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2026.03.19
看護師のインシデントで多い事例とは?続く理由と再発防止策を解説
与薬ミスや転倒・転落事故などのインシデントがくり返され、再発防止に頭を悩ませてる看護管理者の方もいらっしゃるでしょう。
インシデントが続く背景には、報告しづらい職場環境、多忙による確認作業の簡略化、改善体制の不備といった課題があります。
つまり、個人への注意喚起や教育を続けるだけではインシデントを減らす根本的な解決には至らず、環境整備やシステム化などの組織的な改善が必要です。
この記事では、看護現場で多いインシデント事例とその発生が続く理由、具体的な取り組みを解説します。
患者さんの安全確保とスタッフの業務負担軽減を両立させる仕組みを知り、自院で活用しましょう。
▼目次
- 1.看護師のインシデントとは?
- 2.看護師のインシデントで多い事例
- 与薬・点滴ミス
- 転倒・転落
- 医療機器の操作ミス
- 3.看護師のインシデントが続く理由
- 報告しづらい職場環境がある
- 疲労や多重タスクにより確認作業が不十分となりやすい
- 病院全体の改善体制が整っていない
- 4.看護師がインシデントを減らす5つの取り組み
- 1.看護師がインシデントを「隠さない・報告しやすい」職場環境の構築
- 2.5S・指差し呼称・ダブルチェックの徹底
- 3.多重タスクの回避と業務フローの見直し
- 4.インシデントレポートの正しい分析
- 5.ICTツール・医療DXの活用による業務負担軽減
- 5.看護師のインシデント対策にシステムを導入した事例
- 転倒・転落インシデントを削減した事例
- 患者間違いを防ぎ業務効率化を実現した事例
- 6.看護師のインシデント対策として環境整備とシステム化を進めよう
1.看護師のインシデントとは?
インシデントとは、医療現場で患者さんに重大な影響を与える可能性のあった出来事のことです。
医療現場では「ヒヤリハット」「アクシデント」という言葉も使われ、患者さんへの影響度によって以下のように区別されています。
| 現場で使用される用語 | 定義 |
|---|---|
| インシデント | 通常医療行為からのあらゆる逸脱のうち、患者に害を及ぼした、もしくは、害のリスクがあったもの |
| ヒヤリハット | 重大な災害や事故には至らないが、作業中にヒヤリとしたり、ハッとしたりした現象 |
| アクシデント | 医療事故に相当する |
▼参考:厚生労働省日本医療安全学会
病院によっては、インシデントとヒヤリハットを同義で使用しているところもあります。
ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットがあるとされています。
そのため、インシデントを正しく報告し組織的な対策を講じることが、重大事故を防ぐために重要です。
▼参考:ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)|職場のあんぜんサイト
またインシデントとヒヤリハットの違いについて改めておさらいしたい方は、下記ページで解説しております。
2.看護師のインシデントで多い事例
看護現場ではさまざまなインシデントが報告されています。
とくに発生頻度の高い事例は、以下のとおりです。
● 与薬・点滴ミス
● 転倒・転落
● 医療機器の操作ミス
詳しいインシデントの内容をみていきましょう。
与薬・点滴ミス
与薬・点滴ミスは看護現場で多く報告されるインシデントのひとつで、患者間違いや薬剤量の間違い、投与ルート間違いなどが含まれます。
たとえば、以下のようなケースです。
● 似た名前の患者さんに別の薬を渡してしまった
● 本来10ml/hの速度で投与すべきところを100ml/hと読み間違えて投与してしまった
● 内服薬の与薬を忘れてしまった
こうしたミスの背景には、確認不足や思い込み、多重タスクによる注意散漫など、さまざまな要因が重なっていると考えられています。
転倒・転落
高齢の患者さんやせん妄のある患者さんは、ベッドからの転倒・転落リスクが高い傾向にあります。
