Contentsお役立ち情報・製品動画
お役立ち 2025.02.27
看護師の人手不足はなぜ起きる?4つの原因と解決策をくわしく解説

業務量や残業が多いと「看護師が足りないからではないか」と不安を感じる看護師の方もいらっしゃるでしょう。
看護師の人手不足は現代医療における深刻な課題の一つで、2025年には約14万人の看護師が不足すると推測されています。
とはいえ、看護師不足の原因を理解している方は少ないはずです。
この記事では、看護師不足の原因をくわしく解説し、解決策として有効な取り組みを紹介します。看護師の人手不足を解消したい看護師の方は、ぜひ参考にしてください。
▼目次
1.看護師の人手不足の現状をデータで確認
項目 | 人数 |
---|---|
2025年に必要な看護師数(推定) | 194.5万人 |
2025年の看護職員就業人数(推定) | 180.1万人 |
看護師の不足数 | 14.4万人 |
看護師、准看護師の求人は多くあるにもかからず求職者が少ない傾向にあり、2025年には約14万人の看護師が足りないと推測されています。
領域別では訪問看護ステーションの看護師確保がとくに難しく、有効求人倍率は3.22倍です。
領域別 | 病院・診療所 | 訪問看護ステーション |
---|---|---|
2025年の必要な看護師数(推定)需要推計 | 136.5万人 | 11.3万人 |
2020年時点の就業看護師数 | 136万人 | 6.8万人 |
2025年までに充足すべき看護師の数 | 0.5万人 | 4.5万人 |
病院や診療所と比べても、人手不足が明らかです。今後の人材確保が急務といえるでしょう。
▼参考:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
2.看護師の人手不足を招く4つの原因
看護師の人手不足は、おもに以下が原因で起こります。
● 過酷な労働環境
● 給与や待遇への不満
● 不透明なキャリアアップ・キャリアパス
● 看護需要の高まりと人材供給のアンバランス
くわしく見ていきましょう。
過酷な労働環境
看護師が働く現場は、以下の状況から過酷といわれています。
● 長時間労働や夜勤など負担の大きいシフト勤務
● 記録業務や書類作成など患者ケア以外の業務の多さ
● 患者さんや家族とのコミュニケーションやクレーム対応
とくに労働時間については、日本看護協会の調査で「過労死につながりかねない長時間労働がある」「十分な休憩が取れない」という現状が明らかになっています。
こうした過酷な労働環境によって心もからだも疲弊し、仕事をやめてしまう方が増え、看護師不足につながるのです。
▼参考:公益社団法人日本看護協会「看護職の労働時間管理」
給与や待遇への不満
看護師は命をあずかる仕事であるにもかかわらず、給与や待遇への満足度が低いです。
理由として「時間外勤務手当の不払い」「勤務時間外の業務が時間外勤務として扱われていない」という現状が関係していると考えられます。
身体的・精神的負担が大きい分、見合った給与をもらえないことでモチベーションが下がり、職場を離れるケースが増えているといわれています。
▼参考:公益社団法人日本看護協会「看護職の労働時間管理」
不透明なキャリアアップ・キャリアパス
看護師としての将来が見えにくいことも、離職による看護師不足の一因です。
多くの看護師は、スキルや専門性を高めたいと考えています。しかし職場によっては教育体制が不十分であったり、キャリアアップを支援する仕組みがなかったりするため、チャンスを求めて転職する看護師も存在します。
とくに経験年数が浅い看護師の場合、目標が見つからないことで不安を感じたり自信を失ったりしやすく、別の職場を探すきっかけとなってしまうのです。
看護需要の高まりと人材供給のアンバランス
高齢化社会の進行によって医療の需要が拡大している一方で、看護師の供給が追いついていません。
少子化の影響で看護学校の入学者数が減少し、新しく看護師になる方の人数が増えないことが一因です。そのうえ働き盛りの看護師が都市部や条件のよい職場へ集中する傾向があり、必要な場所に十分な看護師が確保できず人手不足となっています。
さらに、看護師の資格をもっていても何らかの理由で働いていない「潜在看護師」の存在も人材不足に関係していると考えられています。
女性の看護職(正看護師・准看護師)の潜在率は30代がもっとも高く、約36%です。もっとも多い理由は「出産・育児」であり、不規則なシフト制や夜勤があるため、育児と仕事の両立が難しいと考える看護師が多いのです。
このような状況を改善するために、柔軟な働き方の導入や潜在看護師が復職しやすい環境づくりが求められます。
▼参考:日本医師会「2022・2023年度 医療関係者検討委員会 報告書」
▼参考:小林美亜ら「潜在看護職員数の推計」
3.看護師の人手不足が与える影響と問題

