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お役立ち 2024.05.08

看護師のワークライフバランスとは?3つの課題と実現に向けた具体例を紹介

「仕事と家庭との両立が大変だから時短勤務をしたい」
「毎日仕事が忙しくて疲れがとれない」
みなさんの病院では、看護師のワークライフバランスを整えられる体制が整っていますか?

 

不規則な勤務形態や時間外勤務の多さなどの理由から、働き方とプライベートの両立について悩んでいたり不安に感じたりする看護師もいるでしょう。

 

本記事では、看護師のワークライフバランスを整えるための施策のポイントを解説します。

▼目次

1.看護師にとってのワークライフバランスとは

看護師にとってのワークライフバランスとは、家庭と職場の両方で満足できるような生活を送ることです。
看護師のワークライフバランスは、以下の環境が整うことで実現できると日本看護協会は定義しています。

 

• 看護職が生活スタイルに合わせて働き方を選択できる
• 質の高い看護サービスを提供できる環境がある
▼参考:日本看護協会「看護職のワーク・ライフ・バランスの実現」

 

単に労働時間や時間外労働を短縮するだけでワークライフバランスが整えられるわけではありません。
看護師としていきいきと健康的に働き、プライベートの時間を十分に満喫できることが、「看護師のワークライフバランスが整っている状態」であるといえるでしょう。

看護師のワークライフバランスの現状

2019年に国が「働き方改革」を施行し、それを受けて2021年に日本看護協会が「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」を提唱しました。
これらによって、看護師のワークライフバランスの実現にむけた取り組みが多くの施設でおこなわれています。

 

しかし、看護師のワークライフバランスを実現するためには、家庭と仕事の両立に多くの課題があります。
特に、子育て中の看護師が仕事とプライベートのバランスをとれる対策を進めることが必要です。

2.【看護師のワークライフバランス】3つの課題

看護師のワークライフバランスを実現するためには、以下の問題を解決しなければなりません。

 

1. 人手不足による過重労働や時間外労働
2. 夜勤や交代勤務にともなう生活リズムの乱れ
3. 多忙による仕事とプライベートの両立の困難さ

 

1.人手不足による過重労働や時間外労働

人手不足は看護師1人あたりの仕事量を増やし、結果として過重労働や時間外労働を招きます。
過重労働や時間外労働は、家族と過ごしたりひとりで自由にしたりする時間を削ることとなり、看護師のワークライフバランスが崩れてしまう要因となります。

 

この状況が続くと、疲労やストレスなどから判断力や集中力が低下し、患者さんに十分なケアを提供できなくなる可能性があります。
たとえば、投薬の時間や量を間違えたり、患者さんの容態変化に気づくのが遅れたりと患者さんに悪影響を及ぼすかもしれません。

 

また、家族と過ごす時間やプライベートの時間を削ってしまうことで、心身の健康を損ねてしまうことにもつながるでしょう。

 

参考:▼看護の主な課題は人手不足!5つの対策と今後の看護業界の動向を詳しく解説

 

2.夜勤や交代勤務にともなう生活リズムの乱れ

看護師のワークライフバランスに夜勤や交代勤務が影響する理由は、以下のとおりです。

• 生活リズムを整えにくい
• 友人やパートナー、家族とのプライベートの予定が立てづらい
• 希望する休暇や連休、長期休暇などが取りづらい

 

会社員とは異なり、看護師は夜勤や交代勤務があるため、生活のリズムが乱れがちです。
さらに、友人や家族との予定が合わせづらかったり、長期休暇がとりづらかったりするため、満足のいく休暇を過ごせないこともあるでしょう。

3.多忙による仕事とプライベートの両立の困難さ

看護師の仕事量の多さは、プライベートとの両立を妨げる要因になるでしょう。
看護師は、複数の患者さんをケアしたり、患者さんの急変や予定外の処置などにも対応したりしなければならないため業務量が多くなります。

 

さらに、看護師には女性が多く※ 結婚や出産、育児などで生活スタイルが変わりやすいです。多忙で疲れやストレスを強く感じると、趣味や家族の時間を楽しめず、リフレッシュする機会を逃す可能性があります。

 

このように看護師の忙しさが、プライベートの時間を少なくし仕事とプライベートの両立を難しくさせているのです。

 

※参考:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

 

参考:▼看護の多重課題への対応は5つの視点が大切!優先順位を決める根拠を解説

3.看護師のワークライフバランス実現による5つの効果

看護師のワークライフバランスを整えることで、以下の効果が期待できます。

 

1. 看護の質の向上
2. 看護師のストレスの軽減
3. 看護師の離職率の低下
4. 十分な人材確保
5. 安定した経営

 

それぞれの効果について具体的にみていきましょう。

1.看護の質の向上

看護師がワークライフバランスを保てると、心身にゆとりができ、看護の質の向上につながるでしょう。

 

たとえば、残業が少なく十分な休息やリフレッシュする時間が得られれば、体力に余裕ができ、精神的にもゆとりが生まれます。そのため、患者さんに落ち着いて対応できたり、細かい気配りができたりと患者さんに寄り添ったケアが提供できるでしょう。

2.看護師のストレスの軽減

看護師が理想とするワークライフバランスが実現できれば、ストレスがたまりにくくなります。その理由は、看護師が以下のことをできるようになるからです。

 

• 十分な休息がとれる
• リフレッシュする時間が得られる
• 健康的な生活を送れる

 