転倒・転落が起こる背景には、以下のようなさまざまな要因が関係しています。
● ベッド柵の設置不備
● 離床センサーの未使用
● 導入機器の不足
● ナースコール対応の遅れ
● 患者さんのADL(日常生活動作)やリスク評価の不十分さ
とくに夜勤中は少人数体制であることから見守り体制に限界があり、転倒・転落事故が発生しやすい状況です。
転倒・転落は患者さんの生命や今後のQOLに深刻な影響を与える可能性があるため、予防策の徹底が求められます。
医療機器の操作ミス
輸液ポンプや人工呼吸器などの医療機器の操作ミスも、看護師のインシデントとして多く報告されています。
たとえば、流量の設定を間違えたり、アラーム設定を忘れたりするケースです。
こうしたミスは、新しい機器への不慣れや教育不足、マニュアル確認の怠りなど、さまざまな要因が重なって起きると考えられます。
3.看護師のインシデントが続く理由
インシデントが続く背景には、組織的な課題が隠れている場合もあります。
ここでは、インシデントがくり返される要因として考えられる3つの背景を解説します。
報告しづらい職場環境がある
個人が責任追及される風土への恐れや、評価が下がる不安から、インシデントを「報告しづらい」と感じる看護師も少なくありません。
しかし、そもそも報告されないと対策案も検討できないため、同じミスがくり返される悪循環に陥りやすくなります。
疲労や多重タスクにより確認作業が不十分となりやすい
慢性的な人手不足や業務量の増加により、確認作業が十分におこなえなくなることも、インシデントが続く背景のひとつです。
たとえば、与薬関連のインシデントでは、5Rの確認が不十分であり誤ってインスリンを投与する事例も報告されています。
そこに疲労や多重タスクによる注意力の低下が重なると、類似した薬剤名や患者名による取り違えが起きやすくなります。
▼参考:報告事例詳細(新様式)
病院全体の改善体制が整っていない
インシデントが起きてもレポートの提出が目的となり、その後の具体的な分析や改善策の策定につながらないケースもあります。
手書きレポートでは集計や傾向分析に時間がかかり、組織全体での共有が不十分になりがちです。
その結果、PDCAが回らず、病棟単位の対応にとどまり、同様のインシデントがくり返されやすくなります。
4.看護師がインシデントを減らす5つの取り組み
インシデントを減らすには、個人の努力だけでなく組織全体での取り組みが必要です。
実際に効果が期待できる5つの具体的な対策を解説します。
1.看護師がインシデントを「隠さない・報告しやすい」職場環境の構築
インシデントを報告するときの心理的負担を軽減するため、報告者を責めない風土づくりが不可欠です。
管理者や師長が率先して面談や振り返りの仕組みを整えるというような、組織全体で支える体制を構築しましょう。
また、対策を講じたことで一時的に報告件数が増えても、単純に「事故の増加」と捉えるのではなく、組織の安全意識向上の証と受け止めることが大切です。
2.5S・指差し呼称・ダブルチェックの徹底
インシデントを防ぐには、以下のような基本的な取り組みを徹底しましょう。
| インシデント防止への取り組み | 目的 |
|---|---|
| 5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の実施 | 業務環境を整える(整理の例:不要なものを役割分担しながら捨てる) |
| 指さし呼称 | 確認行動を見える化し、確認漏れを防ぐ |
| ダブルチェック | 声に出す、異なる視点で確認するなど、形だけのチェックにさせない |
経験則に頼らず標準化することで「誰でも安全に業務ができる」仕組みをつくれます。
▼参考:第18回:「5Sの視点で事故防止」|医療安全推進者ネットワーク
3.多重タスクの回避と業務フローの見直し
インシデント予防には、業務の優先順位と役割分担を明確にし、与薬や薬剤準備など集中すべき作業が中断されない業務フローへ見直すことが重要です。
たとえば、ケアコムの見守りシステムを活用すれば、アラート対応の優先度がはっきりし、無駄な訪室が減って本来の業務に集中しやすくなります。
勤務シフトや人員配置を調整し、忙しい時間帯の負担を分散させることも多重タスクを回避するのに重要です。