看護師の人手不足が続くことで、以下の影響が考えられます。
● 患者満足度の低下
● 現場の負担の増加
● 医療事故のリスク増大
● 施設運営への悪影響
ひとつずつ見ていきましょう。
患者満足度の低下
看護師が不足することで以下の状況が考えられ、患者さんの満足度が下がるおそれがあります。
● 診察や処置の待ち時間が長くなる
● 対応の遅れが発生するおそれがある
● 入院患者の受け入れに制限がかかる
こうした状況が続けば、看護師はモチベーションを維持できず退職を考えるでしょう。退職者が増えれば看護師不足に拍車がかかり、さらに患者満足度が下がる可能性が考えられます。
現場の負担の増加
人手不足は現場の看護師に対する負担を増加させ、心身にかかるストレスを大きくします。ストレスから体調を崩したり精神的な疲労が蓄積したりすることが多くなると、最終的に現場から離れざるを得ない状況に陥る可能性もあります。
こうした状況が続けば離職者が増え、看護師不足が悪化する悪循環が生まれるでしょう。
医療事故のリスク増大
看護師の業務負担の増加、長時間勤務による疲労やストレスの蓄積により、判断力や集中力が低下して医療ミスのリスクが高まります。
医療事故は患者さんの安全にも影響をおよぼすため、病院の信頼性や評判が損なわれるおそれがあります。
このような状況を避けるためにも、看護師の業務量の調整や労働環境の改善は急務といえるでしょう。
施設運営への悪影響
看護師不足は施設運営に直接的な悪影響をおよぼします。
看護師が足りないために診療制限が生じたり、患者さんを受け入れるためのベッドが十分に確保できなかったりすると、施設の収益に悪影響を与えるためです。
また、ケアの質が低下することで病院の評判が悪化し、患者さんの信頼を失うリスクも高まるでしょう。
これらの問題が重なると病院の運営がスムーズに進まなくなり、最悪の場合閉院につながるおそれもあります。
4.看護師の人手不足の解決策5つ
看護師の人手不足を解消するために、以下の5つを試みましょう。
● 働き方改革
● 業務の効率化
● 支援制度の活用
● 給与や待遇の改善
● 教育制度・キャリア支援体制の整備
それぞれ解説します。
働き方改革
柔軟なシフト制度や休暇取得の推進など、院内の働き方改革をおこなうことで看護師の離職防止につながります。
とくに子育て世代が働きやすい環境を整えることが重要です。
というのも、中堅看護師にあたる30代・40代の看護師は「結婚」「妊娠・出産」「子育て」を理由に離職しているためです。
都道府県のナースセンターも潜在ナースの復職支援をおこなっているほど、現場への復職が重要視されています。
プライベートと仕事のバランスを取りやすく長期的に働き続けられる環境が整えば、看護師の定着率も上がり看護師不足の解消が期待できます。
▼参考:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
医療業界の働き方改革について、こちらの資料にまとめました!ぜひご覧ください。
【無料】資料をダウンロードする
業務の効率化
看護師不足を解決する方法として、業務の効率化は重要な対策の一つです。
たとえば、医療ITツールやロボットの導入があげられます。
バイタルサインの自動記録や物品管理のデジタル化などを取り入れれば、看護師が本来の業務にあたる時間を確保できるでしょう。
また、看護師がおこなわなくてもよい業務を補助スタッフに委任すること(タスクシェア/シフト)も、効率的な働き方を可能にします。
こうした工夫で看護師の業務が効率化できれば、負担軽減や定着率の向上、看護サービスの質の向上につながり、看護師不足の問題を解消できるでしょう。
タスクシフトに関しては下記をご覧ください。
タスクシフトとは?4つのメリットやデメリットを詳しく紹介
支援制度の活用
国や自治体が提供する支援制度を活用することで、看護師の確保や業務効率化を進められます。理由は、以下の支援を受けられるためです。
● 業務効率化への支援
● 院内設備充足への経済的支援
● 就労環境改善のための経費の支援
これらの支援制度を活用することで、医療機関単独では解決が難しい問題にも対応できます。看護師を安定して確保したり、業務を効率よく進めたりすることが可能となるでしょう。
給与や待遇の改善
看護師不足の解決には給与や福利厚生などの待遇を見直し、安心して働ける職場環境を整えることが欠かせません。
理由は、以下の効果が期待できるためです。
● 新たな人材の確保
● 復職しやすい環境づくり
● 看護師のモチベーション向上や定着率の改善
現在の給与や手当に対する満足度については、現場の看護師から意見を求めるとよいでしょう。
教育制度・キャリア支援体制の整備
看護師不足を解決するには、教育制度やキャリア支援の仕組みを整えることが大切です。
たとえば、新人看護師の育成には集合研修やいろいろな部署を経験するローテーション研修が役立ちます。
また、成長に合わせて支援をおこなう「クリニカルラダー」という仕組みや、早い段階から将来のキャリアを考えるサポートも効果的です。
▼関連記事:看護師のクリニカルラダーとは?レベル別の目標や評価について解説
こうした取り組みによって、看護師のスキルが上がり職場に定着しやすくなるため、長く人材を確保できることが期待できます。
5.看護師の人手不足を解消して円滑な施設経営を

看護師の人手不足は、さまざまな原因が複雑に絡み合った社会的課題です。
看護師不足は現場に多くの影響を与え、施設経営にも悪影響をおよぼしかねません。
現状や原因を正確に理解し、現場に必要な解決策をおこなうことで看護師の確保や定着率の向上につながります。
この記事で紹介した対策を参考に、看護師の職場環境を整えて看護師不足を解消しましょう。
\「医師の働き方改革に伴う看護師への影響」と 「改善するためにまず行うべきこと」の資料を無料公開しています!/