残業や時間外労働が少なくなれば、その分プライベートの時間に充てられ、充実感を得られるでしょう。

3.看護師の離職率の低下

看護師のワークライフバランスが改善できると、働くことに満足感が得られる可能性があります。この満足感により看護師の離職を防げるかもしれません。

 

日本看護協会によると、現役で働く看護師が離職を考える理由として「看護職のほかの職場への興味」が最も多くなっています。
さらに、24歳以下の看護師に限定すると、「勤務時間が長い・時間外労働が多い」や「夜勤の負担が大きい」「昇進・昇給・給与に不満」が理由としてあげられます。

 

これらのことから、あらゆる勤務形態や給与体系、夜勤や時間外労働の負担軽減などを整備することが看護師の定着に必要といえます。

 

▼参考:日本看護協会「2021年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果」

4.十分な人材確保

看護師が「働きやすい」と感じ離職率が低下すると、人材の定着につながります。人材が確保できることで以下のような効果が期待できます

 

• 看護の質の向上
• 看護師のスキルアップ
• 看護師のモチベーションの向上

 

人材が十分に確保できれば、看護師1人あたりの業務量が減り、心身に余裕ができるでしょう。そうすれば患者さんの不安な心に寄り添った質のよい看護が提供できます。

 

また、十分な人材確保がされていれば、看護師1人ひとりの業務負担を軽減できます。
そのため、ベテラン看護師が新人看護師への教育に専念できたり、継続教育に参加する時間を確保できたりするでしょう。

5.安定した経営

看護師のワークライフバランスを整えることは、安定した経営につながります。その理由は以下のとおりです。

 

• 優秀な看護師の定着や残業時間の減少により人件費が削減できる
• 質の高い看護が提供でき、患者満足度が向上する
• 医療ミスが減り、病院への信頼が高まる

 

看護師のワークライフバランスの実現は、このように病院全体によい効果をもたらします。ワークライフバランスを改善する効果がケアの質の向上につながり、結果として病院の信頼度が上がるため、安定した経営につながるといえるでしょう。

4.看護師のワークライフバランス実現にむけた取り組みの具体例

看護師のワークライフバランス実現に向け、実際に病院が取り組んだ事例を2つご紹介します。実践した結果、やりがいやキャリアアップにつながり、看護師の悩みや不安を軽減する効果があらわれています。

具体例1:離職率の低下と時間外労働時間の減少を実現した取り組み

看護師の離職が続き、病棟閉鎖にまで追い込まれた病院の例です。
病院の課題として「仕事と子育ての両立」と「キャリア形成支援」をあげています。以下が取り組んだ内容とその結果です。

 

取り組んだ内容
1. 会議や研修を勤務時間内に設定(実働6.5時間、会議や研修1時間など)
2. 勤務外でも院内保育室が活用できるシステムの構築
3. 固定チーム+パートナーシップ制の導入
4. 夜勤時間内の仮眠時間の確保を保証
5. 時間有給の取得の導入
結果
1. 離職率の低下:平成19年17%→平成25年9.8%へ
2. 時間外勤務の減少:1人あたりの月平均時間外労働時間2.5時間へ減少

▼参考:厚生労働省「看護師のワークライフバランスの総合的改善」

 

5つの対策をおこなったことで、実際に働く看護師から「子育て中でも研修に参加できる」「仕事を休まずに学校行事に時間有給で参加ができる」「夕食の準備がゆっくりできる」といった声があがっています。

具体例2:新卒看護師の離職率0%を実現した取り組み

新卒看護師の離職率が10.3%に増加したと、2023年3月に日本看護協会が発表しました※。ここでは、新卒看護師の離職率が0%になった取り組み例をご紹介します。

 

取り組んだ内容
1. プリセプター制度の廃止、ローテーション制度の導入
2. 入職1年経過後の配属先の決定
3. 定期的な面談による看護師の抱える悩みや希望の明確化
4. あきらかになった悩みや希望にそった人員配置・業務面の配慮
結果
新人看護師の離職率0%を達成

▼参考:厚生労働省「新卒看護師の定着率向上」

 

今回の例では、新人看護師の離職理由として「プリセプターとの相性」と「新人に対する対応」をあげ、対策を講じました。実際、新人看護師からは「同期と意識を高め合いながら学べる環境である」と前向きな声があがっています。

 

※参考:日本看護協会「2022年「病院看護実態調査」結果」

5.看護師のワークライフバランスを整えてより良い働き方を目指そう

看護師のワークライフバランスを実現させるには、個々のライフスタイルに合わせたさまざまな働き方ができる環境を整えることが必要です。
勤務形態の選択を可能にしたり、時間外労働や残業を減らしたりなど病院や施設ごとの課題を解決しなければなりません。

 

看護師のワークライフバランスを実現できると、看護の質の向上だけではなく病院の経営までにもよい影響を与えることがあります。

 

ワークライフバランスを実現するために、まずは現状把握から見直してみてはいかがでしょうか。看護師の残業や時間外労働を減らす具体案として、それぞれの業務量を目に見えるように管理することがあげられます。

 

ケアコムのショートターム・マネージメントシステムは、業務を可視化できるようになるため、業務を再分配でき特定の看護師に業務が偏りにくくなります。結果として残業時間が減り、看護師のプライベートの時間を確保できるでしょう。

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