルラダーの実施方法
クリニカルラダーの実施方法は、主に4つの項目で進めます。
• 目標とレベルの明確化
• 必要なスキルや知識
• 実践能力の習得
• 評価・フィードバック
それぞれのレベルで当てはまる目標や実施すべき項目を把握したうえで日々の看護ケアに活かします。
定期的に評価して振り返りをおこない目標管理や達成状況を可視化できると、ステップアップにつながりやすくなるでしょう。
4.クリニカルラダーのメリット
クリニカルラダーのメリットは、指導する看護師と指導を受ける看護師、双方にメリットがあります。
• 明確な目標ができる
• 必要なスキルや知識を指導できる
• 定期的に評価・振り返りができる
それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
明確な目標ができる
目指すべき目標が明らかでないと、スキルアップやキャリアアップが難しいことがありますが、クリニカルラダーはレベルごとに目標の看護実践能力があるため、はっきりとした目標を掲げて実践できます。
また、明確な目標がない場合、指導する看護師は「どの程度教えればいいのか」「どこまで理解しているのか」「ほかの指導者からはどのように教えてもらったのか」などがわからないため、指導する看護師によって異なる指導を受けるかもしれません。
それぞれの看護師のレベルにあった目標で看護ケアを実践していくことがスキルアップ、キャリアアップにつながるといえます。
必要なスキルや知識を指導できる
クリニカルラダーは、指導者が必要なスキルや知識を指導できるメリットがあります。
指導者は指導する方法が統一されていなければ、教えることがバラバラになります。
そのため、指導を受ける看護師は正しい方法で指導されず、スキルアップにつながらない可能性があります。
定期的に評価・振り返りができる
クリニカルラダーに沿って看護ケアをすることで、定期的に振り返れます。
「ケアをした場面がどのような状況だったのか」「自分はどのようなケアをしたのか」などを振り返り、良かったことや課題を明らかにしたうえで次の看護ケアに活かせます。
また、定期的な振り返りができ指導者と指導を受ける看護師が同じ方向に進めるため、さらなるスキルアップが期待できるでしょう。
5.看護師のクリニカルラダーはスキルアップや目標管理に重要
クリニカルラダーは、看護師のスキルアップを図り、質の高い看護ケアを実現するための段階的プログラムです。
現場で得た知識や実践したスキルを客観的に分析できるため、はっきりとした目標や課題を見つけやすくなります。クリニカルラダーで評価と改善を繰り返すと、看護師は専門スキルを磨け、質の高い看護ケアを実践できます。
看護師それぞれのスキルアップや目標管理につながる重要な役割を果たせるため、この記事を参考にクリニカルラダーをうまく活用しましょう。