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お役立ち 2025.08.22
ペイシェントハラスメントの事例5つ!患者対応と環境整備を解説

患者さんやご家族からの言葉や態度に「これってハラスメント?」と戸惑った経験がある看護師もいるのではないでしょうか。
医療現場では「ペイシェントハラスメント」と呼ばれる、患者さんやご家族からの暴言・セクハラ・過剰な要求などの迷惑行為が深刻化しています。
この記事では、よくある事例を紹介しながら、どこからがハラスメントなのか、その目安と具体的な対応方法、職場でできる対策を解説します。自分の経験と照らし合わせ、冷静に対応できる力を身につけましょう。
▼目次
- 1.看護師が受けやすいペイシェントハラスメント5つの事例
- 1.暴言やクレーム
- 2.身体的な暴力<
- 3.セクシャルハラスメント<
- 4.過度な要求<
- 5.家族によるハラスメント<
- 2.ペイシェントハラスメントの判断基準
- 3.ペイシェントハラスメントが起こる原因
- 患者側の要因
- 看護師側の要因
- 4.ペイシェントハラスメントを受けたときの患者対応
- 証拠を残す
- 複数人で対応する
- 毅然とした態度で傾聴する
- 話し合いの場所を変える
- カンファレンスや申し送りで共有する
- 5.ペイシェントハラスメントの対策には環境整備も必要
- 緊急時の情報共有で迅速に対応する
- ナースコールの履歴や対応状況をデータで残す
- 医療DXによる職場改善でスタッフの余裕をつくる
- 6.ペイシェントハラスメントは証拠が大事!職場環境の改善で看護師を守りましょう
1.看護師が受けやすいペイシェントハラスメント5つの事例
看護師が直面しやすいペイシェントハラスメントは、以下のとおりです。
● 暴言やクレーム
● 身体的な暴力
● セクシャルハラスメント
● 過度な要求
● 家族によるハラスメント
自分の経験と照らし合わせながら「これは一人で抱え込まず、対処していいことなんだ」と気づくきっかけにしてください。
1.暴言やクレーム
整形外科に通うAさんに、医師が他院での検査を勧めたところ「ここでは受けられない検査を勧めるのか」と不満を訴えて居座り続けた。後日、レビューサイトに事実と異なる誹謗中傷を投稿したため、クリニックは証拠を集め、弁護士を通じて警告文書を送付した。
患者さんからの強い言葉や態度、さらに診療外での名誉毀損(めいよきそん)行為は、業務の妨害や精神的ダメージにつながるペイシェントハラスメントです。
日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、75.2%の看護師が患者さんやご家族からのクレームにストレスを感じています。
経験年数が長かったり、年齢が上がったりするほど「強く感じている」傾向も見られました。
ほかにも、以下のようなケースはペイシェントハラスメントに該当します。
● 指導や説明をしていただけで怒鳴られた
● 人格否定されるような言葉を投げかけられた
● 「看護師ごときが」となじられた
一時的な怒りではなく、くり返される暴言やクレームは、受ける側の自尊心を傷つける深刻な問題です。
2.身体的な暴力
施設入所中の男性が、介助中の看護師の首をつかみ、3回頭部を殴る事態がカメラにおさめられていた。男性は日常的に暴力をふるっており「つぎは自分の番ではないか」とほかのスタッフの恐怖心をあおっている。
日本看護協会の「2017年看護職員実態調査」によると、身体的な攻撃を受けた経験のある看護師のうち、94.5%が患者さんからのものであると回答しました。
患者さんは「軽く叩いただけ」「怒って物に当たっただけ」と主張することもありますが、からだに触れたり物に当たって威圧する以下のような行為は、明らかな暴力です。
● 手をつねられる
● 物を投げつけられる
● 突き飛ばされる
● 叩く・払いのけられる
● 物を壊して威圧する
たとえ直接手をあげなくても、物を破壊する・周囲を威圧する行動は、職場の安全や心理的安定を脅かすハラスメントとして対応すべき問題です。
▼参考:2017年看護職員実態調査|日本看護協会
3.セクシャルハラスメント
