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お役立ち 2025.04.17

ヒヤリハットとインシデントの違いは?事故を減らす方法5つも紹介

「食事中に利用者さんが誤嚥しそうになった」
「利用者さんが転倒したけど軽症で済んだ」
 
介護施設では、このようなトラブルが起こることも少なくありません。
 
しかし、何を「ヒヤリハット」とし、どこからが「インシデント」「アクシデント」となるのか、正確に理解できている方は少ないでしょう。
 
この記事では、それぞれの定義の違いを明らかにし、介護事故を減らすための具体的な対策を5つ紹介します。日々のケアの安全性を高めたい、正しい定義を理解したいなどの方は、ぜひ参考にしてください。

▼目次

1.ヒヤリハットとインシデント、アクシデントの違い

介護現場ではヒヤリハットのほかに「インシデント」と「アクシデント」という事象にわかれます。それぞれの違いを「定義」と「影響度分類」にわけて解説します。
 

定義の違い

ヒヤリハットとインシデント、アクシデントの定義の違いは以下のとおりです。
 

用語 定義 介護現場での例(転倒の場合)
ヒヤリハット 事故には至らなかったが、危険を感じたできごと 転倒しそうになった
インシデント 実際に起きた異変や事故ただし重篤な状態に至らなかった事例 転倒したがケガはなかった
アクシデント 実際に起きた異変や事故のうち、入院が必要・後遺症が残るベルの事象 転倒して骨折した

 
これらの定義はあくまでも一例です。
 
介護現場でのトラブルは、事故の手前である「ヒヤリハット」と事故が起きた「インシデント」の2種類を使いわけています。
 
▼参考:
ヒヤリハットとは|厚生労働省
 

インシデントの影響度分類による違い

「インシデントの影響度分類」ではヒヤリハットという言葉は使用されず、インシデントとアクシデントに分類されています。これを介護現場にあてはめると、以下のようになります。
 

介護現場における分類(例) レベル 状況の詳細
ヒヤリハット レベル0 エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが、ご利用者には実施されなかった
レベル1 ご利用者への実害はなかった(影響を与えた可能性は否定できない)
インシデント レベル2 処置や治療はおこなわなかった
レベル3a 簡単な処置や治療を要した(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など)
アクシデント レベル3b 入院治療が必要になった
レベル4a 後遺症は残っているが、日常生活に大きな支障はなく、見た目にも影響がない
レベル4b 後遺症が残り、日常生活に支障が出たり、見た目にも影響がある
レベル5 死亡(原疾患の自然経過によるものを除く)

 
▼参考:
インシデントの影響度分類|国立大学医学部附属病院医療安全管理協議会
 
ただし、こちらの分類も一例です。施設ごとに設けている定義が異なる場合があるため、自身の施設での分類を確認しておきましょう。

▼関連記事:転倒のヒヤリハットが起こる原因3つ|転倒事故になる前にできる対策とは

2.ヒヤリハット・インシデント・アクシデントの事例【介護現場の場合】

介護現場で起こるヒヤリハットとインシデント、アクシデントの事例を一つずつ紹介します。
 
具体的な事例をとおして、それぞれの違いを明確にしておきましょう。
 

ヒヤリハット:脱衣所で転びそうになった

脱衣所でズボンを脱ぐ際に、バランスを崩して転びそうになった事例です。
 
近くでスタッフが見守っていたため、ご利用者は転倒せずに済みました。ヒヤリハットは危ないことは起こったものの、事故には至っていないことを指すため、ヒヤリハットに該当します。
 

インシデント:背後から声をかけたらご利用者が転倒した

元々ふらつきがある転倒リスクの高い方に後ろから声をかけたところ、ご利用者が振り向いた際にバランスを崩して転倒してしまった事例です。
 
ご利用者は処置を必要とするほどのケガには至りませんでした。転倒したことによって入院や通院が必要なかった場合は、インシデントとして処理することになるため、この事例はインシデントに該当します。
 