4.インシデントレポートの正しい分析
インシデントレポート作成時は、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を明記し、感情的な表現を排除して事実のみを記載しましょう。
具体例として以下を参考にしてください。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| NGな表記 | ナースコール対応で忙しく、うっかり患者を取り違えた |
| OKな表記 | ナースステーションで薬剤Aを準備中、患者Bさんのナースコール対応で中断。その後、患者Cさん用の薬剤と取り違えた |
客観的な事実の記録が効果的な再発防止策の立案につながるため、事故防止研修でレポート作成講義を組み込むというように、スタッフ全体への周知も重要です。
5.ICTツール・医療DXの活用による業務負担軽減
手書きレポートでは集計や傾向分析に時間がかかり、十分な活用が難しいのが現状です。インシデント分析ツールを導入すれば、データの可視化や客観的な傾向把握が可能となり、再発防止策の検討に役立ちます。
一方で、導入コストや運用体制の整備は課題となりやすい点も押さえておかなければなりません。
多くの場合、分析が進まない背景には「業務に追われて時間が確保できない」という問題があります。そのため、まずは業務過多の原因を探ってから導入を検討するのがよいでしょう。
ケアコムでは、業務過多の要因を整理できる無料資料を提供しています。
まずは自院の課題を明らかにすることから始めてみましょう。
▼無料資料ダウンロード:看護部長・事務長必見! 看護業務の無駄を軽減し、働きやすい職場を実現する方法とは?
5.看護師のインシデント対策にシステムを導入した事例
組織的な取り組みとシステム導入により、実際にインシデント削減に成功した病院の事例を紹介します。
導入前の課題と導入後の効果を具体的にみていきましょう。
転倒・転落インシデントを削減した事例
ある病院では、トイレ離座検知システムとNICSS-EX8を導入し、転倒対策と業務効率化の両立を図りました。導入前後の変化は以下のとおりです。
| 導入前の課題 |
|---|
|
・トイレでの転倒が年間55件あった ・患者の離棟を防ぐのに見回りに人員を割く必要があった |
| 導入後の効果 |
|
・年間23件に減少 ・トイレの終了まで付き添う必要がなくなり、業務効率化につながった ・見回りすることなく患者の安全につながっている |
このように、トイレ離座検知システムの活用により、転倒リスクの低減と人員負担の軽減が同時に実現しています。
患者間違いを防ぎ業務効率化を実現した事例
患者誤認の防止と申し送り業務の効率化を目的に、NICSS-EX8と大型サブディスプレイを導入した病院もあります。
この事例では、同姓同名の患者さんが赤文字・下線で表示される仕組みを取り入れました。
| 導入前の課題 |
|---|
|
・同姓同名の患者名を一人ひとり読み上げていたため、申し送り時間が長時間化していた ・「センサー呼出があったら患者の様子を見に行って」と伝えても看護補助者の行動はあまり変わらずタスクシフトがうまくいっていなかった |
| 導入後の効果 |
|
・申し送り時間が短縮した ・呼出種別ごとの音の鳴り分けを活用し、自然な形でタスクシフトができた ・呼び出し回数も減少したように感じ、病棟全体が穏やかになった |
ICTの活用により、安全性の向上だけでなく、チーム全体の業務バランスや心理的負担の軽減にもつながった事例といえるでしょう。
6.看護師のインシデント対策として環境整備とシステム化を進めよう
看護師のインシデント対策には、個人の注意だけでなく、組織全体の環境整備と仕組み化が必要です。
5Sや指差し呼称などの基本対策に加え、システムの導入を組み合わせることで、経験則に頼らずに業務できる体制が整います。
まずは業務量や時間配分を可視化し、課題を明確にすることが、患者さんの安全性の向上と業務負担の軽減につながるでしょう。
ケアコムでは、看護現場の環境を整えるために役立つ資料を多数公開しています。
\参考資料として、ぜひご活用ください/