「あんたが寝てくれたらいっぺんに病気は治る」と言いながら胸を触られた。驚きと恐怖を感じたが、「患者さんのすることだから」とその場で声を上げられなかった。
日本看護協会の「2017年看護職員実態調査」によると「意に反する性的な言動」を受けた看護師のうち、79.3%は患者さんから、6.2%はご家族からのものと報告されています。
また、日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」では、若い看護師ほどセクハラを受けやすい傾向が明らかになりました。
セクシャルハラスメントは、直接からだに触れる行為だけでなく、以下のような行動も含まれます。
● からだをジロジロと見られる
● 性的な冗談や質問をくり返しされる
● プライベートな関係をにおわせる発言をされる
相手が患者さんである場合「悪意はなさそう」「自分が我慢すれば済む」と受け流してしまう看護師も少なくありません。しかし、受け手が不快に感じた時点で、それは立派なハラスメントです。
▼参考:2017年看護職員実態調査|日本看護協会
▼参考:2022年看護職員の労働実態調査|日本医療労働組合連合会
4.過度な要求
高齢患者さんのご家族が「もっと丁寧に説明をしろ」「この薬は本当に安全か」と治療方針に過度に口を出し、スタッフが対応に追われた。診察後も連日電話で問い合わせが続き、日々の業務に支障をきたすほどの負担となった。
日本看護協会の「2017年看護職員実態調査」によると、患者さんやご家族から過大な要求を受けたとした看護師は19.0%でした。
以下のようなケースも「過剰な要求」に該当します。
● 特別な要件がないのにナースコールで数分おきに看護師を呼び出す
● 部屋の掃除、テレビのチャンネル変更、買い物などの看護業務とは無関係な私的な依頼をする
● 夜間に何度も要件のない呼び出しをする
なかには、過度な要求を断ったところ「自分は反社会的勢力とつながっている」と脅されたという報告もありました。
一見、ハラスメントと思われにくい行動も、頻度や内容によっては心に強いストレスや不安を与える原因となり、ペイシェントハラスメントとみなされます。
▼参考:2017年看護職員実態調査|日本看護協会
5.家族によるハラスメント
患者さんの母親が、看護師の動作や手順に過剰に反応し「新人はやめて」「Bさんは下手だから代えて」などと特定の看護師を名指しで否定し、些細なことで苦情を申し立て続けた。担当になるだけで眠れなくなる職員も多く、退職を考えるスタッフもいた。
患者さんだけでなく、そのご家族からのハラスメントも少なくありません。
日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、ご家族からセクシャルハラスメントを受けた看護師は2.1%、パワーハラスメントを受けたのは5.9%にのぼりました。
ほかにも、以下のようなケースが報告されています。
● ケア内容や処置に対して執拗に詰問
● 看護師を威圧的に責める、怒鳴る行為
● 特定のスタッフへの差別的な発言
● 卑猥な発言、身体への接触
● 「この程度の看護で給料もらってるの?」といった侮辱
ご家族は大切な人の体調を気にかけており、不安や焦りが強く出ることもあります。
しかし、その感情を必要以上に看護師にぶつけることで安心しようとするのは、行き過ぎた行為です。
とくに、くり返し理不尽な要求や批判を受ける場合は、ペイシェントハラスメントとして対応すべき対象です。
▼参考:被害者 : 20 歳代女性看護師|厚生労働科学研究成果データベース
2.ペイシェントハラスメントの判断基準
3.ペイシェントハラスメントが起こる原因

ペイシェントハラスメントは、患者側・看護師側の要因が複雑に絡み合って起こります。
詳しく見ていきましょう。
患者側の要因
患者さんが攻撃的な言動をとる背景には、以下のように心身の状態が関係するさまざまなストレスや不安が影響しています。
● 病気や障害による精神的な不安や苛立ち
● 入院生活の孤独やストレス
● 認知症や精神疾患などによる判断力の低下
● 医療や看護師に対する不信感
こうした心理的・身体的要因が、ハラスメントにつながる言動の引き金となることがあります。
看護師側の要因
看護師の接し方や状況が、意図せず患者さんの攻撃的な反応を引き起こすこともあります。
● 検査やケアに関する説明不足
● 忙しさや業務過多で丁寧な対応が難しい状況