▼参考:
介護事故事例集|公益財団法人介護労働安定センター
 

アクシデント:不可抗力の転倒事故が発生しご利用者が骨折した

認知症のご利用者が移乗介助中に興奮し、職員の顔に腕があたって職員がふらついてしまい、ご利用者が転倒、骨折してしまった事例です。治療のために通院が必要となるため「アクシデント」に分類されます。
 
この事例では、職員も顔にアザを負いましたが、軽症のため受診せず診断書はありませんでした。
 
アクシデントは、ときにご利用者またはご家族とのトラブルを招きます。
 
たとえば、この事例では、一連の流れをご家族に説明しても理解を得られませんでした。
その原因として以下が考えられています。
 
● 介助した職員は軽症だからと受診をせず診断書がなかった
● 「高齢の父にそんな力はない」とご家族が主張した
 
このような場合、職員に明らかな過失がないと主張するためには「証拠」が必要です。
 
そこで有効な対策の一つが見守りカメラの設置です。
見守りカメラに残された映像記録さえあれば、職員の介助方法に問題がなかったと証明でき、職員の尊厳を守ることにもつながります。
 
なにかのトラブルが起きたときには、状況を正確に判断できるツールが非常に役立ちます。
アクシデントを起こさないのが前提ですが、万が一のために備えておくべきといえるでしょう。
 
▼参考:
第24回:介助中に起きた不可抗力の事故への対応|WAM NET

3.ヒヤリハットやインシデント報告が多い介護施設での事故

ヒヤリハットやインシデント報告としてあげられるトラブルのうち、もっとも多いのは転倒・転落であると推測できます。
 
ヒヤリハットは市区町村への報告が義務付けられておらず、実際の件数を把握するのは困難です。
 
ただし、「『介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業』報告書」によると、介護施設内でもっとも多い事故は「転倒・転落・滑落」であることがわかっています。
 
また、ある自治体の集計でも転倒・転落がもっとも多い結果であり、介護事故の報告のうち要介護3以上の利用者が71%と介護度が上がると事故発生リスクが高くなるのがわかります。
 
とはいえ、慢性的な人材不足が問題である介護現場は、職員不足によって安全確保が難しい場合もあるでしょう。
 
そうしたときに、事故リスクの正しい評価や見守りシステムの導入が欠かせません。
 
▼参考:「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書|公益財団法人介護労働安定センター
▼参考:令和3年度介護事故・ヒヤリハットの発生状況調査の集計・分析結果|青森県南部町
 
▼関連記事:高齢者で転倒しやすい人の特徴とは?繰り返す原因や転倒予防の対策を解説

4.介護現場のヒヤリハット・インシデントを減らす5つの方法

アクシデント防止のためには、ヒヤリハットやインシデントを起きた事実のままにしないことがポイントです。
 
具体的には、以下の対策をとることでヒヤリハットやインシデントの発生を減らします。
 
● 未然防止策を講じる
● 転倒・転落リスクを評価する
● 誤嚥リスクの有無を確認する
● 見守りカメラや離床センサーを活用する
● ヒヤリハットやインシデント事例を周知・分析する
 
一つずつ解説します。
 

1.未然防止策を講じる

事故を防ぐには、介護現場の環境を整えてリスクを減らすことが重要です。
環境を整えるとは、物理的な施設設備の改善だけでなく、業務の流れや職員の対応を見直すことも含まれます。
 
具体的な方法は、以下のとおりです。
 

改善ポイント 具体的な改善内容
施設環境の改善
  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • すべりにくい床材の導入
介助方法の見直し
  • 移乗介助の方法を改善
  • 適切な人員配置の確保
職員の対応力の向上
  • 認知症対応や安全な介助技術の研修
ご利用者に合わせたケアの工夫
  • 見守りカメラ、離床センサーなどの設置
服薬管理の徹底
  • 服薬の影響による転倒リスクを考慮した見直し

