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お役立ち 2025.03.17

認知症の方を見守る目的とは?見守る3つのメリットと注意点を解説

「認知症の方が増えてきて見守りが大変になった」
「見守るって、常に利用者さんのそばにいなければならないの?」
 
認知症の方は、転倒・転落をはじめとした事故のリスクが高く、事故防止のために人員を割いてしまいがちです。
そうすると通常の業務が滞り負担を感じるスタッフも増えるでしょう。
 
この記事では、介護施設における見守りの定義と目的、方法、事例などを詳しく解説します。
 
「スタッフの負担を増やさずに認知症の方の事故防止をしたい」という方は、ぜひ最後までお読みください。

 
介護施設における見守りについては、こちらの記事にて解説しています。
▼関連記事:介護施設における見守りとは?目的や方法、見守りサービスについても解説

▼目次

1.介護における「見守り」の定義

介護施設における見守りとは、ご利用者が安全に生活できるよう、介護職員が寄り添いながら必要な支援をおこなうことを指します。
見守りは「近位見守り」と「遠位見守り」に分類されます。
 

見守りの種類 目的
近位見守り ご利用者の近くで歩行や食事の状況を見守り、転倒や誤嚥などを未然に防ぐ
遠位見守り ご利用者の自立の促しや能力を引き出すために、あえて遠くから状況を見守る

 
ご利用者のもつ能力によって、どちらの見守りが適しているか検討しましょう。

2.認知症の方を見守る目的

認知症のご利用者は自分の能力をうまく発揮できなかったり、やり方を忘れてしまったりすることが増えます。
そのため、以下の目的で見守ることが、自立の促しや能力の引き出しにつながります。
 
● 転倒・転落、ケガを防ぐ
● 精神的な安心感を与える
● 自立した生活をサポートする
 
詳しく見ていきましょう。
 

転倒・転落、ケガを防ぐ

認知症の方は、一般的な高齢者と比べて転倒のリスクが高い傾向です。
その理由として、以下があげられます。
 

転倒しやすい理由 説明
運動機能の低下 脳の病変により筋力やバランスが不安定になる
衝動的な行動 認知症による行動・心理症状(BPSD)の影響で落ち着きがなくなったり、急に動く
判断力の低下 状況を正しく理解できず、危険を回避しづらくなる
薬の副作用 ふらつきや意識の低下が起こることがある

▼参考:日本転倒予防学会誌 Vol.1 征矢野あや子「認知症のある高齢者の転倒予防」
 
高齢者のなかでも認知症を患っている方には、事故予防を中心としてより慎重な見守りが必要です。

精神的な安心感を与える

認知症の方にはBPSDとよばれる症状がみられ、強い不安や憂うつな気分、被害妄想などがあらわれます。
BPSDが強まると他者への不信感も生まれやすく、一人歩きが増えたり、それにともなう事故のリスクが高まったりします。
こうした症状への理解を深め、ご利用者が安心できる環境づくりが大切です。
 
たとえば、見守りシステムやグッズを活用し、一人になる状況を作らせず、コミュニケーションをとれる場に誘導することが有効でしょう。
 
ただし「一人の時間が好き」という方もいるため、適切な距離感を保つことも忘れないようにしてください。
 
▼参考:
こころの情報サイト│「認知症」
▼参考:こころの情報サイト│行動・心理症状(BPSD)

 

自立した生活をサポートする

認知症の方を見守る目的は、日常生活を適切に支援し、できる限り自失した生活を続けてもらうことです。
認知症が進行すると、生活リズムが乱れたり、日常動作に支障をきたしたりすることがあります。とくに食事や排泄、睡眠などのタイミングがわからなくなることが多いため、適切なサポートが必要です。
 
ただし、すべてを援助してしまうと、ご利用者の尊厳を損なうおそれがあります。
あくまでも「自立を促す」という視点でのサポートを心がけましょう。

3.認知症の方を見守る3つのメリット

認知症のご利用者を見守るメリットは、以下のとおりです。
 
● 転倒転落のリスクを予測できる
● ご利用者の行動パターンを把握できる
● ご利用者の不安をやわらげる環境を作れる
 
詳しく解説します。
 

1.転倒・転落のリスクを予測できる

認知症の方は、運動機能の低下や認知の混乱により、転倒・転落のリスクが高くなりがちです。そのため、日常的に歩行状態やバランス能力を評価することで、どのような場面で転倒しやすいのかを予測でき、必要な見守り方法が判断できるでしょう。
 
転倒事故が減少すれば、ご利用者の安全が確保されるだけでなく、ご家族の安心感も得られます。
 

2.ご利用者の行動パターンを把握できる

認知症の方の行動パターンを理解できると、トラブルを未然に防げます。そのためには、
食事やトイレ、睡眠などの行動を記録し、一人歩きや混乱が起きやすい時間帯や状況を特定することが大切です。
 
また、数日間にわたって24時間の記録をしておくと、より効果的な対策が立てやすくなります。
 
行動の予測ができるようになれば、適切なタイミングで介入でき、危険行動を防ぐことにつながるでしょう。
 

3.ご利用者の不安をやわらげる環境を作れる

認知症の方にとって、慣れ親しんだ環境で過ごすことは安心感につながります。静かで落ち着いた空間を整え、使い慣れた家具や思い出の写真を配置することで、安心感のある環境が作れます。
 