● 若手スタッフや新人であること(狙われやすい)
● 言い返しづらい、断りにくい性格
なかでも「この人には強く言ってもいい」とみなされたときに、ハラスメントの標的にされる傾向があります。
▼関連記事:看護師の業務改善とは業務マニュアルの見直し!具体例を詳しく紹介
4.ペイシェントハラスメントを受けたときの患者対応
ハラスメントを受けたとき、感情的に反応してしまいそうな場面でも、冷静に行動する手段を知っておくことで、自分自身を守れます。
詳しく解説します。
証拠を残す
ペイシェントハラスメントを受けたときは、日時や発言内容、状況などを自分用のメモとして簡潔に記録しましょう。
あわせて、ナースコールも呼出履歴が記録となり、電子カルテなど業務上の公式記録にも事実を残しておくと、より客観的な証拠となります。
複数人で対応する
患者さんに看護師一人で対応していると、威圧的な態度に押し切られがちです。
スタッフ同士で連携し、複数人で対応することで心理的プレッシャーを軽減できます。
毅然とした態度で傾聴する
理不尽な言動でも一度は冷静に話を聞く姿勢が大切ですが、一線を越えた発言や態度には毅然と対応しましょう。
受け入れがたい要求には「できません」とはっきり伝える勇気が必要です。
話し合いの場所を変える
空間を変えることで、患者さんの態度がやわらぐケースもあります。
病室での対応が難しい場合は、スタッフステーションや相談室など、冷静に話せる場所へ移動しましょう。
カンファレンスや申し送りで共有する
ペイシェントハラスメントの事例は、チーム全体で共有することが望ましいです。
共通認識をもっていれば統一した対応が可能となり、看護師一人に負担が集中するのを防げます。
5.ペイシェントハラスメントの対策には環境整備も必要
ペイシェントハラスメントへの対応は、個人の努力だけでは限界があります。
現場全体で情報を共有しやすい体制や、負担を軽減できる仕組みを整えることが不可欠です。
緊急時の情報共有で迅速に対応する
ペイシェントハラスメントが発生した際には、現場の状況をいち早く共有し、必要な人員を確保することが重要です。
たとえば、ケアコムの「コードホワイトシステム」を活用すれば、緊急時に無線押ボタンを押すと関係スタッフへ通知がいき、状況に応じた迅速な対応につなげられます。これにより、現場の安全性を高め、スタッフの心理的負担を軽減できます。
ナースコールの履歴や対応状況をデータで残す
ナースコールの頻度や対応履歴のデータは、過剰な要求の実態を示す客観的な証拠となります。
ケアコムのPLAIMH NICSSがその一例です。
履歴を分析することで、特定の時間帯やスタッフに偏った負担が生じていないかが把握できます。
くり返し対応を強いられているスタッフがいれば、配置や業務分担を見直して、ハラスメントの影響を軽減することが可能です。
また、頻回な呼び出しの背景にある患者側の不安や問題をチームで把握できるため、対応方針の明確化や事前の関係づくりにもつながり、トラブルを防ぐ効果も期待できます。
▼ケアコムのナースコールシステムはこちら
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医療DXによる職場改善でスタッフの余裕をつくる
ICTやAIを活用した医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入により、看護業務の効率化につながります。
業務の負担が減れば、スタッフの心理的余裕が生まれ、ペイシェントハラスメントにも冷静に対応しやすくなるでしょう。
▼関連記事:医療DXとは?4つの取り組み事例と医療DXが進まない理由を解説
▼関連記事:看護における環境整備とは?目的から手順、観察項目、看護計画の立て方までを解説
6.ペイシェントハラスメントは証拠が大事!職場環境の改善で看護師を守りましょう

ペイシェントハラスメントは、個人の我慢や努力で解決できる問題ではありません。
早めの記録と共有、そして組織的な対応体制の整備が看護師を守る支えとなります。
ナースコールなどのツールも活用し、「守られている」と実感できる職場づくりを目指しましょう。
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