 
とくに、職員の確認不足による事故や、骨折・死亡につながる重大な事故は、原因を取り除くための具体的な対策を実施する必要があります。
 

2.転倒・転落リスクを評価する

介護施設では、入所者の転倒・転落リスクを適切に評価することが欠かせません。
 
以下の方法を用いて、効果的なリスク評価をおこないましょう。
 

評価方法 具体例
アセスメントツールの使用 Berg Balance Scale(BBS)やTimed Up and Go test(TUG)などのアセスメントシートを使用
重要なリスクファクターの確認 過去の転倒・転落経験、認知症の有無、歩行能力、薬の使用状況などの要素を確認
多職種による評価 医師、看護師、介護職員など多職種で話し合い、転倒リスクを評価

 
これらの方法を組み合わせることで、より精度の高いリスク評価が可能となり、転倒・転落の予防につながります。
 
▼関連記事:
介護施設で転倒事故が起こった際の対応について解説
 

3.誤嚥リスクを確認する

誤嚥リスクは、以下のようなテストを実施することで推測できます。
 

テストの名称 方法 評価
反復唾液嚥下テスト 口腔内を湿らせて30秒間で何回嚥下できるかを検査 30秒間で3回未満の嚥下は機能障害の可能性
改訂水飲みテスト 重度の摂食・嚥下障害者に対して3mlの冷水を使用
  • 1点:飲み込めない、むせる/むせる+呼吸が苦しそう
  • 2点:飲み込めるが息が苦しそう
  • 3点:飲み込めるが、むせる /声が湿った感じ(湿性嗄声)
  • 4点:飲み込める、むせや呼吸も問題なし
  • 5点:4点の状態に加え、30秒以内に2回追加で飲み込める
食物テスト プリンや粥を用いて嚥下機能を評価

これらのテストを適切に実施し、ご利用者一人ひとりの誤嚥リスクを正確に把握することが誤嚥防止に重要です。
 
ただし、すでに誤嚥リスクが高いご利用者は、テストをおこなうことで誤嚥を起こすおそれがあります。正しい方法や知識をもって実施しましょう。
 
▼参考:
反復唾液嚥下テスト – 舌をはじめとする口腔機能の低下|厚生労働省
▼参考:摂食・嚥下フローチャート作成の試み|庄司浩孝ら
 

4.見守りカメラや離床センサーを活用する

見守りカメラや離床センサーを適切に設置することで、職員の目が届きにくい時間帯や場所でも、ご利用者の安全を確保しやすくなります。
とくに、夜間や職員の手が足りない時間帯には、転倒・転落のリスクが高まるため、リアルタイムでの状況把握が重要です。
 

活用するもの 特徴
見守りカメラ
  • 事故発生時の記録としても活用可能
  • 介助方法の確認や再発防止策の検討に役立つアイテム
離床センサー
  • ベッドや椅子から立ち上がる動きを感知
  • 転倒のリスクが高い場合に早期対応が可能

 
これらのツールを活用することで、転倒・転落事故の防止だけでなく、事故後の適切な対応や職員の負担軽減にもつながります。
 
▼関連記事:
介護施設における見守りカメラの選び方や導入時の注意点を分かりやすく解説
▼関連記事:離床センサーとは?種類や看護・介護の際の注意点を解説!
 

5.ヒヤリハットやインシデント事例を周知・分析する

転倒・転落事故を防ぐには、ヒヤリハットやインシデント事例を職員間で共有し、原因を分析することが重要です。
 
具体的な状況を記録し、発生要因を振り返ることで、同じような事故を未然に防ぐ対策が立てられます。
また、これらの事例を研修に活用することで、職員の意識向上や対応力の強化にもつながるでしょう。
 
管理者は情報共有がスムーズに進むよう働きかけ、施設全体の安全管理体制を強化することが必要です。

5.ヒヤリハット・インシデントを防ぐには事故分析とシステム導入が効果的

ヒヤリハットやインシデントを防ぐには、事故の発生要因を分析し、適切な対策を講じることが重要です。
 
とくに、転倒や誤嚥といったリスク評価をおこない、見守りカメラや離床センサーを導入することで事故防止につながります。
また、発生したヒヤリハットやインシデントの事例を周知し、スタッフ間で共有することも意識向上に効果的です。
 
介護現場における慢性的な人材不足は避けられない問題です。
その課題をクリアするためにも、安全対策をシステム化し、効果的な事故防止策をとることが求められます。
 
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