また、適切な照明や音楽を取り入れてリラックスできる雰囲気を作り、不安を軽減することも大切です。
 
こうした環境づくりによって、ご利用者の心理的安定が図られ、不安からくる問題行動(一人歩きや暴言など)が軽減でき、穏やかな生活を送れるでしょう。

4.認知症の方を見守る方法

認知症のご利用者を見守る方法は、以下のとおりです。
 
● 見守りシステムを導入する
● 見守りグッズを装着してもらう
 
共通しているのは「監視されている」という感覚や違和感を覚えないようにすることです。
詳しく解説します。
 

見守りシステムを導入する

見守りシステムを活用すると、リアルタイムでご利用者の動きを確認できます。
異常が発生した際にすぐ通知が届くため、迅速に対応でき事故を防げます。
 
代表的な見守りシステムは、以下のとおりです。
 
● 見守りカメラ
● 音センサー
● 人感センサー
● タグセンサー
● バイタルセンサー
● シルエットセンサー
● 超音波・赤外線センサー
● マット・ベッド柵センサー
 
こうしたシステムを活用できれば、不要な駆けつけが削減されスタッフの業務負担の軽減にもつながります。
 
見守り目的で設置したカメラに記録された転倒事故のデータをもとに、手すりやすべり止めマットを設置する、段差をなくすなどの事故対策ができることもメリットです。
▼関連記事:
介護施設における見守りカメラの選び方や導入時の注意点を分かりやすく解説
▼関連記事:高齢者や介護施設の見守りシステムとは?導入のメリットや導入事例を紹介
 

見守りグッズを装着してもらう

認知症の方の見守りには、GPSが内蔵されている見守りグッズが有効です。
これにより、一人歩きをしてしまう場合でも居場所を特定でき、スタッフの少ない夜間でも安全確保に役立ちます。
 
代表的なGPS内蔵の見守りグッズは、以下のとおりです。
 
● 靴型
● お守り型
● キーホルダー型
 
施設で使用する機会は少ないかもしれませんが、一人歩きの多いご利用者では行動を把握しやすく、より綿密な見守り計画を立てられるでしょう。

5.見守りシステムでご利用者とスタッフの負担が減った事例

見守りシステムを導入して、ご利用者の安全を確保しつつスタッフの負担が軽減した事例を紹介します。
この施設では、施設をより安全で安心できる運営を目指すために見守りシステムを導入しました。
 

おこなったこと
・導入フロアの職員に導入目的と効果を説明
・定期的なヒアリングで効果の見える化を徹底
・パソコンとタブレットで映像を常に確認できるようにし、状態変化時にナースコールが鳴るように設定
・ご利用者の状態に合わせて個別に設定を変更(例:転倒リスクの高いご利用者はからだを起こした時点で通知)
・転倒事故やそのほかトラブルが発生したときなど、映像を見返して客観的に検証
得られた結果
<ご利用者・ご家族への効果>
・夜間巡視時の睡眠妨害が減少した
・映像で見守ってもらえることへの安心感が生まれた
<スタッフへの効果>
・夜勤時の精神的な負担が軽減した
・巡視回数が半減し、夜勤時間帯にゆとりが生まれた
<安全面での効果>
・ヒヤリハットに気づく件数が増加した:1ヶ月あたり約10件→約20件へ
・事故件数が減少した:1ヶ月あたり約3件→1件へ

※ライターの経験をもとに作成
 
見守りシステムの導入が、スタッフの負担軽減につながることをあらわした結果となりました。人材不足に悩んでいる介護施設ほど、見守りシステムが効果を発揮するかもしれません。

6.認知症の方の見守りで注意すべきこと

認知症のご利用者を見守る際は、以下の点に注意してください。
 
● 「監視」にならないようにする
● できることまで援助しない
● スタッフの負担が増えない方法で見守る
 
ご利用者の尊厳を守りながら、限られた人数で安全確保するためのポイントを理解しておきましょう。
 

「監視」にならないようにする

認知症の方の見守りは「監視」ではなく「見守り」であることを意識しましょう。
「監視されている」と感じると、ご利用者が不快に思ったり、不安を感じたりすることがあり、一人歩きや不穏行動などにつながるおそれがあります。
 
見守りでは、以下の方法を試してみてください。
 
● 適度な距離を保ちながらさりげなく様子を観察する
● 必要に応じて声かけをしてコミュニケーションをとる
● ご本人の気持ちに寄り添い不快感を与えないよう配慮する
 
ご本人の意思や尊厳を尊重しながら、適切な距離感で見守ることが大切です。
 

できることまで援助しない

認知症の方の残存能力を活かし、自立支援を心がけることが重要です。
できることまで手を出してしまうと、ご利用者の自信や意欲を低下させるおそれがあるためです。
 
たとえば、食事や着替え、歩行など、自分でできる動作はできる限り継続してもらうことで、身体機能や認知機能の低下を防げます。
 
仮に失敗してもすぐに手を出さず、援助を求められたタイミングでサポートするくらいの余裕をもってかかわりましょう。
 

スタッフの負担が増えない方法で見守る

スタッフの人数が限られた状況では、効率的な見守りでの安全確保が大切です。
見守りに人員を割きすぎると、ほかの業務に支障が出たり、スタッフの負担が増えたりするおそれがあります。
 
以下のポイントを意識して、負担を減らしながら見守りを実施しましょう。
 
● 見守りシステムを活用する
● 環境整備をおこない、あらかじめ危険を防ぐ
● チームで情報共有をおこない、効率的な見守り体制を構築する
 適切な環境整備とチームワークを活用することで、無理なく安全に見守れるようになるでしょう。

7.適切な見守りをおこない、認知症のご利用者の事故を防ぎましょう

認知症の方を見守ることは、転倒・転落の防止、精神的な安心感の提供、自立支援などにつながります。
見守りのポイントは「監視」にならないようにすることです。
見守りシステムやグッズの活用は監視されていると感じさせずに安全を確保でき、スタッフの負担も軽減できます。
 
認知症のご利用者が安心して生活できる環境を整えるためには、見守りの目的を理解し、適切な方法を選択することが大切です。
 
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